見出し画像

カミングアウトへの「初めてそういう人に会った」という反応に思うこと

LGBTQ(に留まらず、セクシャルマイノリティ)当事者に、“会った”ことがありますか?
カミングアウトをしたときに「初めて会った」と言われることがあるんですが、本当にそうなのか? とモヤつくものがあり、今回の記事ではそう思う理由について書いていこうと思います。

   *

私には性別違和があり、性別が自分と同じであるパートナーがいます。「LGBTQ」に当てはまる形で自認はしていませんが、自分はセクシャルマイノリティの一員であると思っています(セクシャリティ自認に関しては別の記事で詳しめに書いています)。

カミングアウトは「隠すほどではないけど話すほどでもない」というスタンスで、「彼氏いるの?」と聞かれたら「付き合っている人いるよ」と答えます。パートナーのことを「恋人」「彼女」っていう言葉で表すのは正直あんまりしっくりきていないんですが、恋人がいないということにはしたくないので……。

そういうスタンスなのもあって、付き合っている人がいて性別が同じなんだ、というカミングアウトはそこまで躊躇わずにする方かもしれません。
少なくとも定期的に会うような友人はみんな知っています。

カミングアウトしちゃおう、と思うタイミングは、例えば付き合っている人がいるのを伝えた状態で会話を進めていく中で、彼氏がいる前提で恋バナを振られることが増えて、さすがに言わないのは無理があるかも、と思ったときとか。
「同性のパートナーがいる人」というのが第一印象になるのは控えたいので、初対面とかでいきなりカミングアウトをすることは少ないです。

で、やっとタイトルの話に繋がるのですが、「彼氏じゃなくて、性別一緒なんですよね」って言ったとき、「そういう人初めて会った」と言われることがあるのです。

いや、絶対初めてじゃないと思う。ていうか初めて会ったという認識のままでいないでほしい。
もちろん「絶対」なんてないですけど、モヤモヤした気持ちがギュンと上がって、内心では反射的にこれくらい思ってしまう……。

あなたが初めて会ったのは、「同性のパートナーがいる人」じゃなくて「同性のパートナーがいることを伝えてきた人」でしょう、って思うのです。
「そういう人」の内訳はもしかしたら後者なのかもしれませんが。

でも言いたいのはとにかく、前者と後者の認識って全然違う、ということです。

例えば私がもしカミングアウトをしないままでいたら、あなたは「同性のパートナーがいる人には会ったことがない」って思ったままだったんじゃないですか? でも私には会ったことありますよね……。じゃあ「会ったことない」わけじゃないですよね……。

そんなことを思いつつ、「こうやって伝える人に初めて会ったってだけだと思いますけどね……」とかはちょろっと返すんですが(何も言わないと後悔として残るので)、「えー、そうなんだー……」という感じで驚いている状態の相手に届いているかどうかはどうなんだろう……という感じ。

多分、私が1番モヤモヤしちゃうのは、そうやって無意識で悪気なく「いないことにしている(されている)」という部分で、だから言ってよかった、と思うようにしているんですけど。
相手を責めるつもりもないし、悪いとも思っていなくて、ただ無意識でそう思う人がいるよな〜ということを嘆きたい気持ちがあります。
“社会”とか、“政治”とか、もっとでかいものに対するしんどさなのだと思います。

一応補足しておくと、上記の例は友達未満くらいの仲の良さだった人で、アイスブレーク的に恋バナをよく振ってくる方でした。職場の別の部署の先輩で、新人時代にメンター的なポジションをやってくれていた方です。私は恋バナが苦手なので感覚には違いがありましたが、まあ言ってもいっか、と思うくらい優しくて良い人だし、カミングアウト前後でその認識は変わっていません。

さらに余談ですが、仲の良い友人たちにカミングアウトするときは、本当にカミングアウトって呼ぶほどではなくて、「付き合ってる人いるよ」「インスタとかでよく写真載せてる子なんだけど」って感じで伝えて、「仲良すぎるな〜とは思ってたんだよね」って言われたりとか、そんなもので済むことがほとんどです。

えー、補足かつ余談はともかくとして……。
今回この記事を書いたのは、「いないことにしている(されている)」ことに対するもどかしさが同性婚裁判の件とかで膨らんでいるからで、もっと小さい構造で自分が実際に直面したこともあるよな、と思ったからでした。

「会ったことがない」「○○が唯一の“そういう”知り合い」という認識が少なくなっていくといいなという願いはもちろんのこと、
きっと自分の中にも(セクシャルマイノリティとかに関わらず)無意識で悪気なく抱いている先入観があるはずで、そういうものを自覚して立ち止まれる人でありたいという自戒の気持ちも書いていく中で強くなりました。
外に向ける目と自分の中に向ける目の両方を研ぎ澄ましていきたいです。
割と書くのに勇気がいる内容だったんですが、あのとき書き残しておいてよかったなと思えるときがくるといいな。

それから冒頭で「LGBTQ(に留まらず、セクシャルマイノリティ)当事者に会ったことがありますか?」という問いかけをしたんですが、セクシャリティのことを語るときはLGBTQよりもSOGIという言葉を使うのが当たり前になるといいなって思っています。
SOGIは略語ですが、性的指向と性自認(Sexual Orientation & Gender Identity)を示す言葉です。
こちらの言葉だと身長、体重、みたいな誰もが持っている属性を表すので、例えばLGBTQの問題ではなくSOGIの問題、と言うのは、「左利きの人の問題」を「利き手の問題」って言い換えるような感じですね。
あらゆる人が当事者になるので、こちらの言葉の方がもっと広まるといいなと思っています。
LGBTQ当事者という言葉も曖昧?限定的?だから使いたくなかったんですが、より知られている言葉を冒頭に持っていきたかったので……という言い訳をここで……。

と、そんなところで、今回の記事は終わりにしたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
もし感想があればコメントやシェア先で教えてくださると嬉しいです(強い語気の批判は勘弁してください)。
それでは。

■ジェンダー・セクシャリティ関係の記事は以下のマガジンにまとめています。


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?