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礼儀正しさのメリット

職場のなかで丁寧で礼儀正しく振る舞うことは,どんな良いことがあるのでしょうか。

英語で礼儀正しさは「civility」と表現します。社会的な規範を守った,形式的な丁寧さや礼儀正しさのことを指す言葉です。「civil」が「市民の」「市民としてふさわしい」「社会的習慣に従った」という意味ですので,そこからヒトと一緒に暮らす上での丁寧さのようなニュアンスになるのでしょうか。

この礼儀正しさの重要性に注目した研究がいくつかあって,書籍にもなっています。

逆説

でもこれは,逆説的な話でもあると思うのですよね。

アメリカの職場の様子が本の中にも書かれているのですが,日本では「そこまで無礼な感じで振る舞う人はいないだろう」と思われるような事例が出てきます。部下をクビにしようとしている場面で,デスクに足を乗せてスマホをいじって部下の目を見ようともしない上司,とか。

アメリカでは無礼な人が多いとされるからこそ,「礼儀正しさが大切」という主張が意味をもつのだと思います。逆説的な研究ですね。よくあるパターンです。それをそのまま日本に持ってきて,「礼儀正しさが大切」と言い始めると,さらに細かくて形式的な礼儀を求めていきそうで,嫌な予感がしてしまいます……。

何かの主張を見たときは,その主張が何にカウンターを当てようとしているかを考えておくことが大切です。想定される敵を見ておくことですね。

職場の礼儀正しさ

さて,職場の礼儀正しさにはどのようなメリットがあるかという研究がありますので,それを見てみましょう(The Effects of Civility on Advice, Leadership, and Performance)。

この研究の仮説はいくつか設定されています。すべてではありませんが,いくつかをピックアップしてみましょう。

たとえば,礼儀正しいと認識される個人は,他の人から温かく,能力があると認識されるという仮説です。礼儀正しさは,社会的スキルの高さを彷彿とさせます。自分の行動を制御して,場面場面に合わせて適切な行動を選択することができそうですからね。

また,礼儀正しい人に対して人々はアドバイスを求めようとするだろう,という仮説もあります。仕事ができそうな雰囲気をもっていそうなのと,質問をしても丁寧に答えてくれそうな印象を周りの人はもつかもしれません。

さらに,礼儀正しい人はリーダーになる資質があると捉えられがちだろうという仮説もあります。礼儀正しい人は,きっと仕事ができてトラブルも解決できるだろうと人々がみなしやすくなるのかもしれません。

そして,礼儀正しい人は仕事もよくできるだろう,という仮説が成立します。仕事をする中で,能力があると認識され,人々にアドバイアスを与えたりリーダーになると考えられるのですから,実際に仕事ができるだろうと予想することも納得できます。

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