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レベニュー思考で実施するカスタマーアプローチのカタチ

カスタマーサクセスプラットフォーム「commmune(コミューン)」を提供されているコミューン株式会社さんにお声がけいただき、今年の2月に開催された「NIKKEI BtoBマーケティングアワード2022」のセッションに登壇いたしました。テーマは「ウイングアーク1stの事例に学ぶ顧客との関係性を進化させるコミュニティ戦略」。

NIKKEI BtoBマーケティングアワード2022

今日のnoteではこのセッションでお話しした内容も交え、事業の成長のため=顧客の成功を実現するための手段としての「レベニュー思考」で、Community-Led Growth(CLG)の考え方もご紹介しながら、カスタマーへのアプローチについて考えてみたいと思います。

※この記事内では、
「カスタマー」……見込み客を含む顧客全体
「ユーザー」……購入者
と定義します。

ユーザーへのアプローチの1つ「ユーザーコミュニティ」

ユーザーへのアプローチには、多くの手法があります。

<企業と顧客の関係性>
・担当顧客チーム(アカウントチーム)
・CAB(カスタマーアドバイザリーボード)
・ホームーページ、メールニュース
・セミナー、ワークショップ、展示会
・専用アプリ
・営業、カスタマーサクセス、サポートなどの役割別の窓口
・SNS
・広告/パブリシティ
・プロダクト、サービス、マニュアル
・NPS®(Net Promoter Score)[yi1] などのアンケート

<企業と顧客、顧客と顧客の関係性>
・ユーザーコミュニティ

ユーザーコミュニティは、ユーザーへのアプローチの1つです。

言わずもがな、お客様はすべての起点です。ところが、アプローチする企業側はお客様を知らないことが多いというのも事実です。

例えばある人がカメラを買うとしましょう。
機能や基本的な使用方法についてはメーカーが提供するマニュアル読めばわかります。でも、「いい写真をとるには?」の詳しい答えはそこにはありません。実際のところ、公式のマニュアルよりも、そのカメラを既に使いこなしているヘビーユーザーに聞いた方が実用的な情報が得られる場合が多いのです。
そこで有効になる1つの手法が、信頼できるユーザーと繋がること
つまり「ユーザーコミュニティ」の活用です。同じ課題感や価値観を持つユーザーた同士が切磋琢磨しあい、高めあえるナレッジ共有の場です。

ユーザーコミュニティでは自身が苦労を乗り越えた経験を積極的に発信してくださる人も多いですし、自分自身がコミュニティに救われた経験がある方は、積極的に情報提供してくれることも多く、そういった方を中心にコミュニティが活性化していく循環を生み出すことができます。

2,660名以上のユーザーコミュニティ「nest」の存在意義

ウイングアーク1stにも「nest」というユーザーコミュニティがあります。現在2,660名(2023年2月時点)のユーザーに参加いただいています。

今でこそポータルサイト上でユーザー同士が質問しあってお互いの課題を解決してしまうような活発なコミュニティですが、実はコミュニティとしては4世代目。多くの失敗を乗り越えて今があります。
なぜ失敗したか……?1番の理由は、“魂”の有無によるものだったと考えています。
 
つまり、そのコミュニティをなぜつくるのかという「Why」の部分がはっきりしないままスタートしてしまったからです。現在ではユーザー同士がつながることでナレッジを共有する場、そしてユーザーと弊社のさまざまな部門がつながる場としてのコミュニティとして存在理由が確立しつつあります。

「nest」を企画・運営しているのは、マーケティング本部ですが、「nest」が成長していくにつれウイングアーク1stという組織の中で、営業やCS、サポート、開発など各部門から、「コミュニティを通じてユーザーとつながりたい!」というリクエストが来るようになりました。それだけ「nest」は重要なコミュニティであり、ユーザー同士だけでなくユーザーと企業がつながりあえる場になっています。


カスタマーを取り巻く組織内協業モデルとレベニュー思考


私が捉えている弊社のカスタマーを取り巻く組織内協業モデルの全体像がこちら。「nest」再始動させるときに明確な目標として企画チーム全員に共有しました。顧客の成長の実現が、プロダクトへのフィードバック(顧客提供価値の向上)に繋がっていくというシンプルな図です。

この図のそれぞれの部門では、当然それぞれのミッションに基づいた業務が遂行されているわけですが、すべてはカスタマーの成功のために存在する部門であり、そのために各部門の日々の活動があるのだと考えています。
 
レベニュー思考は、まさにこれらの仕組みを最大化するための取り組みです。

最近では、Community-Led Growth(CLG)という考え方が注目されています。
 
※Community-Led Growth(CLG)とは
コミュニティを通じて製品やサービスの枠組みを超えたユーザー同士の交流を主要な成長エンジンと位置づけて顧客を獲得、維持、拡大していく戦略のこと
 
CLG台頭の背景として考えられるのは
・市場は飽和し機能差のないプロダクトやサービスが増えた
・選択肢が増え、判断に疲れ、信頼できる方の情報を望むようになった
・製品機能だけでなく、製品導入の目的を果たすための手段を身に付けたい
・デジタルマーケティングなど従来のマーケティング手法が飽和し差別化できない
 
プロダクトとマーケティング手法のコモデティ化、モノからコトへの価値観のシフト、共通の価値観を持つ組織や人との繋がりにより、自己実現や社会実現を果たしたいという欲求、それらが繋がっていける環境がネットにより提供されたのではないかと考えています。

とはいえCLGという言葉に踊らされる必要はないと考えております。

あくまで私達がアドレスしている市場において、事業の本質的な部分に顧客の成功と事業の成長が繋がっているという我々の判断です。

それらが、結果的にCLGに類する活動を行っているという理解です。(CLGという概念についてnestの企画段階では知りませんでした)

弊社のCTO島澤は「nest」のユーザーの皆さんが積極的に発言している様子をみて「ユーザー企業1000社訪問しよう!」という決心をしました。結果、コミュニティの大小様々なイベントに開発担当者が参加し、ユーザーとコミュニケーションをする中で、課題解決法を直接聞く機会が増えました。
 
直接開発担当者がユーザーの皆さんの声に触れる機会が増えることで、どのような課題に直面しているのか、プロダクトがどのように使われているのかといった理解が進み、プロダクトやサービスへのフィードバックループの活動が前進したように感じています。

ツールとか、プロセスとか、プロジェクトから入り易いし
それをやれば、やり終えた感じがするかもしれないが
それらは幻想にすぎない
“お客様に会う” “お客様を知り抜くこと”
“お客様”からすべては始まる
それこそがカスタマー中心の経営のスタートライン


参考:ウイングアーク主催「updataDX22」<Opening Keynote>変革の時代、DXが向かう先。「顧客中心戦略」を描く経営リーダーが知るべき3つの要素 /弘子 ラザヴィ 氏、福田 康隆 氏 対談内容より

私自身は営業部門のキャリアが長く、多くのお客様と接することに恵まれていました。
事例取材や、導入後の訪問機会に導入後の状況や導入効果をお伺いすることがあるのですが、導入における様々な課題を乗り越えたご担当者様の多くがすごくいい笑顔をしながらお話していることに気付きました。トラブル対応を一緒に進めていて、解決したときや大きく成長して導入の手応えを感じているときも同様です。何か壁を越えた時、人っていい笑顔になるのだなと。それが心に強く残っていて「nest」を再始動した2020年に掲げたのが「ユーザーの笑顔があふれる世界を目指す」という目標です。今でもチームのスローガンとなっています。

コミュニティの成功に向けては、我々自身もまだまだ途上にあるのですが、多くの気づきがありますので、現段階で重要と思える部分をまとめてみました。

ユーザーさんと一緒に作り上げた現在の「nest」ですが、これからも絶えず変わっていくと思います。基本はプロトピアです。日々、新しい気付きがあり、更に良い場所に出来ると手応えを感じていますし、更にユーザーの皆様にとって価値のある場所にしていきたいと考えています。
 
レベニュー思考とは目的ではなく、事業の成長のため、つまり顧客の成功を実現するための手段です。
 
顧客の成功を実現するために、どのように顧客に出会い、どのように成功のための手段として我々の提供する価値を受け取っていただき、どのようにユーザーに成功していただくか。ということを考え抜くことであり、それらの実現方法と最適化(成果の最大化、コストの最小化)を行っていく手法がレベニュー思考であると考えています。
 

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