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サブスクリプションサービスにおける利用者熱量の把握について

こんにちは。今日はサブスクリプションについて考えてみました。

はじめに

先日Netflixで休眠顧客の自動解約を開始するというニュースがでました。

このニュースの意図はなんだろうということで、2つの意見が出ました。

1 サブスクリプションのサービスで、何もせずとも利益貢献してくれているユーザーを切るなんてすごい!
2 休眠利用者は実は少なく、これをやったとしても利益にほぼ影響がでないのでは。むしろこのニュースによって「1」の効果を誘い、それによりブランドロイヤリティーを上がるのはすごい

Netflixも利益法人なわけで、おそらく何かしらの「+」の要素があると思うので、おそらく「2」の方ではないかと思いました。

そんなことを思いながら、サブスクリプションサービスでもっとも大事なことは、ブランド向上施策や入会者の増加もさることながら、「利用ユーザーが高いサービス愛着度を持って、利用し続ける状態をいかに作れるか=いかに離脱率を抑えていくか」、ということだと思っております。

とはいえ、どうやってその情報を把握すればよいかわかりません。そこで、今回は一案を記載させていただきました。

利用者の声を聞くには、「ソーシャルリスニング」だという意見はありますが、もっとシンプルなことで良いと思ってます。僕は、長年マーケティングに従事してきて、ソーシャルリスニングツールの導入やら、リアルでのグループインタビューなどを色々とやってきましたが、費用対コストがかなりかかるのであまりオススメしない立場です。

なお、僕自身は現在運営している立場ではないので、ぜひ、サービスを提供している方に読んでいただきご意見をいただきたいなと思います。

1 ターゲットの設定

まず、サブスクサービスを提供する上でどんな利用者がいるのかを整理することが大事かと思っています。通常は、デモグラフィックでの分類を最初にやると思うのですが、まず初めに「コミュニケーション密度」という軸で分類を試みたいと思います。

サブスクリプションサービスというのを具体的にイメージしていただくためにいくつかのサービスロゴを抽出してみました。みなさんは、どのようなサブスクリプションサービスは利用されていますでしょうか?

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僕は、NetFlixや、Prime Video、Spotify、また、ジムやオンライン英会話などなどです。

■あなたが利用しているサービスの中から、あなたが愛着を持っているものを考えてみてください。

そして、次にそのサービスの利用頻度を想像してみてください。

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・・・・・・

そこで気づくのは、愛着度と利用頻度とが必ずしも相関しているわけではないということです。

僕の場合は、NetflixやSpotifyは毎日利用していますが、Prime Videoやジムは週2−3回、オンライン英会話は週1日だったりします。だからといってそれぞれの愛着度にどの程度違いがあるかというと、どれも楽しくやっているので変わりません。

つまり、(利用する=企業との接点と捉えて)サービス提供側から考えると、利用頻度に関しては、顧客層を下記の3分類で分けることが可能です。

1(A) 毎日コミュニケーションがとれる(サービスをほぼ毎日利用している)顧客
1(B) 定期的にコミュニケーションがとれる(サービスを定期的に利用している)顧客
 全くコミュニケーションがとれない(休眠層)顧客

1(A)と1(B)は、頻度は違えど、顧客が感じているサービスへのロイヤリティは同じかもしれません。ただ、2は、コミュニケーション自体がとれないので、難しい状況です。

次に愛着度です。

先ほど利用頻度とは相関が薄いのではと指摘しました。

例えば、Aというサービスは、毎日利用しているが、少し飽きたな・・。Bというサービスは、週1回しか利用していないが、楽しいので増やそうかな。。などと考えていると思います。

そこで、愛着度=熱量も3つに分類してみます。

①「楽しいし、続けようと思っている」
②「習慣化して、なんとなく続けてしまっている」
③「辞めようかどうか迷っている」

そして、最初の3指標と今回の3指標を掛け合わせるとこんな感じです。

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図をみて考えると、

■「1(A)毎日コミュニケーション」×「①楽しいし、続けようと思ってる」
■「1(B)定期的コミュニケーション」×「①楽しいし、続けようと思ってる」

上記の2つが一番大事な層に思えていきます。

つまり、このような形でターゲットの分類が可能になります。

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そうしてみると、いかにして、「③辞めようかどうか迷っている」層や「②習慣化して、なんとなく続けてしまっている」層を上に引き上げていくかが大事になるのではないかと思います。

そして、こうした熱量を測ることができれば、顧客層の状況をよりリアルな形で把握でき、さらに良いサービス提供の可能性が広がるのではないかと思います。

サブスクサービスでKPIとしてよく置かれるのが、DAU(Day Active User)やWAU (Weekly)、MAU(Monthly)といった数字だと思います。そしてそれに対して、先週より利用者が減った!、先月から退会者がこれだけ減った!というような形で一喜一憂します。

それ自体は、サービスの利用状況や売上の確認で大事だと思いますが、その中では、「楽しいし、続けようと思っている」人がどれだけいるのかを図るという考えからみると、指標として結びつかないと思います。

そこで、それを測る参考になりそうなサービスがあったので以下にご紹介します。これを応用して考えると良さそうだなと思いました。

2 5秒で終わるマインド確認

「GEPPO(ゲッポウ)」というサービスがあります(月報から由来??)。
これは、企業が従業員に対して毎月の従業員のコンディションを把握するために使われているサービスです。

使われたこともある方なら想像しやすいと思いますが、毎月下記のような天気模様の質問を各従業員に行います。

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こうした形で、直感的に回答するような仕様にし、従業員のコンディションを定量的に把握します。もちろん個別ユーザーごとでの確認もできるので、誰の調子が悪くなっているのかを定期的に把握することができます。

このサービスの良いところは、クリック2つ程度で終わることです。このページを開いて、大体5秒くらいで終わります

また、「良かった、悪かった」という聞き方ではなく、天気予報にすることにより、回答しやすくなると思います。
つまり、天気予報というのは、晴れの日もあれば、雨の日もあるので、雨を選んだとしても来月は晴れかもしれないというマインドを持って回答できるので、回答者自身も自分自身を追い込むようなことを避けられると思います。

また、先日のまとめで書いたアメリカの企業のPelotonでは、カスタマーサービスを利用すると回答直後にすぐ満足度についての質問がきます。

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それは、対応ごとにそれを回答するような仕様であり、どういった対応が顧客の満足度を上げたり下げているのかについて、把握できるようになります。

少し話はそれますが、カスタマーサポートに関する本や記事を読むと、「顧客の声を聞いて製品やサービスに活かす」ために重要だといった形で、そこでの回答ノウハウやその方法自体がゴールとなっていますが、実は、そのサポートの後にユーザーがどのような心情になったかを把握するということの方が大事だと思います。

いかに人数を揃えようが、回答マニュアルを用意しようが、対応後の顧客がどのような心情になったのか、そこが想像できてない企業は、イケテナイと思ってます。

話を戻しますが、

このように、「5秒程度で終わる」天気による心情確認であったり、簡単な満足度に関する質問を、毎回or定期的にサービスの予約や注文画面などで顧客と接点がある際に、軽くヒアリングするだけで、今提供しているサービスの満足度やユーザーの心情が、上昇気流にいるのか、下降気流にいるのか、停滞しているのかを定期的にチェックできるのではないかと思います。

一般的なアンケートあるあるで、「○月のアンケートを実施」といった形で、5分で終わりますと言いながら、答えようとすると膨大な数の質問現れます」。よく騙されたと思って挫折したくなります。

こうした経験を多くの人が持っているので、仮にインセンティブがあったとしても、ほとんどのユーザーはアンケートにまず抵抗感を感じるし、時間の無駄と感じるでしょう。

答える人は、相当満足しているロイヤルカスタマーか、アンケート好きな顧客、または、全く不満足だと感じている顧客が多く、回答者の時点でかなりのバイアスがかかっている可能性があります。

もしどうしても、アンケートをとるなら利用ユーザー内ではなく、アンケートユーザー好きが集まるアンケートサービスを利用した方がいいです。

でもその一方で、天気や、満足度を聞く程度であれば、アンケートとも感じず回答を収集でき、素早くコンディションをチェックできるはずです。

そうした形を今提供している既存のサービス内に実装するだけで、サービス提供の改善スピードがグッと早くなると思います。

では、次にそうしたデータをどのように分析していくかについても記載しておきます。

3 データ分析の仕方

このような簡単な質問でデータ聴取をすることにより、下記2点のメリットがあると思います。

① ユーザーが本当に離れる前に引き止めることができる!
② 誰でも一瞬に全従業員が見える化で状況を把握することができる!

①は、天気などの変化傾向を分析することにより、例えば曇りマークがどの程度続ければ、辞めてしまう可能性が高いなどという仮説がわかってきます。

そこで、顧客がサービスに不満を持ってきたタイミングで、サービス提供側からコンタクトを取っていき、彼らの不満を解消するという提案ができるようになるのです。そうすることにより、離脱率はずいぶん防げると思います。

②は、社員が誰でもアクセスできるツールを使って、ユーザーから聴取したデータを規定の形で簡単に集計できる仕組みの導入などができます。簡易的なデータであれば、アナリストでなくてもすぐに確認できると思います。

例えば、セールスフォースが買収したTableauを昔使っていましたが、これなどは良いのではないでしょうか(ExcelとかAccessでもいいと思いますが、見やすい方が良いので)。 ※別に宣伝してないです。

ここで吐き出したデータを毎週なりの全社メール等で周知していけば、全社員が現在のサービスの方向や課題をしっかり把握して業務に取り組めるので効果的かと思います。

そして、マーケティング担当者は、これだけの情報でも下記のような分析が可能になります。

・天気がいい人と悪い人のデモグラを分析し、属性をあぶり出す
  例:性別/年齢/利用頻度/利用期間など
・そのあぶり出した層をクラスターとしてまとめ、その特徴を様々な角度から分析する。または、ランダム抽出しインタビューを実施する。
・競合他社の出現や新サービス等による自社サービスへの心理的影響を把握する

もっと得意な人はたくさんできるのでしょうが・・。

4 まとめ

ということで、同じようなサービスを提供していても、競合の出す新しいサービス(価格/内容)や、今回のコロナのような社会的構造変化によって、様々な価値観の変化が日々起こります。

例えば、最近の事例だと、NetflixやPrime videoに対抗して、Disney+(ディズニープラス)や、HBO Maxが出現しました。
他にフィットネスでは、過去に紹介したこのような内容です。

そのため、常にユーザーの心理=愛着度を把握できるような仕組みを作っておくことは非常にプラスになると思っています。なので、このような簡易チェックできる仕組みは是非導入してみてはどうかと思います。

一方で、それこそがユーザー負担になって余計離脱率が下がるのではという懸念もありますが、この程度であればむしろ、企業として我々のことを考えてくれているのだなと思いポジティブに考える人の方が多いのではないかと考えます。

もしそれでも懸念があれば、一旦 A/Bテストを実施し、表示するユーザーと表示しないユーザーの動向を分析してから実施すれば良いと思います。

最後に、僕のもう1つの不満は、一部の提供するサービス事業者の、退会ハードルが非常に高いことです。物凄い手間をとられます。このような経験をすると、めんどくさいので、もう二度とこのサービスを利用したくないなと思います。おそらく、よほどのことがない限り復活はしないと思います。

そのため、もう少し退会導線や方法をわかりやすくして、去ると決めた場合は追わず、気持ち良く終わらせて欲しいなと思います。その方が、また戻ろうかなという気持ちが湧きます。

ということで、さようなら

ps Netflixが給付金を行っていました。が、一瞬で殺到し終わったようです。支給期間が2週間って、政府の支援金より早い。そして、これを日本の映像事業者ができたら良かったなと思いました。



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