見出し画像

#7 オストメイトでない人が人生ではじめて”パウチ”に出会ったら。

 ”オストメイトといっしょ!秘密結社アッと♡ストーマ”(長い!)管理人のれなです。数回にわたって、新進気鋭の作家たちが集う美術展に「ド」のつく素人の集団が応募した作品をご紹介してきましたが。今回は番外編。私たちのグループならではの「出会い」が生んだある奇跡のお話を。

ハイ、このネオンピンクの色をした子が草むらに産み落とされることになるまでのちょっと素敵な物語です。

ナガタトモコ(みつけた!)

”有袋類”×”無袋類”で生まれるモノ

 私たちのグループ”アッと♡ストーマ”はオストメイトのメンバーとそうでないメンバーが、私の番組やWEBコンテンツあるいはそれ以外のひょんとしたきっかけで「オストメイトの生きる明日がもっと素敵になればいいなぁ」という思いでつながっています。その関係はどちらかがどちらかに一方的に尽くすようなものではなく、それぞれが自分が楽しいと思うこと、やってみたいと思うことにトライするためにこの場でつながっている、一切の拘束のない自発的でゆるやかな関係です。

 共同管理人のユリさんは、自身もオストメイトなのですが、袋状のパウチをつけて生きるオストメイトのことを愛情をこめて「有袋類」と呼び、私たちパウチをつけていない人たちのことを「無袋類」と呼びます。正直、袋のない私が、有袋類、無袋類って呼ぶのはなんだかおこがましいような、ちょっと申し訳ないような感覚があるので私の側からは使いません。一方でさゆりさんに楽しそうに「無袋類」って呼ばれることは、まったくいやな気持ちになりません。だってオストメイトの方から「健常者は」って言われるとき、なんだかその人との間にピーーーーッと超えてはいけない線をひかれたような悲しい気持ちがしますから。

 ともあれ、そんなわけで私たちの活動には、普段は交わることのほとんどない(あるいはそうとは気づかずに交わっているかもしれない)オストメイトとそうでない人が、一緒に集まるからこそ生まれるものが日々あふれています。その象徴的な存在が、このネオンピンクの子の誕生でした。

はじめて”デコパウチ”に挑んだ”無袋類”

 パウチをかわいくデコる”デコパウチ”というのは、本来、オストメイトのみんなが自分のパウチと向き合う時間をより楽しいものにしたいという営みなわけで、オストメイトでない人たちには無縁な話です。が、私たちのメンバーには、語学、銭湯、法律、建築、手芸、ナレーション、教育、地域おこし、役所対応、グループ運営などなどそれぞれの分野において、人並み外れた技や好奇心の塊みたいな人たちが集まっています。その中で、アラフォー人生で初めて出会った「パウチ」という存在にとてつもない胸の高鳴りを感じてしまったのが私の中高時代の同級生、ナガタでした。

 このナガタ、女学生時代からかめばかむほど味が出る個性的な発想の持ち主で、またアートの分野においてとびっきりのセンスを発揮していましたが、オトナになっても、ママになっても、毛糸であの獺祭を編んだり、なんなら羊の毛を刈って毛糸に仕立てて手袋編んでfacebookにアップ!と、ブレない魅力が健在…いやむしろ以前よりさらにパワーアップしていました。

ナガタ作品

 そこで、神様からもらったそのギフトをぜひ結社で生かしてもらえないかと入会のお誘いしたわけです。思うところあって入会してくれたナガタに早速「デコパウチを作ってみない?(ナガタなら作るよね?)」と言おうと思って連絡をとると、なんとナガタのもとには、すでに共同管理人のユリさんから様々なタイプのパウチが郵送されていました(ユリさん、あなたという人はどれだけ前のめりなんでしょう!)。

さゆりさんからのパウチ一式

 ユリさんからパウチ一式を贈りつけられた(笑!?)ナガタは、人生で初めて出会ったパウチのあまりに様々な形状を眺めながらその用途を想像したり、どんな風にデコる(デコレーションする)かをしばらく考えていたそうなのですが…。実はナガタのもとに届いたのは、チューブのような排出口が下についている、”イレオストミー”用のパウチでした。イレオストミー!?好奇心の旺盛なナガタは積極的にグループで質問を投げかけ、イレオストミーというのは小腸から腹部にぬける人工肛門のタイプであること、また水様性の便が多いゆえのこのような形状であることなどを超高速でメンバーから学び始めました。

イレオストミー用パウチ

 そこからのナガタの制作スピードたるや。仕事の合間にデコパウチに没頭し、目の覚めるようなネオンピンクの毛糸でなんとパウチそのものを(見てないけどおそらく)目にもとまらぬ速さで”編みくるんで”いきました。そして仕上げがまた強烈にナガタ風味です。丸窓のような隙間を作ってパウチの地をのぞかせ、福笑いのような絵本のシールを貼ると・・・すっかり脱力系のお顔の”生き物”に。ナガタがパウチに出会ってわずか5日。たいそう可愛らしいデコパウチがこの世に産み落とされました。このとき、ナガタを動かしていたのは、この初めて出会ったパウチという存在を「あみくるんでみたい」という”衝動”のような感情だったといいます。

ナガタあみぐるみ

これは・・・これは・・・

これも”デコパウチ”なのか!?

今までメンバーが作っていたデコパウチとはちょっとタイプが違う。けど、うん、めちゃくちゃかわいい!そして・・・・

欲しい!!!

「私がオストメイトになったらどうかなって考えた時、絶対編みくるむよな、と思ったんだよ。服の下に隠すには嵩張るから見せる方向になるけど、だったら思いっきり派手なやつ!ってことでネオンカラー。」ナガタは、オストメイトのパウチ問題を”我が事”として考えた結果、敢えて「ド派手な魅せパウチ、なんならゆくゆくは(オストメイトでなくてもつけたくなる)伊達パウチ」という提案をしたのでした。

 忘れもしない6月7日。ナガタが満を持して作品をグループに投稿すると、私にはみんなのどよめきが聞こえたような気がしました。実はその前にオンラインミーティングでメンバーに多少のネタバレはしていたはずなのですが、次々にいいねが付き、コメントからもみんながそれぞれの場所でわくわくしているのを手にとるように感じました。

 なお、美術展に応募するため、ナガタには”生きもの感”を生かした撮影をお願いしてみました。それがコチラ!ピンクの子、見事に大都会の草原に棲息してる!

ナガタ作品2

 肌に直に接するパウチを毛糸で編んで包みきるという発想は、オストメイトのメンバーからは出なかったかもしれません。ナガタ自身、肌に接する面の刺激や洗濯の利便性など有袋類のみんなに質問をしていましたが、もちろん実用性だけを考えたら課題はいっぱいあります。でも、ナガタのネオンピンクのデコパウチは間違いなくみんなをとんでもなくわくわくさせてくれたし、ナガタ自身、この作業を通してわずか数日でちょっとしたオストメイト通に。

 こんな風に、お互いが自分の興味や関心を原動力にオストメイトという存在に有機的につながって、お互いにない発想で刺激しあい、仲間としてお互いのことを知っていく。みんなで楽しんでいるうちにコロコロとよい方向に話が展開していくこのグループの存在意義を感じられる、魔法のような出来事だったのでした。

 ユリさん、どうやらこれは結構な中毒になりそうな活動ですね。次回はまた共同管理人のユリさんにバトンを戻します。そろそろメンバーのみんなにも記事を書いてもらえそうな頃でしょうか。

▼ナガタの編みデコパウチを作ってみたい方!記事はこちら


※「オストメイトといっしょ!秘密結社アッと♡ストーマ」の活動は管理人の所属する組織のものではなく、管理人個人の活動です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?