見出し画像

あちらとこちらのボーダーライン

今年78になる母。

「免許がない、あれ、勝手に持って行ったやろ!あんたはいつもそうや」

まくしたてる系の母からの怒りの電話である。

--------

母の様子がおかしいなと思ったのは7年前。

私は40歳だった。

その時は、結婚前で一緒に住んでいたんやけど、家に帰ると、

母はガスの五徳の周りに布巾を丸く沿わせながら、揚げ物を作っていた。

「お母さん、火の回りに布おいたら火事いくで」と慌てて布巾をどけたけれど、

「濡らしてあるから、大丈夫」といって、きかなかった。

「いや、布巾カラカラに乾いてるやん!危ないって」

と、この頃は、まだ元気に突っ込んでいた私やったけれど、今は、もう突っ込むと逆襲にあって、犯罪者のような扱いを受けるので、優しく片付ける(成長しました)

当時は、違和感を抱えながらも、まさか認知症とは、これっぽっちも思っていなかった。

別の日、晩御飯の残りものがすべて食器棚に入っていたことを、私が朝、気付いたので

「お母さん、残り物を食器棚に入れたら腐るやん」というと、

「残り物はみずや(食器棚)にいれとくもんや」と、普通に言ったので(今思えば、母の子ども頃の記憶が戻っている感じ)

「今まで毎日、冷蔵庫に入れてたやん」と返すと、

「すぐ食べるから大丈夫!」と怒って譲らなかった。


あれ?なんかおかしいな。怒りんぼになってきているような。

優しかった母が、最近はいつも怒っているような・・・。

日常生活で、違和感のようなものが続くので、病院へ行ってみようと「物忘れ外来」へ、うまいこというて連れていくと、認知症前段階と診断された。

それからは、薬は拒否するわ、病院へ連れて行ったことを責められるわ、
「最低の娘や、二度とあんたと病院へは行かない」宣言をされるわ。

2ー3年ぐらい前まで認知症の家族を介護する皆さんがたどる、めちゃくちゃ理不尽な、暴言やわがままに振り回され・・・。

私、泣いて泣いて泣いて泣いて、大変な日々を過ごした割には太る一方で・・・・以下省略。

半年ぐらい、介護時の暴言で毎日涙が薄っすら出るぐらいほんまにつらかったんですけど、去年ぐらいから復活しました。イエイ!(なんや急に)

いやぁ、もう、だんだん、どう処理したらええかつかめてきた!介護波に乗れてきたっていうの?!と思った頃に、また、暴言という刃でズタボロになったりもするんですけど(どっちやねん)。だいぶ、流せるようになった!もうアラフィフやけど、成長するんやね!寝られない夜もあるけども。


そりゃあ、もうセニョリータ。

認知症、物忘れ等に関する色んな本をめちゃくちゃ読みあさりました。

読んだよ、でも、ちゃうねん。読んでも心がスッとしない。
病気やねんから、怒らずちゃんと受け入れてあげなあかんのは分かる。

泥棒扱いされても、悪口言われても、「病気やねんから」って、分かる。分かる・・・いや、分からーん。分かるか―!

そんなん、私の機嫌と体調にもよるやん。ええ、心狭いですよ、アラフィフにもなって、あたしゃ心が狭い。恥ずかしいぐらいに。


比較的余裕があるときやったら、別にどっちでもええことは、「へー、そうなん」と、11回目の話でも「そうやな」「ごめん」「気を付けるな」って話合わせて言えるけど、

母が自ら銀行の人呼んで、私に立ち合い頼んできたのに、ほかの家族には娘が財産狙って銀行の人呼んだ!っていうし、言い訳したくなるやん。

兄なんて、母のことほったらかしのくせに「お前、銀行の人呼んだんか!」って、私のこと全く信用してないしー。ムキーッ。という日もあるんです。人間だもの。

色々、読んだ本の中でも、これを読んで、私がだいぶ気持ちが楽になった本をご紹介します。この本のおかげで、認知症を以前よりは理解し、母にもうまく接することができるようになったかしら。(前よりはですよ、前よりは)

①認知症の9大法則 50症状と対応策 杉山孝博著

マンガでわかる認知症の9大法則と1原則


認知症という病気にも波がある。

サーフィンのように、うまく乗りこなそうと決めて、自分へのケアを最優先するようにしたら、私の心のダメージがましになってきたんです。自己中かもしれんけど、ずっと介護で文句いわれっぱななしじゃ、病むわ。

認知症を介護する側の心も同じぐらい大切にせなあかんと、私は思う。

母が住むあちら(認知症の人が住む世界)と、私が住むこちら(認知症でない人が住む世界)は何が違うんやろうとよく思う。母と普通に楽しく会話して「あれ?前のお母さんやん!」とうれしいときもあれば、手が付けられないぐらい怒っていることもある。母にしたら、何か大切なものが、知らんうちになくなる世界って、怖いやろうなと思う。

行ったり来たり、母も忘れていくことが怖いんやろうなと考えてみたり。

あちらとこちらの、ボーダーラインの上で、たまに母の気持ちになりつつ、俯瞰して物事をみられたらなと思う。

そんな私のあかんたれ話を、ぼちぼちと書いていきたいなぁと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?