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人でないものを人のように見る傾向が育つ背景は何か

ペットや人間以外の動物についてもそうですし,動物以外のものであっても,それらをあたかも「人間のように」考えることはあります。

「うちのお掃除ロボットはおっちょこちょいで」とか
「いつも使っているパソコンの機嫌が悪い」とか
「今日の愛車は調子が良くて機嫌がいいみたい」とか。

このような擬人化は,人間が物事を考えるときのひとつの推論の方法です。擬人化は子どもっぽい思考のように思うかもしれませんが,人間以外への愛着を増したり,時には私たちの孤独感を抑制したり,良い面もあるようです。

そしてどうも,これまでの研究によると,豊かな家庭で育った子どもの方がそうではない子どもよりも,人間以外の対象を人間のように見なすことが多いようなのです。その背後には,親が子どもに温かい接し方をすることや,コミュニケーションスタイルの特徴があると考えられているようです。

擬人化傾向

もっと具体的に,擬人化傾向というのはどういうものを指すのでしょうか。それは,次のような感覚のようです。

◎ロボットは意識を持っているように感じる
◎自動車は自由意志を持っているように感じる
◎風は意図をもっているように感じる
◎海は意識を持っているように感じる
◎チーターは感情を抱いているように感じる
◎昆虫はこころをもっているように感じる

内容によっては,ちょっとスピリチュアルなニュアンスも出てくるように思いますね。でも,皆さんはどのように感じるでしょうか。

豊かさと擬人化傾向

というわけで,擬人化傾向と子どもの頃の社会経済的地位との関連について検討した論文を見てみましょう(Does growing up rich and insecure make objects seem more human? Childhood material and social environments interact to predict anthropomorphism)。

この研究では,子どもの頃の社会経済的地位と愛着スタイルが,大人になった後の擬人化傾向に影響するのではないかという仮説が立てられています。特に,経済的に豊かで,かつ不安や回避が強い不安定な愛着スタイルのもとで育つことが,擬人化傾向を高めるという仮説です。

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