呉越同舟と円周率 (by理科系夫)
ホームセンターに車で出かけた。
私のベッドの下に収納ボックスがもう一つ欲しかったから。
歩いて行ける距離だが、かさばるものを買うときには、やっぱり車。
土曜日の午後のホームセンターは大にぎわい。
駐車場の中をぐるぐる回る。
2階… 3階… 。
ようやく5階で空いている場所を見つけた。
理科系夫は車を止めると
近場の柱を見上げて、こういった。
理科系夫「呉越同舟（ごえつどうしゅう）」
あつこ「急になんですか？」
理科系夫「ここ、5Fね」
駐車場の中が
5Aから始まって、B 、Cとアルファベットで
区画されている。
停めたところは5Fだった。
あつこ（……）
理科系夫「だから
ごえふ（5F）どうしゅう」
あつこ「はあ」
（何言っているんだろう)←ココロの声
ーーーーー
首尾よく買い物が終わって駐車場に戻ってきた。
車がいっぱい。
5階に来たが、どこに車を置いたかはっきりしない。
あつこはひらめいた。
あつこ「呉越同舟…だから5Fだっけ」
こうして首尾よく車を見つけ出すことができた
理科系夫「ほらね。覚えていたでしょう」
うっすらと笑っている。
ーーー
しかし、あつこはなんとなく面白くない。
運転中の理科系夫に話しかける。
あつこ「じゃあ、もしも停車位置が5Bだったら」
理科系夫「ゴビ砂漠」
あつこ「5Cは？」
理科系夫「ゴシゴシこする」
あつこ「じゃあ5G！」
理科系夫「ゴジラ！」
そう言いながら、
昔のゴジラのテーマソングを口ずさみ出した。
ちゃちゃちゃん、ちゃちゃちゃん、ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃん。
あつこ(だんだんヤケになってくる）
「じゃあ5A!」
理科系夫「うーん、天城越え（あまぎ5A）
(歌い出す)
なにがあぁーっても
もういいのー♫」
あつこ「うわわわわ。
わかったから、もうやめて！」
危なくカラオケ大会になるところだった。
ーーー
理科系夫は2フレーズほど歌い終わると
こういった。
理科系夫「意味のないものや、わけのわからないことを覚えるときには、
何かストーリーを見つけて覚えるといいんだよ」
あつこ「あー、似たような内容のニュースを聞いたことがあります」
それは円周率を何千桁も覚えている人の話だ。
円周率は、ご存知の3.1415… と続く数字だ。
（ググってみたところ、こんなニュースがあった）
（ニュースのざっくりとしたあらすじ
円周率１１万桁を覚えている原口さん
意味のない数字の並びである円周率に、独自の語呂合わせで７７０以上の物語を作り、記憶している）
あつこ「円周率を11万桁！
覚えるのにも、
関係がないお話をたくさん作って、覚えていくんですね」
理科系夫「わかるなぁ、それ」
あつこ「日本史の年号の語呂合わせと似てる。
いい国作ると幕府たて…とかあった」
理科系夫「鎌倉幕府の成立は1192年じゃない。
研究が進んだ結果、1185年だったか？
変わった。
今の中学生には違う語呂合わせがあるんだろう」
あつこ「はあああ。そうでした。
そんな話もありました。
鳴くよウグイス平安京も変わっちゃったのかしら」
ーーーー
こうして、意味のないダジャレがものを覚えるのに有効だと思い知ったあつこ。
無事に自宅に到着し、
ほっと一息、お茶を飲んでいると。。。
突然、理科系夫が朗々と声高く、言い始めた。
理科系夫「産医師（さんいし）
異国に向こう （いこくにむこう）
産後薬なく（さんごやくなく）
産婦みやしろに （さんぷみやしろに）
虫さんざん闇に鳴く（むしさんざんやみになく）
あつこ「ど、どうしたの？
呪文なの？何か怒ってる？」
理科系夫（お茶を1口飲む）
「円周率」
あつこ「はあ？」
理科系夫「円周率の数字途中までだ。
このゴロ合わせは、わりと有名。
僕は学生の頃、百科事典で見た。
そして今でも言える」
あつこは円周率を途中まで調べてみた。
π=3. 14159265
35 8979
323846 2
643383279
5028841971 6939937510
あっている。
あつこ「ほー、その意味のない羅列で円周率が覚えられますね」
理科系夫（得意そうな顔つき）
あつこ「まぁそれがあったとしても、
覚える気にはならないけど」
理科系夫、めげない。
理科系夫「ダジャレは記憶力を鍛える」
あつこ（こうして続くのか…）
●今日の教訓●
意味がないものを覚えるときには、ストーリー仕立てで覚える。
ダジャレでも、こじつけでもオーケーである。
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