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イスタンブールでルーマニア人オタク美青年留学生と共同生活した話

トルコで最初に滞在した街アンタルヤでお世話になったアパートのホストがイスタンブールにもアパートを持っているということで、そこに1ヶ月滞在することにした。

イスタンブールとは言っても、観光名所である中心地から車で1時間ほど離れたところで、観光客は今のところ見たことがない。海外からの移住者、観光客ともに多かったアンタルヤとは大違い!アンタルヤの友達に会えなくなって、寂しい毎日になるのかな、と思っていたけど……

イスタンブールのアパートで、思いがけない人物が私を待っていた。20歳のルーマニア人留学生クリス。背が低いし、ちょっと太めだけど、顔がめちゃくちゃカッコいい!!まるで王子様みたい!!

クリスは服はいつも黒で、ごついネックレスをいくつもぶら下げている。タンクトップから胸毛がのぞいている。髪が長いので、まるでヘビメタバンドのメンバーみたいだ。

私のイスタンブール初日、クリスは買い物を手伝ってくれた。この地域には大きいスーパーはない。2月から来ていたクリスは、たまごを買うならここ、野菜や果物を買うならここ、パンはこの店が一番おいしいと、一緒に周って教えてくれた。

昔ながらの建造物をそのまま利用したスーパー

クリスは力がめちゃくちゃ強い。10ℓの水のボトルを、私の分と自分の分2本持って、坂道を登ってくれた。この地域は急な坂道だらけ!私一人じゃ10ℓ1本でもきつい。クリスはここに来てから、水を持ってしょっちゅう坂を登るようになったから、やせたんだって。今でも十分ぽっちゃりしてると思うのはさておき、本当に助かる!!

これを両手に1つずつ持って、クリスは坂を登る
買い物に出るには、こんな道を往復しないといけない
正面に見えるのはボスポラス海峡

クリスはとてもよく寝る。学校がない日は、午前中に起きてくることはまずない。17時まで寝ていた日もある(私はクリスが生きてるかちょっと心配になった)。クリスの部屋はエアコンがなくて暑いのに、しかも壁越しに私が日本語のレッスンをしているのに、ぐっすり眠れる。でも、学校に行かなきゃいけない日は、ちゃんと8時に起きられる。謎の生き物。

私が日本語のレッスンをする場所
自分の寝室に机はあるけど、インターネット接続が弱すぎる
壁の向こうはクリスの寝室

クリスは日本のアニメや音楽が好きなので、日本語が少しわかる。「いってきます」と言って大学に行き、帰ったら「ただいま」と言う。私が帰れば「おかえり」と言ってくれる。アパートにいると、トルコにいることをつい忘れてしまいそうだ(笑)

クリスは起きている間はほとんど誰かと電話している。5時間ぐらい続くこともある。初めは大学のプロジェクトか何かかな、と思っていたけど、夜10時を過ぎても続くし、「スパイダーレディー」って言葉が出てくるし、話しながらトイレに行ったり、キッチンで食べ物を用意したりもするので、これは大学と関係なさそうだと気が付いた。

そんなに長く何をしゃべっているの?と聞いたところ、オタクのコミュニティーでロールプレイの準備をしているのだとのこと。私にはちょっと想像のつかない世界だ。そのときは英語でしゃべっていたので、いろんな国にメンバーがいるんだろう。

ルーマニア語で電話するときは、いつも同じ友達が相手らしい(電話の声はいつも聞こえる)。ババババ、ズドーンとかいう音も聞こえるので、ゲームをしながら話しているんだと思う。ルーマニア語の響きはとてもセクシーだ。私はクリスの声も大好きなんだけど、その上こんなセクシーな言語を話すなんて、反則だと思う(笑)

クリスは勉強ではなく、大好きなオタクワールドに浸っているからこそ、あんなに夜更かしできるんだ!と私は納得した。今朝は7時まで起きていたと言っていた。私が朝4時にトイレに起きたとき、クリスの部屋のドアの下から明かりが漏れていたのを覚えてる。

クリスはもったいない。こんなにカッコいいのに、学校に行くとき以外はいつもアパートにこもっている。しかも、ほぼ常にパソコンの前。ただでさえ動かないのに、パンを大量に食べたり、私が買った蜂蜜を気に入ってそのままスプーンで食べたり、アイスを大きいパックごと食べたりするから、ぶくぶく太っちゃうんじゃないかと心配だ。

クリスはカッコいい上に親切だから、本人さえ望めばたいていの女の子とデートができると思う。でも、アパートにこもっているからこそ、私が目の保養ができる(笑)それに、もし本当にクリスにデートに行かれたら、私は相手の女の子に嫉妬しちゃうだろうな。

私達はよくお互いに食べ物をあげたりもらったりする。クリスは私に杏やスイカやパンを分けてくれた。じゃがいも入りのオムレツや、私が大好きなガーリックときゅうりとヨーグルトのソースも作ってくれた。

クリスと一緒にサッカー観戦
クリスはピザを作り、私はビールやオリーブ、チーズを買った

私はお礼に日本の味をクリスに教えたくて、たまご焼きや肉じゃがを作った。日本の食材は醤油しか手に入らないこの街で、ペルーにいたときに買っただしの粉末が大活躍した。クリスは全部「おいしい!」と完食してくれた。

クリスが一番好きなのはポテトサラダ
マヨネーズと間違えて謎のガーリックソースを買っちゃったけど

クリスはずーっとパソコンの前にいるから、食事もパソコンの前でする。使った食器は何時間も机の上に放置される。だから、私はクリスが食べ終わった頃に「洗うものない?」と確認するようになった。まるでお母さん(笑)

私が大学生だったら、絶対クリスの彼女になりたかったと思う。でも、もし付き合ったとしても、私よりオタク仲間と過ごす時間を優先されて、耐えられなくなって別れるんだろうなと思う(笑)

私から見たら「もったいない」クリスだけど、本人はとても幸せそうだ。毎日大好きなことを、寝るよりも優先して、何時間もできているからだ。そこには他人の目なんて関係ない。私の「もったいない」なんてどうでもいい。自分が大好きで、やれる時間があるからやる、そしてそれはすごく楽しい。シンプルなことだけど、実践できている人は少ないと思う。

私が20歳の彼から学んだいろんなことの中で、一番大きいのはこれだ。クリスがカッコいいのは、顔だけじゃなく、きっと自分の生き方を持っているからだろう。私もブレずに、自分が好きなことを優先しよう!クリスは私に良いお手本を見せてくれた。

肉じゃがとご飯も喜んで食べてくれた

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