九月九日・十日・十一日@ベルリン

九月九日

学会のため朝一で空港まで行き、ベルリンへ向かう。早く着きすぎてまだチェックインカウンターが空いていなかった。

飛行機で一時間半ほど飛ぶともうベルリンに着く。テゲル空港でスーツケースが出てくるのを待つが、ベルトコンベアーが動き出すのに三十分以上かかり待ちぼうけ。

発表用のポスターを印刷していなかったので、街中で印刷しなければならない。怠惰で印刷しなかったのではなく(若干それもあるが)、格安航空だと手荷物でたまにポスター(A0サイズ)が取り上げられるか追加料金を払わされるという、本当かどうかわからない風の噂を聞いて怖くなり、現地で印刷することにした。

クロイツバーグという、なんだか若者が集まっていい感じのところ(?)と聞いていた地域のコピーショップに行くが、A0は対応していないと言われる。そこのお姉さんに教えてもらって、電車で二駅ほど隣にあるエリアのコピーショップを紹介してもらう。

コピーショップではほとんど英語が通じず私もドイツ語が喋れないので焦ったが、なんとかA0をプリントしてもらう。領収書をお願いしたが、250ユーロ以上じゃないとコンピュータで印刷した正式なものは出せない、ということを理解するのに数分かかる。紙の領収書をもらう。

ホテルにチェックインし、夕方から学会の登録が始まっていたので会場に行く。そのあとみんなでソーシャルディナー。同じテーブルの人は、ドイツ人、イタリア人、スイス人、フランス人、オーストラリア人、香港人、そして日本人(私)といったメンバーだった。

九月十日

学会初日。昨日会った人に加え今日からきた人々に会う。最初はシンポジウムトーク。ジャズのパフォーマンスの解析の話など。

今回の学会はSystematic Musicologyという分野(なんなのかいまだによくわからないが何かしら音楽に関係している研究分野)の集まりで、かなり小規模で学生のためのものである。参加者もおそらく修士か博士ばかり。

お昼になるとまたみんなでご飯。ベルリンは非常にいろんな人種の人が住んでいるが、その中でも中東アジア系の人が多く、お昼はトルコ?中東?料理でサラダを食べる。

戻って認知科学の学会で聞かないような、音楽の分析のセッションに行ってみる。科学的な手法ではなくて、曲を歴史的・哲学的な観点から解釈するというもので、面白かったが難しくてほとんど理解できなかった。

夕方から現地の人によるベルリンツアー。いわゆる普通の観光地を回るものではなくて、さすがベルリンでの音楽の学会ということもあって、パンク・ヒップホップ・エレクトロ/テクノミュージックの盛んな地域(クロイツバーグ 、昨日コピーショップを探しに行ったところ)の歴史的な背景と音楽の繋がりなどを聞いた。

最後はyaamというベルリンの中にあるアフリカ村みたいなところに行ってビールを飲みながら談笑。

九月十一日

今日は午後からポスター発表だが、朝はセッションに参加する。正直言っちゃなんだが、やっぱり学生の大会なだけあってあんまり発表のクオリティがいいなとは思わない。のだけれど、音楽という繋がりでこんなに広く研究分野があるということを知れたのは収穫である。自分の研究をどこの立ち位置に置くのかということについては、今だに悩みどころ。

お昼ご飯は食べる人が見つからなかったので、一人で外を歩いてみる。昨日と反対側に行くと、思わぬ面白い通りを発見する。カフェやバーガーショップ、小さなブティックなどなど…やっぱり歩いてみるもんだなと思う。そこの並びにあるPhojito Vietnamese & Tapasというところでフォーを食べる。ジャスミンティーベースのレモネードが美味しかった。

午後はポスター発表だが色んな人がきてくれて、好意的な意見をくれる。逆にいうとあまり引っかかりのない研究で面白くないような気がしてくる。プレゼンの仕方を変えなければならない。実際に音楽をやってる人ばかりなので、それぞれの経験からのコメントは面白かった。

夜はフリーディナーということでだいたい学会会場から歩いて一時間ほどのところのレストランに行く。電車で行くのが一般であるが、時間もあるので歩いて行きたい人は歩いていこうということになった。

たまたま歩き始めてた時に話していた学会運営をしている修士の学生(オーストリア人だけどベルリンで勉強中)と話し続け、私の歩きが遅いのか二人とも遅かったのか、気づいたら集団から取り残される。彼がベルリン在住だからまあ最終的にはたどり着けるだろうと思いながら(一応地図もあるし)、ちんたら歩くとその途中に色々ベルリンの観光名所など寄ってくれる。レストランの最寄りの駅で彼がミュンヘンに手紙を出したいと行って郵便局に立ち寄る。

夜はビュッフェスタイルの伝統的なドイツ料理。ソーセージ、肉、じゃがいもなど、ともちろんビール。隣のメキシコ人の女の子が、今はイギリスでの修士が終わって博士を考えているが奨学金がないこと(イギリスはEU市民以外への奨学金が劇的に少ない)、メキシコからイギリスに来た理由は元夫と決めた約束だったが彼は結局来なくて離婚したこと、など壮絶な物語を聞く。私の人生も、途中からおかしくなっているので面白いが、自分の人生の深みってどこだろうなと思ったりする(なんだか薄っぺらい気がするのだ)。