病理的な性格も年齢とともに変化する
一般的なパーソナリティ特性は,年齢とともに変化していくことが知られています。
神経症傾向は青年期に高まってから,成人期を通じて低下していきます(特に女性)。協調性や勤勉性は,成人期を通じて上昇する傾向があります。その一方で,外向性や開放性は年齢に伴ってあまり大きく変化するわけではありません。これらの傾向は海外だけでなく,日本でも同じ傾向が見られます。
全体的に,パーソナリティ特性は年齢が上がると「好ましい」方向に向かうように見えます。自己報告式のパーソナリティだけでなく他者によって報告される得点でも同じですし,横断的な調査でも縦断的な(個人を追って調査していく)研究でも同じです。
この,全体的に良い方向へとパーソナリティが向かっていくことを,成熟の原則と呼んだりします。
病理的な特性は?
となると一つの疑問は,病理的な特性の場合はどうなるのかという問題です。さまざまなパーソナリティ障害や,その周辺にある各種の好ましくないパーソナリティ特性が知られています。
パーソナリティ特性は,おおきく3種類のカテゴリに分かれます。そしてその中に,複数のパーソナリティ障害のカテゴリがあります。
なお,表面的にこれらの記述に当てはまるからといって,パーソナリティ障害となるわけではありません。自分自身の同一性や対人関係上の問題を抱えていて,日常生活に支障をもたらすような状況になったときに原因を求めていって,これらの診断へと至ります。問題なく日常生活を営むことができているのであれば,障害とはなりません。
病理的次元の変化
パーソナリティ障害は,いわばカテゴリとしての人々の分類です。病理的なパーソナリティをより細かく特性として表現していく研究も行われています。パーソナリティ障害の特徴は,互いに関連する部分がありますので,その要素を抽出することで,「ものさし」のようなものを準備することができるというわけです。
そんな,病理的な特性が年齢とともに変化していくのかを検討した研究があります。この論文を見てみましょう(Mean-Level Change in Pathological Personality Dimensions Over Four Decades in Clinical and Community Samples: A Cross-Sectional Study)。
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