五月二十九日・三十日@ウィーン

五月二十九日

今日は美術館に行くことにする。朝いつも食べているJoseph Brotを見たらちょっとカビが生えていた(三日目ぐらい)。新しい保存袋が悪いのか(前の保存袋だとすぐ乾燥するから厚手のやつを買った)、夏に近づいているからなのかわからない。とりあえずカビの生えてるところだけ削って食べるけどお腹は痛くならない(というか食べ物でお腹が痛くなったことがほとんどない)。

今ウィーンでは五月から八月末まで有効な美術館パスが売っていて、それで八つの美術館を訪れることができるのだが何と値段が19ユーロと破格である。同居人に教えてもらってしばらく経ったが今日前から気になっていたMAKに行ってみた。

いつもそうなのかコロナのせいか、特別展は予約制でちょっと待たされたりもしたが、結局じっくりみたので四時間ぐらいかかった。特に女性アーティストの作品展が良かった。

元々芸術は好きなのだが、ケチゆえか日本にいる時はほとんど美術館に行ったことがなかった(京都にいた頃なんかたくさんあったのにもったいない)。子供時代も、学校の行事で美術館に行った記憶もない。親のせいにするわけではないが、そういうところに行く家族じゃなかったし、家に絵画のようなそれらしいアート作品もなかったし、食器や家具もなんとなくあるもので特に美術性が高いものはなかったように思う(あったとしても貴重だから目に触れるところになかった)。

そんな感じで育ったので高校生ぐらいに前衛的なファッション雑誌を読んでいた程度で、美術品を購入したこともない。本屋(兼雑貨屋)で働き始めてから仕事でギャラリーの展示があったり作家さんの作品を売ることがあったので美術的なものに触れ始めて、自分も買うようになった気がする。イギリスにいたときは美術館が無料なところが多くて行くこともあったが、ブダペストに移ってからはまた足が遠のき、特に色々回ることなくウィーンに引っ越した次第である。

ウィーンは前に何回か来たことがあるので既にいくつかの美術館は回っていたが、コロナのロックダウン中でお店も閉まって美術館しか開いていない時期があったので、これまでに行ったことないところも回るようになった。さらにこのBundesmuseen Cardみたいなものがあるともっと手軽に行けるようになって嬉しい。ウィーンにいると芸術は生きるために必要なんだということをひしひしと感じる(やっぱり芸術の都だなぁ)。

夜は友達とアニメを見る。自分一人だったらアニメを見ないし、今見てるのはたとえ見たとしても途中でやめそうな種類なので人と見るのはよい。こういう偶然性は誰かといると生まれて楽しい。

五月三十日

昨日はアニメを見た以外は一切パソコンを開かずに、気持ち的には充実してた。やっぱりパソコンの前にいるよりはぼーっとしている方が遥かに体に良さそうなのだが、結局今日はパソコンを開くことから始まる。シンガポールにいる先輩とスカイプ。

この前先輩の公聴会が終わったのでどんな感じだったかとか、今後の予定とか聞く。なんかすっきりした顔でいいなぁと思う。そしてこの先輩だけじゃないのだが、私より上の人はほぼPhDの終わりで大学が移転になってコロナになって羨ましいなと思う。私はまだデータを取らなければいけなくて、うちのラボは先にウィーンに移った。新しい国の、新しい言語で、新しい住まいを探して、新しくビザの申請をして、新しいラボで、何もかもいきなりゼロになった感じだ。もし一年前に大学に入学してたら、この先輩みたいな感じで今頃終わっていたか、流石にそれは早くても国は移動しなくて良かったと思うと、どうでもいいことに心身的疲労を感じなくて良くてよかったんだなぁと思う。

ウィーンに来たのは半分私の意志であるとはいえ(もう一年ブダペストに残ることもできたがどうせ今年こなければいけなかったし)、コロナがこんなに長引くことになるとは思っていなかった。そう思っていた人が多いだろうし、私も自分の意思決定を誤ったとは思わないが、ただでさえ他国に移るのはストレスなのに、日々更新されるルール漬けの日々は外国人には特に堪える。とはこのような状況下で法的に滞在できているだけありがたいのだろう。逆にいえば海外在住五年間の中で三ヶ国も経験できたのでお得でだったと考えておこう。

昼は天気が良かったような気がするが、なんか部屋でパソコンの前でだらだらしていたらこの時間である。論文を書こうと思って全然書けない(昔みたいに書きたくない!みたいな気持ちではないのに不思議だ)。