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孤独感の生涯にわたる変化はどうなるか?

人の一生涯の人生をイメージしてみてください。その長い人生の中で,どのあたりの時期がいちばん孤独感を抱きやすいと思いますか?

◎児童期
◎青年期
◎成人期
◎老年期

子どものときはあまり「自分は孤独だ」と感じることはなさそうですよね(という全体的なイメージです。もちろん,状況によって感じることはあるでしょうが,あくまでも通常の発達では,という話です)。

これまで日本でも孤独感の研究はおこなわれてきましたが,特に青年期に特有の感情として扱われてきた印象があります。


青年期の孤独感

私が学生の頃には孤独感の論文が日本で盛んに発表されていましたので,よく読んだ記憶があります。

孤独感というのは,青年期の自我発達に伴って一般的によく抱かれるものであり,不安や劣等感,疎外感といったネガティブな感情とともに,青年期を特徴づける感情の1つとして考えられていました。

また,理想と現実が一致しないことも青年期のひとつの特徴と考えられていました。人間関係での理想と現実の不一致も孤独感につながる可能性があります。さらに,青年期では一生を見通すような時間的展望を,まだ十分にもつことができないということも,孤独感を抱きやすくなるひとつの要因なのだそうです。

孤独感の研究

孤独感は日本だけでなく,海外でも盛んに研究されてきた概念のひとつです。

孤独感は人間特有の感情で,それは意味のある社会的なつながりをもちたいと思うことの裏返しです。社会的なほかの人々とつながることで,私たちが生き延びてきたという歴史そのものが,この孤独感という感情に反映されているのかもしれません。

また孤独感は,精神的にも肉体的にも不健康な状態につながることが知られています。孤独感を強く抱く状態が慢性的になると,喫煙や飲酒や自暴自棄な行動など,本当に健康を損なう状態へとつながる可能性があります。特に高齢者が多くなってきた日本では,この問題は深刻になっているかもしれません。

一生涯の変化

では,孤独感は一生涯をかけてどのように変化していくのでしょうか。この問題に対して,メタ分析をおこなうことで検討した研究があります。この論文(The Stability and Change of Loneliness Across the Life Span: A Meta-Analysis of Longitudinal Studies)です。

この研究では,孤独感の平均値だけでなく安定性にも注目しますので,縦断的な方法を使って複数回測定している研究から統計値を収集しています。

まずデータベースで論文を検索し,4800本近くの研究を収集しています。そこから,文献研究やケース研究,調査間隔が短期間であるものや情報が欠けている研究などを除いていきました。そして最終的に,75研究がメタ分析の対象になりました。これは,8万人以上の調査から得られた結果です。集められた研究は欧米のものだけでなく,アジア地域の研究も11本含んでいました。

平均値の変化

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