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【本とおしゃべりの土曜日】2月・獅子文六『コーヒーと恋愛』レポ

 毎月第一土曜に石堂書店にて開催する【本とおしゃべりの土曜日】。今回2020年2月1日(土)は獅子文六の『コーヒーと恋愛』をテーマに8名の参加者が集まりました。テーマ本の雰囲気を活かし、ざっくばらんにしゃべりたい人がしゃべりましょう、という会になりました。結果的に和気あいあいと自由な会になったと思います。昭和のできごとにくわしい人、獅子文六にくわしい人、まだぜんぶ読みおわっていないけれどたくさんおしゃべりしたい人、聞いていたい人などなど……。いろいろな視点があつまって、主催者であるわたし自身が楽しい時間をいただいた会でした。

『コーヒーと恋愛』獅子文六・ちくま文庫
まだテレビが新しかった頃、お茶の間の人気女優 坂井モエ子43歳はコーヒーを淹れさせればピカイチ。そのコーヒーが縁で演劇に情熱を注ぐベンちゃんと仲睦まじい生活が続くはずが、突然“生活革命”を宣言し若い女優の元へ去ってしまう。悲嘆に暮れるモエ子はコーヒー愛好家の友人に相談…ドタバタ劇が始まる。人間味溢れる人々が織りなす軽妙な恋愛ユーモア小説。

 この小説は1962年(昭和37年)11月から1963年5月まで新聞に連載されていました。モエ子、43歳。ベンちゃん35歳。モエ子と結婚話が持ち上がる菅は51歳。この三角関係はそれぞれ8歳差です。ベンちゃんの新しい恋人は19歳。1962年あたりがどういった生活だったのか、また戦争をはさむことで現代の8歳差とは感覚が違う大きなジェネレーションギャップがあっただろうという想像も盛り上がりました。
 テレビ業界で活躍するモエ子や、リビングでコーヒーを飲むスタイルはきっと当時の最先端の価値観だったでしょう。根っからの悪者は出てこず、どこか楽観的な空気も漂います。当時を表す小道具(電話・車・コーヒー)に囲まれながら、時代が変わってもそうそう変わらない人間どうしのかかわり合いがあざやかに脳内でドラマ化されます。そんなことから、みんなで『映像化するならだれをキャスティングするか』トークにも。主演のモエ子は尾野真千子、ベンちゃんは柄本佑はどうだろう、と盛り上がりました。帰宅してからわたしもひきつづき脳内キャスティングを行いワクワクしていました。ベンちゃんを惑わす19歳のナチュラルボーン小悪魔は元NMBの渡辺美優紀、モエ子のコーヒー仲間である菅さんは古舘寛治を推したいと思います。主演のモエ子には佐藤仁美もいいかもしれませんね。
 などと盛り上がっていたら、その後参加者のえこだ堂・大森さんから2021年3月に文学座アトリエの会が『コーヒーと恋愛』を上演するというニュースが!2021年の楽しみができました。

 まだ人びとの好みが今ほど多様化していなかった時代に、70代の獅子文六がえがいたその時代の人間たち。恋愛にまつわるドタバタは変わらないけれど結婚についての感覚は変わってきたかもしれません。LGBTQな人々がこの恋愛ストーリーに絡んできたら獅子文六はどのような小説を書いたでしょうか。
 最後にそれぞれの感想を書いて獅子文六と一緒に記念撮影をしました。(画像 下)

 こういった軽やかな大衆小説をテーマにして二時間持つのだろうかと不安があったのですが、【本とおしゃべりの土曜日】という趣旨をすなおに受けとめてくださった参加者のみなさまのおかげで、楽しい時間になりました。ありがとうございました。つい、「すべてに感謝!」といった熱い居酒屋の壁のような勢いになっちゃいそうなのをぐっと我慢しています。

 三月の第一土曜日は大岡昇平『事件』をテーマ本に石堂書店二階にて開催します。参加費は500円、読みかけの状態でも聞きたいだけのひともウェルカムです。Peatixにてイベントページができましたらお申込みよろしくお願いいたします。


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