自殺の思想史
警察庁の自殺者数を示したデータによると,令和に入ってから毎年2万人以上の人々が,自殺で命を落としています。
ちなみに,令和4年中の交通事故死者数は2600人ほどしかいませんので,いかに自殺者数が多いのかがわかるのではないでしょうか。
自殺の思想
歴史のなかで,自殺についてはさまざまな見方がされてきました。古代ギリシャや古代ローマ時代から宗教の影響下ではどのような考え方がされてきたのか,そして現代に近づくにつれてとらえ方がどのように変わってきたのか,自殺をめぐる思想の変遷をまとめた本が出版されています。
こちらです。『自殺の思想史―抗って生きるために』(ジェニファー・マイケル・ヘクト著,2022年)。
目次を見ていくと,古代ギリシャや聖書の時代から現代までの自殺にまつわる思想が網羅されていることがわかります。
医学や科学の発展
いまでは当たり前のことが,昔は当たり前ではない,ということの代表的な例が,医学や科学の発展ではないでしょうか。自殺は宗教的に許されない行為であることが多く,政治もその流れに従って対処していました。
しかし,医学の発展によって自殺が治療対象とされていくにつれて,人々の扱い方も変わっていくようになります。
自殺とは
著者自身も,自殺によって友人を亡くした経験があることが語られています。自殺とは何を意味するのか,どのように考えることができるのか,この本でまとめられていることは,私たち人類がどのように自殺を解釈してきたのかということでもあります。
最後に書かれているのですが,「自殺に反対する議論は大切だ。命を救うだけでなく,人生をより幸福にする」ということです。死について考えることは,生きることを考えることもであります。
ぜひじっくりと読みながら,生きるとは何を意味するのかを考えてみましょう。
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