ノラネコのケンカみたいな傷が鼻にある3

2こめの病院

1軒目の病院を逃した私は、顔に痛みを感じながら
暑さと疲労と、自分の情けなさとたたかいつつ
土曜の午後も診察をしている皮膚科を検索しなんとか17時に予約を取ることが出来た。
1軒目に予約した病院より、予約の仕組みが随分わかりやすかった。
最初からこっちにすればよかったよ。

スーパーで腫れている顔を冷やすための保冷剤を購入し、顔全体を冷却。
1時間ほどで伐採と後片付けをしおわった夫と合流した。

予約の時間がちかづいたので少し早めにその病院の受付を訪れた。
「どうしましたか?」と受付の方にきかれた。
「ちょっと、顔ぶつけちゃって」
そういったら、顔をぶつけた背景をうかがう表情になったので、
大きめのウイスパーボイスで、
「酔って歩いてたらぶつかっちゃって」と言って、
マスクをとって見せたところ、
何も言わずに目でうなずいて『了解!』という顔をしてくれた。

待合室は適度に人が居た。
テレビでは、クレヨンしんちゃん。 
しんちゃんが運ていの上でおケツを出している。
女の子が男の子に超能力のようなもので操られて、雲ていの上でケツを出しているしんちゃんにふらふらと吸い寄せられていった。
もうちょっとでしんちゃんのケツに女の子の顔がぶつかる!というところで、超能力にミスがあり、女の子は別の男の子に方向転換した。

それを待合室の全員がみていた。真剣に。

疲労困憊の自分とクレヨンしんちゃんのゆるさ、
場にそぐわないチャンネルセレクト、それを見るしかない患者たち。
その状況になんだか気が緩み、肩の力が抜けたのだった。
クレヨンしんちゃんがこんなことで効果を発揮するとは
誰も考えてなかっただろうな。

しばらくクレヨンしんちゃんを見ていたら、
現場リーダーみたいな看護師さんが私の横にひざまずいた。

「お話を聞いたのだけど、わたしも同じ経験したことある。
ちょっと見せてみて。腫れているね。多分大丈夫だけれど、
顔だし、万が一折れてたら大変だから、レントゲンが取れるところに行ったほうがいい。せっかく来てもらったんだけど、
ここではレントゲンは取れない。
今日の場合は救急になる」
(ですます調だった気がするけれど、雰囲気はこんなかんじ)

「私は結局鼻折れてて、今でもちょっと曲がってる」
といって、マスクをとって鼻を見せてくれた。

たぶん10歳くらい年上で、
仕事では頼りになりそうであり、心が温かそうな方。
うーん今思うと心細いこういうタイミングで自己開示とともに端的にアドバイスをくれるというのはそりゃあ好感を持つよな。

その方は、わたしにどうするか選ばせてくれた。
このまま皮膚科の診察をしても良いし、救急に行っても良い。
わたしはその方の助言のとおり、救急に行ってきますと言った。

受付ではすでに私の診察券まで出来上がっていた様子だったけど、
お代は不要とのことだった。

受付の方の言わなくても通じるかんじといい、
看護師の方の寄り添い方といい、クレヨンしんちゃんといい、
いい病院見つけたなと今思う。土曜の午後もやってるしね!






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