見出し画像

2024PGAツアープレーオフ フェデックスセントジュード選手権


1.日程及び会場

〇日程 2024年8月15日~18日
〇会場 TPCサウスウィンド(テネシー州)
〇全長 7243Y(Par70)

2.結果

優勝 松山英樹        -17
  (今季2勝目、PGAツアー通算10勝目)

T2 ザンダー・シャフリー  -15

T2 ビクトル・ホブランド  -15

4  スコッティ・シェフラー -14

T5 サム・バーンズ     -13

T5 ニック・ダンラップ   -13

3.パリ五輪銅メダリストが土壇場の連続バーディーで決着、自身11シーズン目でのPGAツアー節目の10勝目、松山英樹

 プレーオフ第1戦は、いきなりハイレベルの試合になりました。
 3日目で2位に5打差をつけた松山英樹が、バックナインで途中苦しみながらも要所をまとめ、最終ラウンドは4バーディー2ボギー1ダブルボギーのイーブンパー70、トータル17アンダーでプレーオフシリーズ初優勝を節目のツアー通算10勝目で飾りました。

〇プレーオフ開幕前のハプニングが”奏功”に

 パリ五輪終了後に渡米するためトランジットで立ち寄ったロンドンのダウンタウンで、キャディの早藤さんとコーチの黒宮さんのパスポートが盗まれるハプニングに遭いました。
 幸い松山は財布を盗まれただけで済みましたが、”チーム松山”の主要メンバーを欠いてのプレーオフ第1戦を迎えなくてはなりませんでした。
 そこで急遽久常涼の帯同キャディ・田淵さんを起用して試合に臨みましたが、これがうまくはまり第3ラウンドを終わり2位に5打差をつける試合展開となりました。

〇順調な流れが一転、一気に混戦へ

 最終ラウンドはリスクを取らない”攻め”を実行した松山。
 8H、11HのPar3でバーディーを奪い、後続達を諦めモードを促してきましたが、次の12H(Par4)のティーショットを打った後の出来事から混戦模様に一変します。
 7H(Par4)セカンドショットでできたボールマークを、自分自身で踏んづけてしまい、競技委員から意図的にマークを踏んだのではと指摘がありました。
 意図的に踏んだのであればライの改善により2打のペナルティが課せられるところでしたが、通訳を交え協議した結果意図的にライを改善していないと判断され、お咎めなしとなりました。
 しかしこれが松山の動揺を誘いこのホールをボギー、14H(Par3)ではティーショットを池に入れるもボギーで食い止めましたが、続く15H(Par4)ではグリーン奥からのアプローチが寄らず入らずでダブルボギーを叩き、前の組でスコアを伸ばしたビクトル・ホブランドに一時トップを明け渡す時間もありました。

〇気持ちの切り替えが見事、連続バーディーで激戦を制す

 一番易しい16H(Par5)でバーディーが奪えず、最後の難関となった残り2H。ここからパリ五輪銅メダリストの本領を発揮します。
 距離の長い17H(Par4)、ティーショットを左のラフに運びセカンドショットをグリーン手前約8mにナイスオン。
 8mのバーディーパットを真ん中からねじ込み、再び一歩リードを奪い返します。

 そして左サイドがすべて池になっている最終18H(Par4)。
 ティーショットがフェアウェー真ん中を捉え文句なし。グリーン中央に乗せてパーでいいという場面でも積極的にピンを狙い、ピン左1.7mにつけ勝負あり。
 難なくバーディーパットを決め、リーダーボードに強豪が揃う大会を制しました。

〇昨年とは雲泥の差

 昨年の今頃は、ツアー選手権10年連続出場をかけ満身創痍でツアー終盤の連戦に臨んでいた松山。
 特に昨年の本大会は次のBMW選手権に出場できなくなるおそれがあり、フェデックスカップ50位内に入れず、シグネチャーイベント8試合に出場できなくなる可能性もありました。
 しかし終盤に怒涛のチャージを見せ何とか50位内をキープ、薄氷を踏む思いで次戦に出場できました。
 BMW選手権では初日好スタートを切るものの、連戦で体が悲鳴を上げ無念の棄権。ツアー選手権連続出場記録が途切れました。

 そんな出来事が自分の肥やしになったのか、今季2勝とパリ五輪銅メダルで松山はさらなる高みに到達しました。

〇フェデックスカップランキングは3位、世界ランクも6位に

 この優勝で2000ポイントを獲得しフェデックスカップも3位に浮上。
 またこの後発表される世界ランクも6位なることが確実で、2018年のAT&Tバイロンネルソン(現ザ・CJカップバイロンネルソン)以来の世界ランク1桁順位となりました。

※ トップ10入りは2022年のジェネシスインビテーショナル以来

 パリ五輪から続く好調な流れを維持していけば、2年ぶりの出場となるツアー選手権が、ファンにとって大きな楽しみになりました。

4.パリ五輪の無念をここで晴らしたい思いが通じた最終ラウンド、ザンダー・シャフリー

 パリ五輪の最終ラウンドで滅多に見ない崩れ方で、連続金メダルを逃してしまったザンダー・シャフリー。
 3日目を終了し状態はいま一つだったのですが、日曜日にやっとシャフリー本来の姿に戻りました。
 最終ラウンドは7バーディーノーボギーの7アンダー63、トータル15アンダーで2位タイに入りました。
 オールラウンダーの面目躍如です。

〇ツアー選手権前1位の可能性を残した

 プレーオフ開幕前は2000ポイント近い差があり、3日目終了時ではツアー選手権前にシェフラーの1位が確定する状況でした。
 しかしシャフリーが2位タイ(2人)で980ポイント、単独4位のシェフラーが540ポイントで440ポイント差を詰めることができました。
 これにより2人の差が1500ポイントになり、優勝が必要十分条件とはなりますが場合によってはシャフリーの1位もあり得る状況に。
 うまくいけば得意としているイーストレークで、アドバンテージを貰ってツアー選手権に臨めます。
 今季メジャー2冠のシャフリー、まだ諦めてはいません。

5.”プレーオフ男”は健在だった、今季ここまでかと思われたのが一気に最終戦出場まで確実なものに、ビクトル・ホブランド

 昨シーズンBMW選手権で優勝した勢いで最終戦のツアー選手権にも連勝し、フェデックスカップチャンピオンに輝いたビクトル・ホブランド。
 ”プレーオフ男”は健在だと思わせる大会になりました。
 3日目を終わり11アンダーで松山を追いかけた最終日。16Hまでに6バーディー1ボギーで16アンダーとし、松山を抜いて一時単独トップに躍り出る場面もありました。
 しかし17Hのティーショットで右の林に打ち込み、救済のドロップを受けたもののラフにボールがすっぽりともぐりこんでしましました。

 結局セカンドショットがグリーン右手前のバンカーに入り、そこから寄せきれずボギーとなりました。
 結局6バーディー2ボギーの4アンダー66、トータル15アンダーで大会を終えました。

〇年間王者の面目躍如

 ホブランドの大会前のランキングが57位で、本大会で今季のPGAツアーが終了してしまうおそれがありました。
 しかし980ポイントを獲得したことで57位から16位まで41ランクアップを果たし、最終戦まで進めることが確実となりました。
 コーチと一時離れたもののまた再びよりを戻し、昨年のようでなくても再び輝きを見せ始めたホブランド。
 ディフェンディングチャンピオンとして臨む残り2戦、いい終わり方をして来シーズン、そしてメジャー初優勝への足掛かりにしたいです。

6.最後に意地を見せるも、今大会でツアー選手権のアドバンテージを決めたかった、スコッティ・シェフラー

 これまで2シーズン連続でツアー選手権前に1位になりながらも、ツアー選手権で優勝できずフェデックスカップチャンピオンを連続して逸してしまったスコッティ・シェフラー。
 今年は2位シャフリーに2000ポイント近い圧倒的な差をつけていたため、本大会で2000ポイント以上の差をつけて1位を確定し、次週高地のデンバーで行われる試合を、コンディションを整えるためにスキップすることも考えられました。
 流石はパリ五輪金メダリスト、3日目までも順調にスコアを伸ばし、好調な松山を五輪で見せた猛チャージで脅かそうとしました。
 最終ラウンドはチャンスを途中取りこぼす場面があり、いつものシェフラーではなかったものの、最終18Hでは12mのロングパットを決めるところは流石でした。
 結局5バーディー1ボギーの4アンダー66、トータル14アンダーで大会を終えました。
 シャフリーとの差が1500ポイントまで追い詰められたこともあり、次戦の結果によっては、3月からずっと守り続けた1位の座を明け渡す可能性も出てきました。
 それでもコンディション最優先を取るならば、”リスク”を取らず次戦をスキップする可能性も否定できません。
 相棒のテッド・スコットを含めた”チーム・シェフラー”と、綿密にミーティングをすることでしょう。

7.プレーオフ泣いた人笑った人

 70選手が出場したプレーオフ第1戦。このうち次のプレーオフ第2戦・BMW選手権に出場できるのはフェデックスカップ上位50選手のみ。
 上位50選手に入れればシグネチャーイベント全8試合の優先出場権を得られますが、それ以外の20選手は得られずにそこで今年が終わります。
 今大会でプレーオフ前51位以下の選手が50位内に入ったのはホブランドの他に2選手。
 松山と最終組を回ったニック・ダンラップ、最終ラウンドベストスコアタイの7アンダー63をマークしたエリック・コールが該当します。
 逆にプレーオフ前は50位内だったのが圏外になったのも3選手。
 今季初優勝を挙げたジェイク・ナップ、今季トップ10に3度入ったマッケンジー・ヒューズ、そして後半に入り好調を見せてきたトム・キムです。
 中でもトム・キムは終盤3Hを迎えるまでは4アンダーで回り50位内を問題なくキープできると見られていましたが、1ボギー2ダブルボギーという内容に終わり1オーバーの71、トータル1アンダーの50位タイで大会を終えました。
 50位のキーガン・ブラッドリーと51位のトム・キムの差が17ポイント、終盤の大失速が悔やまれる結果に。
 50位内から溢れた3選手は、9月から始まるフォールシリーズに出場しシグネチャーイベント2試合(AT&Tペブルビーチプロアマ、ジェネシスインビテーショナル)出場権獲得を目指すことになりました。

8.雑感

〇ジョーダン・スピース、左手手首手術を決断

 プレーオフ第1戦を終え、フェデックスカップ67位で今年のPGAツアーを終了したジョーダン・スピース。
 昨年4月から左手首の痛みを訴え、特にフェアウェイからのアイアンショットが大きくぶれてしまい、スコアをまとめられませんでした。
 そこでスピースはオフに手術敢行を決断し、今年のプレーをここで終了することをファンやマスコミに発表しました。
 今年はプレジデンツカップが開催され、ライダーカップともども団体戦で米国チームの勝利に貢献してきたスピース。
 今年はキャプテン推薦はなく、怪我の治療に専念します。

〇マキロイ、ほとんど出る幕なし

 これまで現役選手最多のフェデックスカッププレーオフに3度優勝し、プレーオフ総獲得賞金も6700万ドルを超え正に”プレーオフ男”と言ってもいいロリー・マキロイ。
 今大会もいろいろと大きな大会で結果を残せなかったこともあり、プレーオフに並々ならぬ思いで向かってくると思われました。
 しかし初日に2アンダーをマークしたのが大会唯一のアンダーパー。
 2日目以降はマキロイとは思えない、3日間連続のオーバーパー。
 終わってみたらトータル9オーバーで、スピースと並ぶ68位タイで大会を終了。シェフラーとシャフリーが安定した成績を残す中、トップ3の中で完全に出遅れてしまいました。
 フェデックスカップも2ランクダウンの5位に後退、まだまだ挽回は可能ですが、全米オープンからの悪い流れを断ち切ることができません。
 ツアー選手権は問題なく出場できるので、BMW選手権でどう立て直せるかが注目点となりました。
 4度目の栄光、まだまだ掴みに行けるはずです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?