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#22 ボリビアで、スペイン語もまともに喋れないわたしが、プロジェクトリーダーになってしまった理由。

2022年4月6日 miércoles
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日々やっっとのことで、なんとかまわしていけている感じ、の、この一ヶ月。ギリギリのスケジューリングで危ない橋を渡っているなー、と我ながらおもう。まあ、こんな綱渡りなアイデアを試せるのも、それはそれで恵まれている、というふうに解釈しよう。
そもそも、今の配属先の性質を見るに、JICAボランティアとしてグラフィックデザイナー(私)を配置する意味がそこまで読み取れない上に、私の仕事に対してさほど興味を示さない管理部の対応に、私は淡々と、単独で毎週二本のデザインプロジェクトと一つのクラス、二ヶ月に一回はクラブ活動を動かしている。
デザインプロジェクトに関しては、全体のマネジメントはもちろん、外部機関との調整、リサーチ、生徒に向けての資料作りなどなど、毎週その準備に大半の時間を費やす。同僚教員に割り振りしながら、ではあるが、急にミーティングを欠席したり「やっておく」と言ったことができてなかったりするので、結局私が段取りをしないと進まない、ということに気づいた。とほほ。。私が提案したプロジェクトなのでそれはそうなのだけど、もう少し協働作業的に進められると思っていただけに、、つらい。

ひとつのプロジェクトのリサーチで、来週、障害を持つ子どもたちの施設に行く予定をしている。

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プロジェクトメンバーでもある生徒の一人が以前行ったことのある施設、ということで、彼女に訪問の交渉を任せたところ、なんとかアポを取ることができ、「Bien hecho!(よくやった!)」と喜んでいる私に、「訪問申し込みの書類を提出しないといけなく、プロジェクト責任者のサインが要ると言われた。この場合、アツコの署名になる?」と。何を言われているのか理解できていない私に、みんなで表現を変えながらその旨を何度も説明してくれる。3人から異なる言葉で説明され、ようやく理解できた。「あ、サインするだけでいいのね。」そんな私が責任者でいいのか?
今日のミーティングではその訪問を控え、どういう点に気を向けながら、子どもたちと交流するか。これから具体的なアイデアを得るために、どこに問題があるか、どんな可能性があるか、意識して見てこよう、という話をした。いくつかのデザイン事例とともに。
そしてまた、その先に控えている、たんぽぽの家(日本・奈良)へのオンライン訪問に向けても、いくつかの写真とビデオで、その日常の些細なことの中にある、彼ら独自の表現や振る舞い、その個性から生み出される作品や、作品とも言えないような素敵なもの(行動)のいろいろを紹介した。
(↓私が働いていた時のデスクの椅子。日々装飾されていく様子を生徒に見せる。いつからか彼女と私のコミュニケーションツールにもなっていた、椅子の作品、と説明して。)

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生徒たちは興味を惹かれた様子で、「この人は何歳?何の障害を持っているの?」「彼らは普段の生活でテレビとかも見てるの?」「作品制作を教える先生がいるの?」など聞いてくる。人数は少なくなってしまったプロジェクトではあるが、今残っている4人の生徒はモチベーションも高く、少しずつチームっぽく、雰囲気も柔らかくなってきたような気がする。ミーティングが終わり「また来週!」というと、一人の女の子が「Ten cuidado!!(気をつけてね)」と、ぎゅっとハグをしてきた。急のことでびっくりしたけど、今日の話に何か感じるところがあったのか、もしくは次から来なくなる?!とか。(もうこれ以上、抜けないでほしい・・・)他の子たちとも、またね!と、それぞれにグータッチしてミーティングを閉じた。


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2022年4月10日 domingo
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気づけば週末の日曜日。金曜日の午前中は、来週からのオンラインの活動に使うGoogle Meetの基本の使い方を確認する。配属先のZoomの契約が切れたらしく、急遽、そのようにして、とコースディレクターに言われたのだ。

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オフィスで諸々の作業をし、遅めのお昼ごはんに、近くの食堂へ行くと、自分のクラスの一年生の子と偶然会った。「一緒に食べよう」と私のテーブルに誘い、彼女と喋りながらランチを取ることにした。
教室ではおとなしい彼女も一対一だと、たくさん喋ってくれる。(これはラパスの多くの人に共通する特徴のような気がする。)
彼女はUMSAという大学の4年生で、科学が専門らしく、科学雑誌を編集したいという目的があり、空いている時間にグラフィックデザインの勉強を始めた、というようなことを言っていた。私の配属先の職業訓練校は、他に大学へ通っていたり、仕事をしながら通っている生徒が大半で、空いている時間にデザインソフトのスキルを学びに来る、という感じ。なので、私のおこなっている活動に参加している生徒たちは稀有な存在だ。

昨日の土曜日は午後にミーティング。JICAのもう一人のボランティアの女の子と調整員の男性を迎え、ラパスの交通利用に関するインタビューをおこなった。直前に同僚のダニエルから「緊急事態が発生し、今日行けなくなった。」との連絡を受け、おいっ!と思いながら、準備のため、早めに教室へ向かう。すると二人、生徒の女の子が予定の時間より早くやってきたので、ロンドンの交通デザインの資料を見せながら、雑談的に彼女たちへ向けて情報のインプットをする。と、時間通りに日本人のふたりが到着。

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一時間ほど、生徒からの質問をベースに会話のやり取りがおこなわれた。その中で私たち外国人にとっては新たに知る情報もあり、(私はそれを既に生徒たちから教えてもらっているのだが)客観的にみている私は、おもしろい。

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結局昨日は、三人の生徒しか来なかった。こんな状況なので、外部との調整をしたところで、、、という事態が容易に想像できる。
それでも予定を立てて動かねば、なので、できるところまでスケジューリングはするが、先の確約がないという前提で進む。生徒のモチベーションの前に、自分のモチベーションを保つのが目前の課題である。

今日、日曜日は久々に予定が空っぽ。仕事のモヤモヤで疲れきっていたので一人でゆっくり過ごす。朝は、ダンサーで振付師の友人(日本人)とGoogle Meetの使い方を試しつつ、オンラインでおしゃべり。日本の夜21時、ボリビアの朝8時にスタート。彼女とはいつも、その時にお互いが取り組んでいる活動から感じることの交換を、する。自分の感覚を探りながらの対話ができる貴重な友人のひとりだ。彼女のおかげで少しスッキリできた、というか。いや、まだモヤモヤはしているのだけど、「あ、そういえば、ちゃんと仲間がいたわ」ということに気づけたことは、大きい。ありがとう。
午後は少し散歩がてらに、行ったことのないところへ行ってみよう、あとテレフェリコに乗って気分転換したい、と、水曜日に行く予定の施設まで、下調べついでに出かけてみた。
ラパスの交通事情に慣れるためにも、こうやって目的地を決めて、普段使わないルートで散歩に出かけるのもいいかもしれない、と、そんなことを考えながら。(↓テレフェリコ「Alto Obrajes」で降りる。)

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なにより、初めての道を歩くのは楽しい。余談だが、いい感じの小道を見つけると、テンションが上がる私。急坂の小道なんかは、とくに。

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ずんずん降りていくと、なんとなく見たことのあるような大通りに出た。
「あ、いつもプーマカタリ(公共バス)で通る道っぽい!」と、それが確認できてからは、帰る方法もはっきりとわかり、一気にソワソワ感が消えていく。少し歩くと、目的地である施設が見つかった。

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なるほど、おもったよりも近い。というか、どう辿り着けて、どう帰れるかがわかる、というのは大事だと改めておもった。

どう辿り着けて、どう帰れるか。

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ATSUKINO(アツキーノ)

2006年〜日本でグラフィックデザイナーとして働いた後、2013年に渡英。スコットランドの The Glasgow School of Art で修士号(Communcation Design: Graphic Design)を取得。帰国後はアートディレクター、キュレーターとしてデザインディレクションとともに現代アートの展示企画制作なども行う。海外での生活、旅を通じて得られる新たな表現や人との出会いが次の可能性につながると信じて動く、旅するデザイナーでありアーティスト。現在は南米のボリビア、ラパスにてJICAボランティア活動中。デザイン教育環境の改善にあたっている。
http://nakanoatsuko.com/
https://shadow-candle.com/




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