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【蒔絵講習の記録】第2回。粉入れ(ふんいれ)。

前回「置目」したところに、今回は「紛入れ」をしていきます。

以下先生より〜。
<「紛入れ」ふんいれと言う言葉は、蒔絵の工程の中で、通常「漆を塗って〜粉を蒔く」までの事を指します。

「紛入れしといてなー」
などの使われ方をされて、この場合「塗付けして、紛蒔きまでしておいて」と言う事になります。>

今回の教室では、漆を塗る(描く)と蒔くの2つの工程を一緒にすると分かりにくいので、「線描き」と「紛入れ」とに分けて説明しています。

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↑写真の右上の方の、線がはっきりしたところが、「粉入れ」が終わった箇所です。

さて、この「粉入れ」は自宅での宿題の作業になります。
(何しろ教わろうとしている蒔絵一式、作業工程が多いので…月1で講座に通っても完成に丸2年かかる…!!よって、オンラインで分かるとか、自宅で進められるものは進める、という方針で教えていただいています!)
宿題ね、と言われてもやり方が全く分からないので、前回の教室の最後に教えてもらって来ました。

やり方は、

<粉入れ>
1、置目をした箇所に、白漆で線を引く。
2、銀を蒔く(今回は銀粉1号を使用)。

至ってシンプルな作業。
でも、蒔絵講習の中では今回初めて、自宅で、先生不在で一人でやる作業です。呼吸を整えながら、背筋を伸ばしながら、落ち着いてやろうとするのに、主に蒔絵筆の扱いにドキドキしすぎて、またしても線はヨレヨレ。
できるだけ単一な線を引きたいのに、緩急のある線になってしまう…。

あぁ、
これは日本画でいうところの”肥痩線(ひそうせん)”…。
とか思い出してみたり。思考が現実逃避しています。
ちなみに、日本画や水墨画では、
細い針金のような、一定した太さの描線を、”鉄線描(てっせんびょう)”と呼びます。平安時代の仏画などによく見られるものですね。
鉄線描よりも細い、なめらかな描線を、遊絲線(ゆうしせん)と呼びます。
糸で遊んでいる〜!なんて高等な、線を操るテクニックでしょう。優雅です。
私といえば、鉄線を描きたいのに、抑揚あふれるヨレヨレ線です。悲しいかな。

さて、漆の「線描き」が終わったら、次は銀を蒔く「粉入れ」です。
これは、まぁ慣れている作業、と油断が生まれていたのでしょうか。
いつも扱っているはずの白漆の乾燥具合をなぜか見誤って、銀粉を蒔くタイミングを間違いました。線がにじむ…。うぅぅ。。。
慌てたり悲しんだりしているうちに、記録の写真を全く撮るのを忘れましたので、こちらは、教室中に先生が撮ってくれた、私が粉入れしている写真です↓。

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こうして、全面の粉入れが終わった状態がこちら。

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わぁ、、我ながら、ガタガタ、ヨレヨレ、、、。
ここから、「木砥(きど)掃除」と呼ばれる、はみ出したところを取ったり、角をカクッと出したりする、いわゆる修正をします!

修正ができる!万歳!
そうです、翌日〜数日間、漆が固まるまでは、スイスイ修正ができます。
やりすぎ注意、と先生から言われていたのも忘れ、太い線も細くしたい、ヨレヨレもピシッとしたい、と手を入れていくうちに…はい、やりすぎました。これは後々に響いてきます…。

「粉入れ」が終わったら、ムロに入れて乾燥させます。
1週間ほどおいたら、次は、「粉固め」と「磨き」です。(蒔いた金属粉を漆で固めてから、磨いて金属の輝きを出す。)
こちら、やってることは金継ぎの仕上げと概ね同じです。が、面積が違うのと、下地が硬い陶磁器ではなくてピカピカの漆板。手順はちょっと違ってくるのです。

※トップに置いた画像は、俵屋宗達が下絵を描き、本阿弥光悦が書を書いた「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」(重要文化財)です。銀泥と金泥で描かれた鶴の美しいこと。書も絵も一発勝負と思うと、凄まじい技の共演にゾクっと…背筋が凍るくらい見事です。

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