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あなたはこうしてウソをつく

今回も本の紹介をしたいと思います。『あなたはこうしてウソをつく』というタイトルの本です。リンク先にあるように,岩波科学ライブラリーのシリーズの一冊で,「300」と書かれていますから300冊目ということでしょうか。

ウソ研究

ウソをつくことに関しては,人々はそれぞれ,「こういうものだろう」と考えていることがあると思います。しかし,その中には実際に研究をしてみるとそうではない(それこそ「ウソ」)もありますし,思わぬところで実はこういうことだった,という研究結果になっていることもあります。

そもそも,私たちはウソであるのか真実であるのかをうまく見破ることはできない,という研究結果も多いのですよね。

 ボンドとデパウロによるメタ分析を紹介しましょう。メタ分析とは,複数の研究を統合して分析を行うものです。彼らは個別の研究において,どれくらいウソと真実を識別できたかを整理しており,もっとも高い正答率のもので73%でした。一番うまくいった研究であっても,8割にすら届いていないのです。そしてもっとも正答率の低いものは31%であり,研究全体の平均正答率は約54%でした。つまり,コインを投げて裏表を予測できる確率よりも少しましな程度にすぎないわけです。(p.17)

一部の研究では,CIAの職員や臨床心理学者だとうまくウソを見破ることができるという報告もあるようですが,それでも7割程度だそうです。

「自分はウソを百発百中で見破ることができる」と言う人がいるかもしれませんが,あまりアテにはできないようです。

信じてしまう

そもそも,私たちは相手が話している内容を頭から「ウソだ」と断じてしまうよりは,できるだけ信用しようという方向にバイアス(歪み)がかかっています。それを真実バイアスといいます。

その逆もあって,相手が話していることはウソだ,と判断しがちなウソバイアスもあるようです。いつも相手の発言を疑っている警察官とか,ですね。この場合も,真実なのにウソだと判断してしまうことになりますので厄介です。

また,私たちは「自分がウソをうまく見破ることができる」と過大評価しがちだという研究結果もあるようです。これも,ウソを正確に見破ることを妨げてしまう一要因になります。

こういったことを考えていくと,誰かがウソをついていることを見破ることに対しては多くの困難があることがわかってきます。ウソはつくほうが断然有利にできているようです。

こんな話に始まり,ウソに関する心理学や脳神経科学の話がふんだんに盛り込まれています。とても勉強になる本でしたので,ぜひどうぞ。

ウソに関する心理学本

ウソについて扱っている心理学に関連する本というのは,けっこうたくさん出版されています。何冊か紹介してみましょう。

◎『なぜ人は10分間に3回嘘をつくのか 嘘とだましの心理学』……タイトルに惹かれますよね。私たちはそんなにウソをつくものなのかと思わされます。でも,「ウソとは何か」を考えるきっかけにもなる本です。

◎『子どもはなぜ嘘をつくのか』……子どもを持つ立場からは気になる本です。発達の過程のなかで,子どもがウソをつくという現象は実はとても大切なことなのですよね。

◎『平気でうそをつく人たち』……一時期話題になった本の文庫本です。ダークなパーソナリティについて学ぶ一冊でもありますね。

◎『嘘の心理学 (クロスロード・パーソナリティ・シリーズ)』……日本で虚偽に関する研究をしている村井先生の本です。ウソの研究がどのように行われているのか,イメージが掴めるのではないでしょうか。

◎『嘘と欺瞞の心理学 対人関係から犯罪捜査まで 虚偽検出に関する真実』……この本は分厚い専門書です。多くのトピックが網羅されていますので,ウソの研究を行おうとするときには手元に置いておきたいですね。

そもそもウソとは何かとか,心理学でどんな研究が行われているのかとか,ドラマや映画のように嘘をついているかを当てることができるのかとか……やはりそういったことを知るには研究に基づいた本を何冊か読んでみるのがよいと思います。ぜひどうぞ。

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