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認知能力は問題のある仕事に影響するのか

割引あり

組織そのものや組織内の人々に害を及ぼすような自発的に生じる行動のことを,非生産的職務行動といいます。社会の窃盗や欺瞞,ズルをすることなど非生産的職務行動は,いっしょに働く個人にも,組織自体に深刻な問題をもたらす可能性がありますので,このような行動を予防することが重要だと考えられています。


選抜

企業にとっては,非生産的職務行動をするような個人を入社させないように,選抜制度を考えることも重要です。

でも,事前に予測できるものなのでしょうか。認知能力を測定して,パーソナリティを測定するというのは,日本中でよくおこなわれている適性検査そのもの,ですよね。適性検査が将来のパフォーマンスを予測できないのでは困ってしまいます。

交互作用

認知能力の高さが問題のある職務行動を抑制する場合,いつでもどこでも抑制するというわけでもないと考えられます。認知能力が職業上のパフォーマンスや行動につながりやすいときと,つながりにくいときがあるはずです。

ひとつの候補として,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの勤勉性,協調性,情緒安定性の上位に位置する安定性(stability)が,研究では注目されているそうです。ビッグ・ファイブ・パーソナリティの上位には,外向性と開放性の上位に可塑性(plasticity),勤勉性と協調性と情緒安定性の上位に安定性が仮定されます。


安定性

認知能力となんらかの逸脱した行為との間の関連を調整する要因として考えられることは,自己制御にかかわる心理特性です。というのも,多くの逸脱する行為は,長期的に起こりうるネガティブな結果を犠牲にしても,即時的な欲求を容易に満足させることを意味するからです。

自己制御そのものを反映する心理特性もあるのですが,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの上位次元である安定性も,自己制御や自分自身をコントロールしたり調整したりする傾向を内部に含んでいます。先行研究によると,安定性は目標,解釈,戦略などに関して,衝動による混乱から保護するような役割を演じると推測されています。

実際に,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの上位に位置するメタ特性である安定性が,認知能力と問題のある職務行動との間の関連を調整する役割を演じるのかを検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Revisiting the Inhibitory Effect of General Mental Ability on Counterproductive Work Behavior: The Case for GMA-Personality Interaction)。

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