一月二十日・二十一日・二十二日@ウィーン

一月二十日

今日は学部全員でウィーンに行って、大学のウィーンキャンパスの見学。小さい学部とはいえ、学生・ポスドク・教授・事務員など全員ひっくるめて行くので、バスを二台用意したなかなかの大移動である。大体の人はウィーンで一泊し、うちのラボはミーティングなどがあるのでさらに滞在を伸ばして金曜日までの四泊である。

バスの中ではSNSをしまくったり寝たりして、ゆらりゆられてブダペストからウィーンまで三時間ほど。途中サービスエリアに寄ったりして、私は車での旅をしないのでなかなか興味深く観察したりする。

着いたら早速大学のツアーで建物を見回ったり、図書館を案内してもらったりする。そのあとはみんなでケータリングのランチを食べる。夜も似たような感じでケータリング+ワインなど少し飲み物が増えている程度。私は疲れたのでラボの先輩とちょっと話してすぐにホテルに帰る。

次の日先生とミーティングなのにまたいつものごとく何も出来ていないので必死にプログラミングをするがなんだか体調が悪くて鼻水が止まらない。とりあえず早く寝て朝することにする。

一月二十一日

朝早く起きてプログラムを完成されて、とりあえず何か持っていく物をつくる。しかしながらいい加減こういうやり方を変えなければいけない。最近は変えたいというモチベーションも戻ってきたので、少しずつ変えていけるはずだ。

午前中先生のオフィスに行ってミーティング。ウィーンのオフィスでのミーティングは初めてなのでなんだか新鮮である。ちょっと作った実験刺激を見せて相談したあと、色々アドバイスをもらうので次回はそれにそって作り直すことにする。

そのあとは先日あった学生だけのラボミーティングの内容で、ウィーン移転に関して質問があったことを先生にまとめて聞く。先生もうんざりしているんだろうなとは思いつつ、学生には聞く権利もあるし先生も答える義務があるとわかっているから、お互い淡々と話す。私のビザの話はとても親身に聞いてくれる。

お昼からはベイズ統計の授業で、他学部の人はウィーンにきてないので、ブダペストのキャンパスと中継しながらの授業。いつもより人が少なく、この先生特有の特定の人物を当てたりして脅かすスタイルが戻ってきたのでうっとなるが、一年生の頃のように純粋な自分でもないので、割と図々しい態度で質問したり答えたりする。

そのあとは大学のある第十区のツアーで二時間ほど街を歩く。第一次世界大戦ごろから現在までの歴史を聞きつつ、マーケットに行ったり教会に入ったり温水プールを見学したりする。純粋にウィーンの素朴に素敵なところを見せてくれるガイドさんと一緒に歩いていると、ウィーンは悪くないのだと思える。この一年ほど学部内外問わず交わしてきた色んな議論が心にポツリポツリと蘇ってきて、ワクワクしたり悲しくなったり今までに経験したことのない気持ちになる。

ウィーンは悪くないしブダペストも悪くない。大学も悪くないし、私たちも悪くない。ただこの時この場所いたのは運が悪かった。自ら選ぶのではなく、強制的に選ばされる形で国を移動するのは納得がいかないのも当然だ。しかしこれも一つのチャンスとして捉えることだってできるのではないか。私はそう考えたいと常々思う。

夜はシンガポール人の先輩とアメリカ人の先輩と少人数でセルビア料理(私の大好物)に行って、帰りにワインを買ってホテルの部屋の中で飲みながら話し合う。十二時に解散。

一月二十二日

先生とのミーティングや必修の授業が火曜日に終わったので、今日は朝一から科研費で企画しているミーティングに参加する(残念ながら面白そうなのがあと二つあったが時間がなくて逃した)。一緒に協働するとはどういうことなのか(何が最低限の条件なのかなど)を話合うが、どう考えてもこの手の問いは解が出るわけではないので、議論はしてるけれど結局どこに辿り着いたのかはわからない(私が話を追えてないだけなのだが)。

特にこの科研費は心理学者、哲学者、霊長類学者が集まる学際的な研究のため、そもそもそれぞれの意思疎通をするところから時間がかかる。この五年の研究も来年で最後である。

昼ご飯は後輩と一緒にちょっと歩いてトルコ料理へ。久しぶりにラム肉を食べて満足するが、やはりウィーンは物価が高く値段はブダペストの倍ぐらいする感覚である。通貨が違うのでその辺の感覚も曖昧であるが。

午後は作業をするかと思いつつdotfilesのことなどをネットで知って、自分もやり始めたいがなんのことかさっぱりわからんと思っているうちに夕方になる。いつもこんな調子で本業から逃げている。

夕方は科研費の会食があったので、ミュージアムクォーターまで移動する。早めに着いたので荷物を整理してたらそのうち指導教員とその仲間たちがきて一緒に入る。特に意図していなかったが、たまたま座った席は特に仲良くない人(というかポスドクの先輩と他大学の人)だった。これが逆によくて、特に普段なかなか会話できないラボのポスドクの先輩と、違うラボの博士学生と離せてとても楽しい。やっぱり会食にくるとこういう予期しない交流があって良いなと思う。

特にその違うラボの博士学生は今一年だけうちの大学に滞在研究しにきているのだが、分野が科学哲学でその中でも特に認知科学における科学哲学の研究をしていて、まさに私のやりたい分野そのものであったため、ちょっとその話も出来て純粋に楽しいと思えた。