博士就職雑記

博士の四年目の終わりで、そろそろ就職のことを考えないといけない。とはいえ後最大一年半ぐらいお金が出るので、そんなに焦ることはないのだが、今度は納得して就職したいし、人生の方向性を徐々に決めることになるように思う。

と言っても過去に納得のいかない就職はしたことは一度もないのだが、やりたいことと人との関係を大切にして、その他あまり重視していなかった側面がある(主に給与、勤務地、勤務形態など)。それゆえによくいえば柔軟だが、悪くいえば先の見えない意思決定が続いていた。まぁその行き当たりばったりのおかげで研究サポートの仕事もできたし、雑貨屋もできたし、そしてなんだかんだ海外で五年以上住めるようになって、それはそれで面白かった。

結局二十代の私は専門性を獲得するのが怖くて、いつでもゼロからやってやるんだ、何にも染まらないぞ的な気持ちでいたのだが(ゆえにアカデミアから去ったり慣れてきた頃に仕事を辞めたり)、博士号を取得すると言うことは嫌でも専門性を獲得することであり(もちろんアカデミアの中ではカーストの一番下なので何もないに等しいかもしれないが)、学部卒で仕事を探したあの頃と今の私は全くことなる。

昔は自分に対するイメージがあって、多分私がこういう仕事がしたいんだということを決め付けていた。周りに進路相談や面接練習に付き合ってくれる先輩もいたのに、私は頑なに誰にも相談しなかった。それでいて星の数ほど受けたわけでもないけれども、自分が応募したところにはついに受からなかった。

結局その後の人生を簡単にまとめると人の縁を辿ってここまで来ましたと言うほかしかない。つまり自分で決めた自分などどうでもよくて、他者から見える自分を売るほかないのである(そんなこと今気づいたのかというツッコミが入りそうだ)。ということは自分が何に向いてるのかわかりようもないので、今日はとりあえず手っ取り早くできることということで求職情報が載っているサイトをいくつか巡回した(本当は論文を書かなければならないのに、こういう時に限って関係ない作業が捗るのは研究者あるあるである)。

しかしなんだかんだ求人も多いのでやっぱりこれを見てるだけではよくわからない。人に話を聞く必要がある。博士をやってか、歳を食ってか、自分の嫌な環境や人々というのは大体わかる勘が冴えてきたので、そういう意味でもまず話して相手を知り私を知ってもらう必要がある。ということはつまり書類一通送れば終わるわけではなくて、時間がかかるプロセスだ(もちろん大企業はそんな話してくれるわけもなさそうなので、採用プロセスでわかっていくしかないのだと思うが)。

職にこだわりがないので、本当にアカデミアでもいいしアカデミアじゃなくてもいい(アカデミアでもいいと偉そうなことを言うと叩かれそうである)。正直精神的苦痛を与えられないなら、別にやりたいことじゃなくてもいい(というか、問題意識によって課題自体はいくらでも面白くなれる。そうでないと研究などやってられない)。ただそれなりに獲得したスキルがあるので、それをちゃんと評価してくれるところがいい。ヨーロッパと日本とざーっと探すが、日本と同じような経済規模の国と比べるとヨーロッパの方がそのような職種は大体給与が高い。ので必然的にそっちに行きたくなる。

結局金かと言われればそうなのかもしれないが、しかし人にどれだけ金を払ってるかという会社の意思でもあると思うので、それなりに能力を要する仕事に対してちゃんと対価を払えないっていうのは、やっぱりノーという人がいないと社会が向上していかないと思う。というかこんな意識が高い話をしたいわけではないのだが、昔の私のように「やりたいことだし!」と言って給与や福利厚生を見ないで就職する人がいる限り、どこ職種でも賃金は上がらないだろう。

日本のアカデミアだと学振PDが一番の花形と思っているのだが(しかし日本にいたのが五年以上前なのでもしかしたら古い情報かもしれない)、やはりネックなのが雇用関係がないというところに尽きる。もしかしたら私が五歳ぐらい若かったらPDの名誉と天秤にかけてPDを取るかもしれないが(偉そうに書いているが全て仮定です)、今リアルに生活のことを考えたらうーんとなる。厚生年金に入れないし雇用保険にも入れないと言うことだと思ってるが、これも結局ざっと読んだだけではわからないので、実際にやったことのある先輩に明日にでも連絡してみたいと思う(みんな私を覚えているのだろうか…)。

そして今日は大学の方のキャリアセンターにも連絡して、面談の日にちを決めてもらう。アカデミアの就職と言うよりは、もっと一般に博士号を取得したらどういう道があるのか知りたい。自分の人生プラン的にできれば日本で住みながらドイツの会社で働くみたいなことが起これば最高だが、そんなのは相当手にスキルがある人しかできない気もするし、ただもしかしたら自分が思っているより世界は国際的かもしれないので聞いてみようと思う。

ここまでただ思いつくままに書いて、そもそも選べる状況であればそれはかなりありがたいことである。結局ここしかないみたいな状況になり辛い仕事をせざるを得ないのかもしれないが、それはやはりなるべく避けたい。うちのラボの先輩は大概博論を出した後に本腰を入れて就職を探し始めるのだが、果たしてそれでどうやって職を見つけれているのか不思議である(まぁほとんどが身内に雇われてるのだが、その雇われる伝統も五年の研究費の終わりとともに幕を閉じそうなので私には関係のない話だ)。