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【ショートショート】物語ドロップス ―3つ目の願い―

亡くなった祖父の家、長年使われていなかった蔵を掃除していた僕は、汗水たらしながら物を仕分けていた。

すると、いかにも怪しい、「魔法のランプ」と言うべき形のものを見つけた。

これをこすれば魔人が出てくるという話を思い出し、さっそく実践してみると驚いた、本当に現れるとは。

「あなた様の願いを何でも3つ叶えてみせましょう」

完璧すぎてもはや怪しい笑顔を浮かべながら、魔人は手もみしている。

「もしその話が本当なら、少し考えたい」

僕は慎重な性格なのだ。

悩みに悩んだ結果、僕は3つの願いを決めた。

「一つ目は死ぬまで遊んで暮らせる、莫大な財産がほしい」
「お安い御用です」
すぐに目の前に札束の山が積みあがった。
こいつは本物の魔人だ。

「二つ目は僕のことが大好きな絶世の美女がほしい」
「お安い御用です」
するといつのまにか僕の隣にこの世の物とは思えないほどの美人が現れ、艶っぽい目でこちらを見ている。
馬鹿みたいな願いだが、恥を捨てて頼んでよかった。最高じゃあないか。

「そして最後の願いが肝心だ。今日ここでお前と出会ったこと、僕が願ったことを僕の記憶から消してくれ。人に頼って手に入れた幸せだと思って過ごすのは嫌だからな」
「お安い御用です」
そう言うと魔人は音もたてずに消えていった。

ふと気が付くと、僕の目の前にはありえないほどの大金が積まれている。
そして隣には全く知らない、恐ろしいほどに容姿の整った女。

僕は何が起きたのか全くわからず、思わず逃げだしてしまった。



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