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小説の中では女の子より男の子の方がポジティブに描かれる

GoogleのNgram Viewerというサービスをご存じですか?

Googleは大量の本をスキャンしてデータ化しているのですが,その単語データを検索することができるサービスです。これが,なかなか面白いのですよね。

アクセスすると,グラフが出てきます。グラフの横軸は「年」です。そしてグラフの右側に,「フランケンシュタイン」「アインシュタイン」「シャーロック・ホームズ」という単語が出ていると思います。このグラフは,これらの単語がそれぞれの年に,本の中にどれくらいの頻度で出てきたかを表しています。

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ルパンとホームズとポワロ

さて,このNgram Viewerなのですが,データベースを選択することもできます。たとえば,English Fictionつまり英語の文学作品のなかにでてくる単語の頻度を表示することもできるのです。

というわけで,「ルパン」「ホームズ」「ポワロ」という推理小説に欠かせない3人の登場人物を英語のフィクションで表示してみました。

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やはり,オリジナルだけでなくいろいろなスピンオフ作品があるホームズが多いですよね。次に,何度も映像化されているポワロです。意外とルパンは少ないですね。いやこれは,日本人が「ルパン三世」をよく目にするのでその印象とズレているということでしょうか……。

研究に使う

このNgram Viewerですが,研究に使われることもあります。「こんな検索サイトを研究に使うことができるのか?」と思うかもしれませんが,Googleが提供しているのはデータベースです。このデータベースを組み合わせて意味や法則を見出すのが,研究としてのひとつの活動になるのです。

例えばさっきのグラフ,ホームズとルパンとポワロは登場する年がもちろん違うのですが,ちゃんとそれがグラフに反映します。もちろん誤差もあるのですが,「この言葉はいつ頃世の中に登場したのか」ということもわかってしまうのです。

こういった試みについてよくまとまっているのが,この『カルチャロミクス』という本です。「こんな使い方ができるのか!」と,驚きの連続です。

ドーナッツ

たしかこの本の中にも書かれていたのですが,英語の「ドーナッツ」のスペルについてです。本来は“doughnut”が正しい綴りなのですが,アメリカだけ“donut”という綴りも見かけます。そこで,Ngram Viewerで「アメリカ英語」を指定して,両方をグラフに描いてみます。

ずっと“doughnut”が多いのですが,1950年代から“donut”が登場してきますよね。アメリカ式の“donut”は,ずっと昔からあるわけではないのです。

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そして,どうしてこのスペルがアメリカに普及したかというと……

◎ダンキンドーナツ(Dunkin' Donuts):1950年創業
◎ミスタードーナツ(Mister Donut):1955年創業

この2つのチェーン店が“Donut”というスペルを使っていて,全米に拡大していくと同時にこのスペルが普及していった可能性があるのです。

歴史が可視化されるようで,なかなか面白いですよね。

文学のなかの男女差

心理学の論文でも,Ngramが使われることがあります。たとえばこの研究では,20世紀の文学のなかで,男性と女性がどのように描かれてきたのかを検討しています。この論文(Gender associations in the twentieth-century English-language literature)です。

やはりこの研究でも,Googleが提供するNgramのデータを用いて検討しています。分析の対象となったのは,2012年時点での英語のフィクション(1900年から2000年まで)を対象にしたものです。

ここで,「男性」「女性」「男の子」「女の子」といった人や子どもを表す単語に,どのような形容詞が関連するのかを検討します。

パーソナリティ特性の整理にも用いられた単語のリストから,155形容詞を対象に調査が行われました。339名の回答者が,各形容詞についてどれくらい男性的か,能力を表しているか,望ましいか,暖かいかを回答しました。

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