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節税はほどほどの距離感がベストではないか、という話

会社を経営していると、税金について考えることが本当に多い。

サラリーマンの頃は基本的に源泉徴収で引かれてしまうので、こちらが考えて手取りを増やす策なんてほとんどなかった。

せいぜい、イデコをやるか、ふるさと納税をやるかくらいの話だった気がする。

それが今、会社経営をして、自分にも他者にも給料を出す立場になると、総合的に状況を見れる分、損得を突きつめようと思えば、いくらでも突きつめられる状況にある。

ただ、その時考えることは多岐にわたりすぎて、「本当に総合的に得なのか」ということを考えると、逆に難しくなる点が多いのも確かだ。

法人と個人、個人でもどの個人か、金融資産をどう分配するか、不動産の所有を誰にするか、等いろいろな観点がある。

結論から言うと、僕は節税は、基本の部分は押さえつつ、追い求めるのはほどほどがいいんじゃないかと思っている。

その理由をこれから述べてみる。


①制度は変わる

まず、制度は常に変わっていく。

例えば最近よくニュースで見るものにしても、配偶者控除の見直し、第3号被保険の見直しなど、家族がいる者にとっては影響が大きい議題の議論がなされている。

これらを見ても、各種控除を考えてベストな報酬や状況を作り込もう、と考えても、それらはいずれ変化していく。

だから、現在の控除や給付の制度をもとに、細かく状況を作りこんでも、それらがワークする期間は、一時的なものにとどまる可能性が高いのだ。

個人の所得ベースで見ても、社会保険料を考えたらこうだ、所得税を考えたらこうだ、でも行政の給付の所得制限を考えたらこうだ、など、いろんな数字指標が出て来る中で、最適なものを追い求めるというのはそもそも難易度が高い。

しかも、それを追い求めても変わっていく可能性がある。

だとすると、そこに多大な労力を費やすのは果たして賢いのか?という話になってくる。

②やりすぎるとボロが出る

また、やりすぎるとボロが出て、自分の首を絞める可能性がある。

当然だが、自分が数字を弾いて損得を計算できるということは、自社の状況を見れる外部の者に、ある程度知識がある場合は、その人も状況を見れば何をしようとしているか分かるということだ。

要するに、利益を追い求めすぎると、そのためにいろんな策を打っていることは誰かにバレるのだ。

それは身内かもしれないし、役所かもしれないし、どこかは分からない。

ただ、自分に利益を誘導していることがバレたときは、それがいい結果に結びつかないことが多い。

なぜならそれを知った側からすればいい気持ちがするわけないからだ。

本来は対象にならない助成金や補助金をかすめ取ろうとするのも同じ思考から生まれるものだ。

それらも見る人が見ればわかってしまうし、その結果それをやった人は他者からのリスペクトや信頼を失うことになる。

結局、ほどほどにしておくことが大事なのだ。

数年前、不動産10億以上もっている資産家の相続人が、不動産購入のための借入による債務控除を使い倒して、相続税を0円で申告し、税務調査で数億円の追徴課税を食らったことがあった。

当たり前である。

つまり、大切なことは、ルールの中で問題なくやれているかどうか、ではなく、あからさまに自分に利益を誘導することをしていないかどうか、なのだ。

後者をやってしまっていては、仮に前者がクリアされていても、必ず横やりが入る。これは自然の摂理のようなものだ。

これを分かっているから、アメリカのお金持ちなんかは、財団を作るなどして、公益のために私財を投じ、うまく公私のバランスを取っている。

おそらく、お金持ちは他者貢献をしないと、必ず誰かに足を引っ張られることを感覚として分かっているのだろう。

③タイミングや運に左右される

あとは、どれだけお金が入ってくるか、という話はどれほど自助努力を費やしても、結局タイミングと運に左右される部分が大きい。

分かりやすい例は、相続税だ。

資産があったり、会社を持っていたりする人は、相続時の納税額を弾いて、その納税資金をどう工面するか、ということを事前に考えるかと思う。

僕もそれをやっているから分かるのだが、相続の一番のリスクは相続がいつ発生するかが分からない、という点なのだ。

相続時の土地の扱いがどうなっているか、相続時の路線価はどうなっているか、相続時の控除額や実効税率はどうなっているか、それらの不確定要素を抱えたまま準備を進めなければならないのだ。

それを逆に考えると、相続がいつ発生するかを確定できればいい、と恐ろしい思想に行きついてしまう。

当然、それは天に任せることになるので、必然的に最終的な納税額がどうなるか、ということも天に任せる形になるのだ。

これは相続を例にとった場合だが、他もそうだと思う。

所得税、法人税、相続税の三大税法は常に変わるし、その変わったことが自分にとって有利に働くか、不利に働くか、というのは自分では決めることができない。

つまり、最終的には運とタイミングによるので、節税は突きつめすぎずにほどほどにやる、くらいの距離感が、精神衛生上もいいのではと思う。

【まとめ】ほどほどにはやろう

以上、節税はほどほどでいいと考える理由を述べてきた。

が、逆にいうと、ほどほどにはやろう。

どういった種類の税金があるか、税率はどうなのか、それらを最小にしつつ目的を達成していくにはどういう形がいいのか。

これくらい考えよう。

金融商品を買ったり、法人や個人の保険を買ったり、いろいろな手段を講じるのはその後だ。

節税という言葉に踊らされて、基本的な部分も押さえてないのに、営業マンに売り込まれた商品を買い、自分よりも誰かの養分になっている人が世の中にどれだけいるのだろうか。

基本を押さえたうえで、やりすぎないことがベストではないだろうか。

「過ぎたるは及ばざるが如し」というのは秀逸なことわざだと思います。

節税とはほどほどに付き合っていきましょう。

それでは。

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