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モノやコトが個人に帰属するWeb3の世界が作り上げる新しい経済圏 ②

株式会社アトノイの代表・川本栄介が考えるWeb3の世界、Web3が作り上げていく新しい社会について。今回は、今日までのITと社会の歩みをたどりながら、現在地点の状況と抱えている課題について触れます。①はこちら。

完全ネット社会を迎え、飽和状態に。モノや情報の本来の価値は?

今のインターネットの世界による市場は、プラットフォーマーが信頼のおける第三者として、履歴を含めていろいろな我々の情報を集め、トレンドをうまくコントロールして作り上げています。それは間違いではないし、本当のことなのですが、それがこの世界の全ての真実のような感じになってしまっている傾向があります。本当はもっといろいろな選択肢があるのですが、Googleによって検索されやすいものがおすすめとして出てくるし、Facebookやインスタを開くと自分に近しい人の情報が上がってきます。誰だってラクで便利なほうがいいので、すぐ目の前に上がってきた商品の購入ボタンを押したり、情報にイイねを押したりしてしまうのは当然と言えば当然の流れです。確かにそうではあるのですが、インターネットが広がり始めたときのことを思い出してみてください。世界中の人と繋がることができ、世界中の情報がすぐに手に入る、画面の向こうには広大な世界が広がっていると胸を躍らせた方も多いと思いはずです。しかし、我々がラクを選び続けた結果、今では逆に狭い世界の中を我々は行き来しているような気がします。このことを別の角度から見れば、それだけインターネットが身近なものとなり、普通になったということを象徴しているとも捉えられます。GAFAも慈善事業ではないですから、やはりいい意味で利益が出るようにマッチングをさせたいわけです。それは当然の行為なのですが、プラットフォーマーが売りたいものを積極的に売り出し、それを見た人は自分たちの世界が実は狭まってはいるのだけれど、みんながいいって言っているからそれを購入してしまうような構図が出来上がっていて、購入した消費者も「まぁ、それなりに良かったからいいか」というような雰囲気になっています。誰かの思惑や意志が介在していることに薄々気付いている消費者もたぶんたくさんいると思いますが、「まぁ、面倒だからいいか」となっているようにも見受けられます。本当に欲しいものではないけれど、検索して似通ったものが出てきて、それがお手頃価格で購入でき、それなりに使うことができれば、「まぁいいか」となっている感じがするのです。そうやって手に入れたものは、思い入れがない分、すぐにゴミと化してしまう傾向もあり、循環型社会と言われる中で、そういう形の購買行動も問題があるのではと感じてしまいます。僕はここでGAFA批判をする気はまったくなく、こういう状況を作ってきたのは我々消費者にもあるということを踏まえた上で、今のぼんやりとした閉塞感やチラチラと見え始めている限界部分、そうした課題について一緒に考えていきたいと思います。

この買い物のシステムは、価格や品質にも問題を生じさせています。中には、本当にいいモノを適正価格で出したいと思っている販売者や製造元、生産者もたくさんいると思います。しかし、似ているけれど粗悪なものを安価で大量に販売し、売りさばきたいという販売業者もいるわけです。プラットフォームを運営する側からすると、良質だろうが、悪いものだろうが、マッチングして購入してもらい、利益が上がればいいわけです。そこに本来の価値というものはほぼ存在しません。自由市場で競争社会ですから仕方のないことなのですけれど、IT業界に身を置く者として、そうしたトレンドの作られ方や囲い込みにも限界が見えつつあると感じており、ここをどう打破していくかが今後の課題なのではないかなと感じています。たとえば100円で売られている鉛筆がネットの市場にたくさんあるとします。でも、本当はもっと書きやすくて、質が良い鉛筆を500円出してでも買いたいのに、実はその500円のものを探すのが難しく、検索してもなかなか出てこないのです。こういうマッチングがなかなかできないのは、GAFAのビジネスの課題のようにも感じられますし、停滞しているような空気を感じます。

ブロードバンドが登場してから、この20年、ITはいろいろ進化してきました。ただ、革新的なサービスなども含め、iPhoneが登場したときのようなセンセーショナルなものはしばらく出ていません。少し手を加えてよくなったよね、改良されたよねというものはたくさん出ていますが、「おっ!」と目を見張るようなものはありません。これだけインターネットが一般化し、安定していると、完全な飽和状態に入っているのです。それが悪いことだとは言いませんが、これが続くとGAFAの独占状態が続き、モノも情報も「みんなが言っているから、まぁいいか」「みんながおすすめしているから、まぁいいか」という、緩い集団心理のようなものが働きはじめ、それぞれのモノや情報の本来持っている価値が失われ、本来繋がるべきであろう良いマッチングができなくなっていきます。

ブロードバンドの登場によって、この20年で世の中は完全にネット社会になりました。だからこそ、今度はリアルを追求する人たちも出てきています。原点回帰のような感じで、本質を見ようとする人たちもいます。ただ、まだまだマイノリティな存在で、プラットフォーマーがトレンドを作っているというのは否めないのかなというところです。

先ほども少し触れましたが、製品もサービスもシステムもすべて飽和状態です。ここしばらく、「これで世界が変わるかもしれない!」とワクワクするようなものが現れていないのです。すべて普通になっていて、逆に皆に浸透するにつれ、さまざまなルールが増え、自由度は減っているようにも思います。ルールは増えて当たり前なのですが、窮屈感というか閉塞感的なものはあります。世の中の時勢に合わせたサービスを日和見的な感じで作らなければという雰囲気も感じられます。

③へ続く

<構成・リライト:徳積ナマコ>

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