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人のために噓をつくのは誰?

一時期,「Big Fiveパーソナリティモデルに代わるモデルになるのではないか」と期待されたパーソナリティのモデルがあります。それは,HEXACOモデルと呼ばれるものです。

このモデルは,ビッグ・ファイブ・パーソナリティに「H因子」が加わったかたちになっています。神経症傾向を「E」,外向性を「X」と置くことで,6つの次元がHEXACOと「6つ」を彷彿とさせる名前に収まっているという工夫もなされています。

◎Honesty-Humility:正直さ・謙虚さ
◎Emotionality:情緒性,情緒不安定性,神経症傾向
◎eXtraversion:外向性
◎Agreeableness (versus Anger):協調性(対 怒り)
◎Conscientiousness:誠実性,勤勉性
◎Openness to Experience:経験への開放性

正直さ・謙虚さ

この,ビッグ・ファイブ・パーソナリティのなかに含まれていない「H因子」が,HEXACOモデルのポイントになるのですが,この次元は次のようなことに関連します。

◎職場での不正行為
◎研究室での不正行為
◎自己中心的な判断
◎臓器提供への意思

おおよそ,H因子の高さは向社会的行動,低さは反社会的行動に関連するという結果が多いようです。

噓との関連

H因子は「正直さ」という側面を含みます。ということは,H因子の高さは「噓をつかないこと」にも関連するのでしょうか。とはいえ,噓という行為には「二面性」もあります。人をだまそうとして噓をつくことはあるでしょうが,人を助けようとしてつく噓もあるのです。

これまでの研究から,どうも「H因子」は,「無条件に噓をつかないこと」を意味するわけではなさそうです。というよりは,「自己利益のためにだましたり搾取したりしないこと」という意味合いのほうが内容として適切なようです。

ということは,人のために噓をつくような場面では,H因子の高さは実際にどのようにかかわるのでしょうか。向社会的な噓とHEXACOモデルとの関連を検討した,こちらの論文を見てみましょう(Who tells prosocial lies? A HEXACO model investigation)。

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