見出し画像

呉服屋は笑い、商社マンは笑わない。

妻が家事育児に困ってると言う。

それを聞いた夫がこう言う。

「お金出すから外注しなよ」

家事にお金をかけることに罪悪感を感じていたなら、話はそれで終わりだろう。

だが、妻が求めているものがまったく違うものなら、その夫は「なにもわかっていない」と言われる。(ぼくも何度も言われた)

インディアンポーカーと呼ばれるトランプゲームがある。カードを裏返したまま一枚選び、おでこにつける。

自分が選んだカードの数字は見えないが、他のプレーヤーからは見える。同時にカードを場に出し、一番数字が高い人が勝ちというゲームだ。

プレー中は他のプレーヤーのカードを見ながら「いやー!君降りた方がいいよ!」とあおったり、相手がこちらのカードを見た反応からゲームを降りるか判断する。

妻の感情がおでこに貼り付けられトランプだったら、何も困らないだろう。

だが現実は違う。だからこそ、ぼくを含め多くの論理的な男性は、妻から「あなたは何もわかっていない」と言われるのだ。

では、どうすればいいのか?

そのヒントが妻への感情アナライズだ。

ロジカル or エモーショナル?


妻が家事育児に困っていると言う。家事育児に手がかかることが原因なら、他の人間に外注すればいい。

お手伝いさんを雇っていいし、ロボット掃除機やらホットクックやら便利家電を買ってもいい。

それで解決だろ?

と、多くの男性は考える。夫からそう言われたという話や、妻にそう伝えて険悪になったという話をいくつも聞きました。

なぜ、そうなるのか?

それは、外注化が最短&最適なソリューションであると男性が思っているからです。

お金かけて外注すれば終わる話なのに、お前はなにをごちゃごちゃ言っているんだと。

そういった男性は、なぜ妻から嫌悪されるのかわからない。

なぜなのか?

それは、妻の感情への分析不足です。妻が困っていることがロジカルな課題なのか、エモーショナルな課題なのかをアナライズする必要があるんです。

単純に家事の手間を減らしたく、そのための施策を求めているなら外注化で話は終わります。もしかしたら、家事育児の外注化に伴う心理的抵抗や遠慮が課題かもしれませんが、それも夫の許可が出れば解消される問題です。

だけど、そこにエモーショナルな課題があるなら話は変わります。

エモーショナルな課題とはなにか?

悩みに寄り添った態度を示してくれないことが悲しい。私の気持ちを理解して欲しい。受け止めて欲しいという課題のこと。

目的は課題解決ではなく、悩みを理解し、受け止め、同じ目線に立って欲しいという願望を満たすことです。

そのため、目に見える課題である家事育児の負担を解決することがゴールにはならないんです。逆に妻の柔らかな気持ちを受け止めることだけで、話が終わることもあります。

ぼくの妻も「あなたにわかって欲しかっただけ」とよく言っており、ぼくがこうすればいいじゃないかと解決案を提示すると、うんざりした顔をされることがあります……。

なので、妻にとっての課題がエモーショナルなものであるなら、その気持ちがどこから来るかを分析する必要があるんですね。

妻の感情をアナライズしないといけない。

だがこれが難しいんです。なぜか?

男性と女性では感情認識の能力に違いがあるからです。

呉服屋は笑い、商社マンは笑わない。

ダブリン市立大学による研究の結果、男性は女性と比べて自分の感情を認識するのが難しく、また他人の感情を読み取る能力も低い傾向があることがわかりました。

これは、男性が感情を表現する機会が少ないという文化的背景や、感情表現が弱さと見なされる社会的規範が関係しているんじゃないかと言われています。

https://iacp.ie/files/UserFiles/IJCP-Articles/2014/The-Role-of-Emotional-Awareness-in-Couple-Relationships-by-Mary-Beirne.pdf?t

実際、ぼくが呉服屋で働いていた頃は「感情表現」することを強く求められ、感動、驚き、悲しみなどをお客さんに伝えられなければ呉服は売れませんでした。呉服を売るためにはお客さんと情緒的につながる必要があり、そのためには感情共有が必要だったからです。

ですが、その後に転職した商社では真逆だったんですよね。「お前はしゃべりすぎだ」と怒られ、まったく使い物にならず9ヶ月後にクビになりました……。

喜び、驚き、悲しみ、辛さ。こういった感情を素直に表現することは「弱さ」であると、感情労働(カスタマーサービスや販売員など、顧客と感情的に関わる職種)以外の職種の人間は考えているんです。

そういった社会に染まってしまうと、ぼくらは妻の柔らかな気持ちのシェアを「弱さ」と認識してしまうんです。本当はそんなことないんですが、そういった思考の縛りはやっぱり存在します。

感情共鳴を「弱さ」と認識すると、他者と感情的に共鳴する(レベルの高い共感みたいな感じ)ことも難しくなります。

感情的な共鳴(感情的チューニングや情動共鳴とも呼ばれる)とは、夫婦関係でいうならばパートナーの内面的な世界を理解し、受け入れ、リスペクトする能力のことですね。

これが欠けているとパートナーの感情に気づくことが難しくなります。感情的共鳴の欠如の原因は、自己認識の欠如や、感情を適切に処理・表現するスキルの不足だと言われています。

ではどうすればいいのか?

妻が発してる救援信号の種類を識別し、エモーショナルなヘルプに応える方法はあるのか?

そのヒントが心の知能と呼ばれるEQです。

ハイスペ男子はEQが低い

EQは感情的知性と呼ばれ、自分や他者の感情を理解する能力のことです。ぼくが思うに感情労働者(呉服店員とか)はEQが高く、ロジカルな世界で働く商社マンはEQが低い傾向にあると感じています。

ぼくに夫婦関係の相談をされる男性たちの多くは高収入のビジネスマンや起業家の方が多いですが、彼らはIQが高い代わりにEQが低い傾向にあるように見えます。だからこそ、仕事で成果を出せたのだと思いますが。

逆にいうと、IQがある彼らがEQまで上げることができれば、もう完璧なんですよね。

EQは自己認識を高め(自分の感情に気がつきやすくする)、フィードバックをもらい、アクティブリスニングをおこなうことで上昇させることができます。

自己認識の向上のためには、心に浮かんだ感情を認識し、名前をつける方法が有効です。ぼくは仕事を抜け出して人の少ない公園を散歩しながらやっています。

ああ、焦ってるなぁ。

認めてもらえなくて悔しかったんだなぁ。

などと、その時に心に浮かんだ感情にいい悪いのジャッジをしないで、ただ受け止めて、ラベリングをするんです。それを習慣にすると自分の感情に気がつきやすくなります。名前のないものを認識することはできないですからね。

スマホのメモ帳や紙のノートに日記をつけるのもいいです。ジャーナリングってやつですね。ぼくの昔のnoteはジャーナリングも兼ねていました。今はnoteメンバーシップの記事は本音を書けるので、ジャーナリングはそっちでやっています。

そういった自分が本音を出せる場所にダーっと書き出してみると、 自分が抱えているモヤモヤに名前をつけられるようになっていきます。

フィードバックに関してですが、感情の扱い方なんて誰も教えてくれないんですよね。だから、友人や同僚に「どうやって気持ちを整理したらいいか」とか「自分の言動はどのように見えているのか」と質問し、忌憚のない意見をもらうといいです。

とはいえ、なかなか難しいと思うので、その場合は心理士のカウンセリングや、鬱っぽい症状が出ているならメンタルクリニックを受診して話を聞いてもらうのもおすすめです。

ぼくは11月になると鬱っぽくなる季節性気分障害なのですが、メンタルクリニックに毎月通ってからはだいぶ気持ちが楽になりました。対人コミュニケーションに関するフィードバックやアドバイスをかなりもらえるんですよね。こういった機会ってなかなかないので、本当に悩んでいる方にはおすすめです。

最後のアクティブリスニングですが、会話をする時って言葉を聞こうとしますよね。そうじゃなくて、言葉「以外」を聴くようにするんです。

相手の身振り手振り、声のトーン、表情、すべてに集中するんです。すると、言葉の裏にある本音や、声の中に含まれている不安などの感情を読み取れるようになってきます。妻との関係がこじれているなら、全身全霊で聴くようにした方がいいです。

ただ、スタートになるのは自己感情の認識ですね。アウェアネスという言葉を聞いたことがある方もいるかもですが、EQを上げるにはこれが一番です。

「弱さ」として切り捨てている自分の柔らかな気持ちを受け止めてあげる。自分が抱えているイライラやモヤモヤにラベリングし、名前をつけてあげる。

そういった感情を感じることは人間として当然であり、誰もがそう感じているんだと受け止めること。まずはそこからかなと思います。

自分の柔らかな気持ちにアクセスできるようになれば、妻の柔らかな気持ちにもアクセスができるようになるはずです。自分のおでこに貼り付けたトランプの数字だって読めるようになる。

うまくいくことを祈っています。

(あ、この記事いいな)と思っていただけたら、スキやフォロー、SNSでのシェアをしていただけると嬉しいです。



この話はポッドキャスト「アツの夫婦関係学ラジオショート」でもお話ししています。noteとは少し内容が違うので、通勤や家事のお供にぜひどうぞ!

-Spotify

-Voicy

-Apple Podcast

-YouTube

「アツの夫婦関係学ラジオ本編(月曜配信)」の深掘り無料ニュースレターも配信しています。「自分の感情を深掘りできるワーク」資料のおまけもついています。夫婦関係改善方法をより深く知りたい方はご登録ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?