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Perfect Daysを観て東京とトイレについて考えた話

シンガポールで大好きな映画館であり、昭和の良き雰囲気が残るThe Projectorにて上映中で、ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司が主演を務めるPerfect Daysを鑑賞した。
日々のルーティンと生活の何気ない喜び、アナログカルチャー・自然に対するリスペクトを感じられ、低刺激でずっと観続けられる映画だった。

ストーリーとしては、役所広司が演じる主人公の平山が、東京スカイツリー近くの古いアパートに住み、毎朝早朝から軽車両で東京・渋谷区の公衆トイレの清掃に向かうところから始まる。

日々の通勤でも彼はルーティンを持っている。
家を出た後、これから始まる一日を愛でるように空を見上げる、缶コーヒーを買う、お気に入りの70年代のカセットテープ音源をスカイツリーが見えたタイミングでかけ始める。

なぜ渋谷区の公衆トイレなのか、については、渋谷区の17か所で順次公共トイレが建築家やデザイナーによりデザイン性の高いトイレに生まれ変わるThe Tokyo Toiletというプロジェクトへのオマージュを感じられる。

平山は毎日手際よく且つ入念に清掃作業を行い、綺麗でデザイン性のあるトイレのメンテナンスに重要な役割を担ってくれている。時折、木漏れ日が差し込むトイレに平山が心動かされる描写が流れ、機能美と自然美の融合を楽しむ表情も覗かせる。

自身も元渋谷区住民として、ランニングの最中に一部のこれらのトイレを利用したことがあり、センスの利いたアイデアやデザインを兼ね備えているトイレで用を足すことができ毎回とても気分が良くなったことを思い出す。

公衆トイレに3つの要素があるとすれば、

  1. トイレが機能する(紙があったり、水が流れるという事)

  2. 清潔に保たれている

  3. デザイン性があり、美を感じることができる

トイレは誰しも身近なもので生活に不可欠なものであり、その国や地域の経済レベルを反映すると言っても良いかもしれない。下水道普及率は公衆衛生の観点でもその国の社会インフラの充実や発展レベルを表現するものと言える。
今シンガポールに住み、色んな東南アジアの国に行くことがあるが、これまで行ってきた欧州、米州、アフリカも含めてトイレは人間にとって根源的なものだし、利用用途は違うにしても上の1,2を満たしてくれると嬉しいものだ。
大半の国で公衆トイレでは1を満たしておいて欲しい期待があり、2を満たせば感動に変わるだろう。更には3を備えた国は見たことがない。そういう意味で渋谷区の東京トイレプロジェクトは素晴らしいものと言いたい。

話を映画に戻し、平山はルーティンを大切にしている。
仕事後、まだ明るい時間から馴染みの銭湯に通うこと。いつもの浅草地下街にある居酒屋で食事をとる事。小説を読んでそのまま夢の世界に赴くこと。
そして朝、近くでほうきを掃く音で目覚めること。

ルーティンの生活の中にも日々変わりゆく自然美、違いを感じ取れる柔軟な心、機能美にリスペクト出来る幅広い感性を持ち続けたいと思った。

平山の素晴らしい日々のはじまり

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