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私は冷たい女だ。

母の老人ホームを訪ねると
必ず受付の人が
おでこに体温計をかざす。 

窓に「L」と表示されている。
Lowの略。
低すぎるのだ。

「じゃあ手で良いですか?」

おでこ、
右手の内側、
左手の内側、

この辺で受付のおばさんがそわそわし始める。

「首すじで測りたいので
えりをゆるめてもらってもいいですか」

ええ、良いですよ、と言いながら 
ダウンの衿元を開き、
ブラウスの第一ボタンを外す。

ようやく出た。35度3分。

発熱していないのは安心できるけど
あまりにも低すぎるのも悲しい。
ーーーーーーーー

きのう行った歯医者で。

iPadのような少し大きめの画面に
顔をうつすタイプの器械で体温測定。

「枠の中に顔を入れてください」
自動音声にうながされる。

「もう少し近づいてください」
前に出る。

「もう少し離れてください」
後ろに下がる。

「丸いワクの中に顔を入れてください」
入れているつもりなんだけどなあ。

3回やり直しても体温が出ない。
画面にうつる私の顔は、困っている。

体温が低いうえに、タイミングがずれているのだろう。
こんなところにも不器用さが出るとは。

うしろに、次に測る人が並んでしまった。

「すみません、私いつも体温が低くて測れないんです」
つい、あやまってしまう。


受付のお姉さんが言った。
「あつこさんは心があたたかいんですね。」

その一言でちょっとだけ、ほっとした。
やっぱり器械の自動音声じゃ、この返しは出ない。

結局5回目で測れた。35度6分。

ーーーーーーーー
体温をはからないと、どこの施設にも入れない時代になってしまった。
体温と性格については、昔から2パターン聞いたことがある。

「手が冷たい人は心が暖かい」
「手が冷たい人は心が冷たい」

なんでもありだ。都合よく自分に合ったほうを使おう。うんうん。

理科系オットに聞いてみた。

あつこ「受付で体温が測れなくて困ったことない?」

理科系オット「ない」  
一言で終わった。

理科系オット「体温低いと免疫力が下がるっていうし、何とかしたら?」

そんなこと言われてもなあ。

あつこ「ジンジャーティーでも毎日飲んでみるとか」

理科系オット「作るなら、ボクのぶんもよろしく」

ふっと立ち上がって、どこかに行くあつこ。

そう、私は冷たい女なのだ。

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