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児童期のサイコパシーは生理指標に関連するのか

サイコパシー傾向というのは,何歳くらいから明確になるものなのでしょうか。

サイコパシー傾向というのは,さまざまな行動パターンを表すものなのですが,次のように整理されることがあるようです。

◎対人関係:誇大さ,欺瞞,不誠実さ,他者操作
◎感情:冷淡さ,無感情,共感の欠如,無反省
◎行動:衝動性,無責任,刺激希求性

より若い世代

最近は一部の研究者の間で,より若い世代におけるサイコパシー傾向が注目されているようです。攻撃的で反社会的な行動,行為障害の問題を検討する上で,有用だと考えられているからです。

行為障害というのはconduct disorderの訳語なのですが,他者の人権や社会的な規則を繰り返し犯す行動傾向のことです。最近では素行障害と訳されることも多くなっています。昔から「非行」として扱われてきた行動の多くを含む概念です。


もっと若く

社会的な要請としては,もっと若く思春期に入る前,小学生くらいの段階で,こういった問題の芽になるような傾向を把握したい,というニーズもあるようです。

とはいえ,そのような把握は可能なのでしょうか。また,どうやって確認することができるのでしょうか。

ひとつのポイントは,心拍数(HR)や皮膚電気伝導度(SC)です。皮膚電気伝導度は主に交感神経,心拍数は交感神経と副交感神経の両方に影響されると言われており,どちらも感情に対して敏感に反応します。また,瞬目反射つまり突然の刺激に対してまぶたが閉じる反射も,驚愕反射や恐怖に関連する防衛的な行動として知られています。

サイコパシー傾向が,感情の抱きにくさに関連することから,これらの生理的な行動や反応との対応も予想されます。では,小学生の子どもたちに対して,サイコパシー傾向の質問紙を実施し,これらの生理的反応を測定して対応を検討したらどうなるでしょうか。

キプロス共和国で行われた研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Extending the Construct of Psychopathy to Childhood: Testing Associations with Heart Rate, Skin Conductance, and Startle Reactivity)。

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