海外で髪を切ること

ハンガリーの首都・ブダペストという街は、ドナウ川西のブダと東のペスト側が合併してブタペスト(正確には、ブダペシュト、と言う発音)となっています。私は今ペストに住んでるのですが、今日は髪の毛を切るためにブダに行きました。

海外で髪の毛を切ることはリスキーといえばリスキーなんですが(アジア人の髪質はヨーロッパ人と違うから変な髪形にされるとか)、私は日本にいるときから「どう頼めばその髪型になるの?」みたいな奇抜な髪が好きなので、海外でも特に気にせずいろんな美容室に行っています。奇抜といっても、色が虹色とかそういうのではなく、ベリーショートとかめちゃくちゃ短い前髪とかね。

ブダペストに来てから既に3回髪の毛は切っていて、それで「あ、この人いい!」っていう素敵な美容師さんに会えたんだけどなぜか今休業中?なのか、連絡が取れなくなってしまい、HPも消えていたので、また美容室探しの旅を続けることに。今日行ったところは、ペスト(都会)側とは違って緑が多く静かで、とてもいいロケーション。担当してくれたハンガリー人のお姉さんも優しく丁寧な方。今日はとてもベリーショートにしたい気分だったので、二人で写真見ながら、イメージを伝えてお願いしたんだけど、久しぶりに仕上がる過程、そして出来上がりを見て素直に心から笑えない感じになりました。

藤田嗣治 a.k.a ワカメちゃん みたいな感じに。ワカメちゃんヘアは好きだしそれっぽいの頼んだからいいけど、なんか若干左右対称じゃないのと変にはねてしまう部分があって、なんか思ってたんと違う。切ってる途中も明らかに私の髪に戸惑っている様子をしていたので、こっちも不安になり、終わってから言葉ではありがとうといいつつも、最後の最後まで引きつった顔をしてしまいました。

でも今、半日ぐらい経ってみて、街を歩きながら自分を何度もウィンドウ越しに見たり、通りすがる人が誰も私の髪型を注視していなかったり、同僚に会って「髪型変えた?いいね!」って普通に対応されると、ちょっと左右対称じゃないとかはねてるとか、本当に些細なことで自分は何をそんなに気にしていたのかよくわからなくなってきました。今はこの髪形好きやなっていう気持ちと、やっぱり変なやなって思う気持ちが半分半分です。いや、やっぱり変が7割ぐらいか。

お姉さんは帰り際、「時間かかってごめんなさい。アジア人の髪に慣れてなくて、感じがつかめなかったんだけど、次はもっとうまく出来ると思うからまた来てね。」と言ってくれたんだけど、私は「いえいえ、とてもこの髪型好きですよ。ありがとうございます。クスヌムセーペン(ハンガリー語でありがとう)。」と苦笑いしながら半ば走り去ってしまったんだけど、なんだかどんどん申し訳なくなって、今初めてのノートに気持ちを書いてみたところです。

お姉さんは三年の経験があると行ってたけど、髪の毛の扱いがあんまりうまくなかったところを見るに、美容師の中では多分まだ経歴は浅い方だったんじゃないかな。日本でも海外でも、今まで私を担当してくれた人は10年以上の経験ある人ばっかだったからその人たちと比べてしまいました。そこに今まで切ったことないアジア人が来て、しかもベリーショートにしてくださいっていう変な注文を受けて困ったと思うんですよね。ショートからベリーショートにするだけだけど、難しかったのか二時間ぐらい時間を使ってくれました。自分的には丁寧に精一杯できるだけやったけど、どうもお客のアジア人は満足してないようだ、どうしよう。そう思ってたような顔をしていたような。

切られた髪の毛は戻ってこないし、死ぬほどひどい髪型じゃないわけだから、帰り際ぐらいとびきりの笑顔でありがとうと言ってあげることぐらい出来たんじゃないかと。人に優しくなりたいなぁと思いつつも、果たしてそこで嘘の満面の笑みを見せることが優しいことになってるのか、よくわからないなぁとモヤモヤした日でした。

で、また行くかどうかって行ったらそこはやっぱりサービスに納得していないから行かないんですけど。海外で髪を切るのはリスキーだし、髪を伸ばし続けて日本に帰った時におなじみの美容師さんにだけ切ってもらうという手もあるけど(それが一番安全で間違いないけど)。でもなんか心のどこかでちょっと変なこととか思いもよらないことが起こるんじゃないかと期待して、ちょっとドキドキしながら海外の美容室を巡る、そんな春の日でした。