マガジンのカバー画像

短編小説

5
運営しているクリエイター

記事一覧

なりたいもの 【ショートショート】

なりたいもの 【ショートショート】

私は夜9時から深夜0時の間、男の欲を満たす風俗嬢「ルナちゃん」に変身する。

「あ~疲れた。」
営業終わりで疲れた体を引きずりながら、いつもの送迎車の後部座席に倒れ込む。
「お疲れ様っす。コンビニ寄ります?」
運転席で煙草を吸うユウに言われる。
「いやいい、そのまま家でお願い。」
「オッケーっす。」

車は賑やかなすすきのを駆け抜けていく。眠らない街、すすきのはこれからが楽しい時間帯だ。
「そうい

もっとみる
来世でまた逢えたら 【短編小説】

来世でまた逢えたら 【短編小説】

「遅れてごめん、待った?」
「遅いよコウさん。遅すぎて帰ろうかと思ったよ。」
「本当にごめん!仕事が終わらなくて…。」
「ふふ、冗談だよ。早くお店行こう。」

コウさんとは、マッチングアプリで知り合った。「マッチングアプリの男なんてろくなものじゃない」なんて思っていたが、コウさんは違った。価値観も合うし、優しいし、顔も良いし、年上らしい頼りがいがある。夜の営みも上手だった。
私はいつしかコウさんの

もっとみる
先輩、僕、林檎嬢。それぞれが違う相手を想いながら同じ煙草を吸っていた。 【短編小説】

先輩、僕、林檎嬢。それぞれが違う相手を想いながら同じ煙草を吸っていた。 【短編小説】

この小説は前日に投稿した『煙と噓』のサイドストーリーです。是非、『煙と噓』と併せてお読みください。

先輩はかっこいい人だった。艶のある黒髪、三白眼の目に引かれた少し長めのアイライン、主張の強い赤い唇。軽音サークルの新入生歓迎会で初めて先輩を見た時、心奪われた。
飲み会の時もみんなのように騒がず、いつも端の席で静かに酒を飲みながら煙草をふかしていた。普段は静かだが、言いたい事はちゃんと言う、自分の

もっとみる
嘘吐き 【短編小説】

嘘吐き 【短編小説】

同棲していた彼氏と別れた。原因は彼の浮気。元々、女遊びが激しく浮気癖がある彼だった。彼の「ごめん、次はしないから。」という言葉を信じては何度も許していた。だが今回ばかりは限界だった。

「次は浮気しないから。」と嘘しかつかない彼。
「酔っ払って甘えてくるのが可愛い」「好きだよ」「愛してる」
こんな彼の甘い言葉も、全て嘘だったのだろうか。

ある日、彼がいなくなった部屋を掃除していると、冷蔵庫と壁の

もっとみる
いつか、結婚したいね 【短編小説】

いつか、結婚したいね 【短編小説】

6時。やかましいアラーム音で起きる。カーテンを開けて、隣りで寝ている君を起こす。眠そうな目をこすりながら「あと5分」とか言っている。そうやってギリギリまで寝てるから、後から慌てて準備する羽目になるのに。

顔を洗ったら朝食とお弁当を作る。昨日、彼女に「唐揚げが食べたい」とリクエストされたので、冷凍食品のものだが入れることにした。そんな彼女は既に起きて、隣の部屋で化粧をしている。

ぱっぱと朝食を済

もっとみる