見出し画像

カウンター席は最高のVIP席

こんにちは。

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

以前担当の美容師さんから、「すごく美味しいよ!」と勧められたラーメン屋さんがありました。

特に有名でもなく、並ぶわけでもない普通の町中華のお店です。

家から5分くらいのところだったので、夫を誘って食べに行きました。

おすすめの醤油ラーメンを頼むと、本当に美味しい!!

昭和のシンプルなネギとチャーシューとほうれん草となるとのやつです。

「美味しい!」

さっぱりしていて、細麺で、女性でもツルッと食べられる味。

麺を啜っていると、なんとそこへお勧めしてくれた美容師さんが来店。

親指を立てて、美味しいねと合図すると何とも嬉しそうな表情でうなづいてくれました。

それからは、美容院に行くたびに

「今日もお昼にはるちゃん(ラーメン屋さんの名前)、行って来たんですよ!」

と嬉しそうに報告してくれるのです。

はるちゃんのファン過ぎて、担当のお客さん全員に勧めていると言っていました。

店主のはるちゃんは、特に客のあしらいがうまいとかではなかったのですが、圧倒的な存在感を放っていました。

そして、1人だけ年配のおじさんを雇っていました。

このおじさんがとてもおっちょこちょいで、お酒を作り間違えたり、注文を間違ったりして、いつもはるちゃんから叱られていました。

年配のおじさんの担当は、お酒を作る、ラーメンのスープを用意しておく、配膳、お会計、片付けなどでした。

料理を作るのも大変ですが、この裏方的な仕事だってかなりの重労働です。

体力的にしんどいんじゃないかな?心配です。

美容師さん曰く、おじさんは元パティシエとの事。

えっ?

それがまたどうしてラーメン屋さんで?

結局、理由は分かりませんでしたが、おじさんはおっちょこちょいだったけど、とても真面目で仕事がない時でも、カウンターに手を置いて真っ直ぐ立っていました。

客側からすると、年配のおじさん2人でラーメン屋を切り盛りする姿が何だか不思議で、可愛い。

カウンター越しに、いろいろ予想しながら2人を眺めている時間が好きでした。

はるちゃんは、病気でこの世を去ってしまったのですが、晩年は腱鞘炎が辛かったようで、炒飯の注文が入ると、苦痛に顔を歪めて鍋を振っていました。

それを見ているのが辛くて、

「炒飯の注文しないで!!」

と注文するお客さんに向かって勝手に心の中で叫んでいました。

美容師さんと

「パティシエのおじさんが、味を継承して鍋を振ってくれないかな?」

なんて話していましたが、それも叶う事はなくお店は閉店してしまいました。

お店は閉店してしまったけれど、今でもこうして思い出して語られるってすごいことだなぁ。と思います。

カウンター席に座ったからこそ、見えたお店のストーリー。

外食の楽しみは、食べるだけではありませんね。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?