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病理的な性格も年齢とともに変化する

一般的なパーソナリティ特性は,年齢とともに変化していくことが知られています。

神経症傾向は青年期に高まってから,成人期を通じて低下していきます(特に女性)。協調性や勤勉性は,成人期を通じて上昇する傾向があります。その一方で,外向性や開放性は年齢に伴ってあまり大きく変化するわけではありません。これらの傾向は海外だけでなく,日本でも同じ傾向が見られます。

全体的に,パーソナリティ特性は年齢が上がると「好ましい」方向に向かうように見えます。自己報告式のパーソナリティだけでなく他者によって報告される得点でも同じですし,横断的な調査でも縦断的な(個人を追って調査していく)研究でも同じです。

この,全体的に良い方向へとパーソナリティが向かっていくことを,成熟の原則と呼んだりします。

病理的な特性は?

となると一つの疑問は,病理的な特性の場合はどうなるのかという問題です。さまざまなパーソナリティ障害や,その周辺にある各種の好ましくないパーソナリティ特性が知られています。

パーソナリティ特性は,おおきく3種類のカテゴリに分かれます。そしてその中に,複数のパーソナリティ障害のカテゴリがあります。

A群
◎妄想性パーソナリティ障害:不信や猜疑心を抱きやすい
◎統合失調質パーソナリティ障害:他者に対して無関心,親密な関係の回避,社会的関係の欠如
◎統合失調型パーソナリティ障害:風変わりな思考・行動,関係念慮(関係が無いことを関係があると思い込む),錯覚,魔術的思考
B群
◎反社会性パーソナリティ障害:無責任,他者を軽視,搾取,無謀な行為
◎境界性パーソナリティ障害:対人関係や自己像の不安定さ,気分の変動が大きい,衝動的
◎演技性パーソナリティ障害:他者の注意を過度に惹こうとする,誘惑的,挑発的
◎自己愛性パーソナリティ障害:誇大な感覚,注目や賞賛を過度に求める,他者への無関心
C群
◎回避性パーソナリティ障害:拒絶・批判・屈辱を過度に回避,自分が評価される機会を避ける
◎依存性パーソナリティ障害:助言・世話を求める,服従的で支援を得るために多大な労力をかける
◎強迫性パーソナリティ障害:規則や秩序にとらわれる,完全性や生産性を過度に重視

なお,表面的にこれらの記述に当てはまるからといって,パーソナリティ障害となるわけではありません。自分自身の同一性や対人関係上の問題を抱えていて,日常生活に支障をもたらすような状況になったときに原因を求めていって,これらの診断へと至ります。問題なく日常生活を営むことができているのであれば,障害とはなりません。

病理的次元の変化

パーソナリティ障害は,いわばカテゴリとしての人々の分類です。病理的なパーソナリティをより細かく特性として表現していく研究も行われています。パーソナリティ障害の特徴は,互いに関連する部分がありますので,その要素を抽出することで,「ものさし」のようなものを準備することができるというわけです。

そんな,病理的な特性が年齢とともに変化していくのかを検討した研究があります。この論文を見てみましょう(Mean-Level Change in Pathological Personality Dimensions Over Four Decades in Clinical and Community Samples: A Cross-Sectional Study)。

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