知能全体で男女の差はないけれど
男女で知能に差があるのか,という問題は根強く研究されるテーマの一つのようです。実に100年以上,男女の違いが研究されていると言われています。
知能だけでなく心理学的な変数の多くの場合,男女で平均値の差を検討したとしてもそれほど大きな「差」が見られるわけではありません。平均値の差を標準偏差を基準に示した値を効果量といいます。
身長の効果量はだいたい「2」くらいの値になるのですが,心理学的な変数の多くの場合,男女の差は「2」どころか1を割り込んでくることも多く,「0.2」という非常に小さな値を示すことも多くあります。「差がある」というよりも「類似している」と言った方がいいくらいです。
一般知能
全体的で統合的な知能(IQやgと表現されます)の研究は世界中で非常に多く行われてきました。そして,実質的な男女の平均値の差は見られていません。
では,全体で差がないから個別の領域についても差がないのかというと,そうとは言い切れません。知能検査はたくさんの種類があり,全体の知能を一つだけ算出する検査から,多くの下位領域を測定することができるものまでさまざまです。
キャッテル・ホーン・キャロル(CHC)理論
CHC理論は,全体の知能の下に細かい複数の知能の領域を仮定するモデルです。多くの下位領域があるのですが,たとえば次のような内容です。
さらに細かく領域を分ける研究者もいるようで,8つ以上の下位領域の下にさらに10ずつの領域を設定する研究者もいるのだとか。
研究知見の統合
今回紹介する研究では,過去に行われた7つの研究を統合することで,さまざまな知能の領域のなかで男女の違いがどのように見られるのかを検討するものです。あくまでもCHC理論の枠組みのなかで発見された差を検討していきます。では,こちらの論文を見てみましょう(The sexes do not differ in general intelligence, but they do in some specifics)。
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