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性格とIQが生涯収入に及ぼす影響

知能や学力など認知的な特性に対して,社会性や感情を制御することなどに関連するパーソナリティ特性などを非認知能力非認知特性非認知スキル;non-cognitive skills)と呼ぶことがあります。

OECDはこれらのことを社会情動的スキルと呼んでいるように,海外では「スキル」と呼ばれることが多いのですが,なぜか日本だと圧倒的に「非認知能力」と呼ばれることが多くなっています。

非認知能力の条件

呼び方は違っていても,内容についてはおおよそ同じです。ただ,呼び方によってニュアンスが違ってくるのは確かではないでしょうか。たとえば「スキル」は,技術な技能のことですので,学んで「変化できる」という意味合いが強調される呼び方です。一方で「能力」は,個人の中に潜在的に備わっているニュアンスと言えるでしょうか。そして「特性」は,スキルや能力よりも「よいもの」というニュアンスが薄くなります。

非認知能力の条件

心理学者からすると,これまで多くの研究で取り扱われてきた,多種多様なパーソナリティ特性や能力,スキル因子がひっくるめられて「非認知能力」と呼ばれてしまうことに対して少し複雑な気分もします。

ただ,これはある一定の条件の下で集められた概念であると考えると,少しだけわかりやすくなります。

(1)学力と知能以外の心理学的な特性であること
(2)測定が可能であるということが示されていること
(3)変化する可能性が示されていること
(4)何らかの社会的な「よいこと」に結びつくことが示されていること

以上の4点です。非認知能力の中に多種多様な心理学的な特性が含まれてしまうのは,これらの条件を満たす心理学的な特性が,これまでに数多く研究されてきたからです。というより,これらを満たさないと研究を行っても注目されないのでは……と思ったりもします。

心理特性と所得

人生は長いのですが,そのなかでどれくらいのお金を稼ぐかというのは,社会的に「よいこと」とされる指標のひとつです。もちろん,収入が多いからといって人生の成功ではない,と言う人はいることでしょう。しかし,ひとつの指標であると考える人も多いのではないでしょうか。

では実際に認知能力と非認知能力を考慮した場合に,それぞれの特性をよりもつ人のほうが,そうではない人に比べて,生涯年収は多いと言えるのでしょうか。1922年に生まれた人々を追跡調査したデータがあります。アメリカの心理学者で,知能の研究者としてもスタンフォード・ビネー検査の開発者としても知られる,ターマン(Lewis Madison Terman)の研究プロジェクトで調査が行われた人々です。

非常に多くの項目が集められていますので,このような検討をするには最適なデータセットです。では,こちらの論文を見てみましょう(Personality, IQ, and lifetime earnings)。

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