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望ましく回答した性格でも学業成績に関連する?

割引あり

「ステークス」という言葉があります。何らかの測定や検査を行う際に,その測定が社会的にどの程度重要な意味を持ち,どの程度の影響力を持つのかという考え方のことです。


選抜場面

パーソナリティ特性の得点を使って選抜するときのことを考えてみましょう。皆さん,そもそも正直に性格検査に回答しますか?

就職の選抜の面接で,「あなたはこれまでに盗みや人をだます行為をしたことがありますか?」と尋ねられて,過去に実際に何かを盗んだ経験がある人は,その行為が証拠に残っていたり問題になって公になったりしていない状況で,正直に回答するのでしょうか。また,「私は物事を効率になしとげることができる人物です」という文章にどれくらい同意するかを考えたときに,実際にはいいかげんなところもあることはわかっていたとしても,「そうではない」と回答するでしょうか。少し「盛った」回答をしてしまうのではないでしょうか。

自分の回答が利害をもたらす可能性があるという状況下にあるときに,回答が歪むことは当然ですし,そこで「正直に回答せよ」と言ったとしても,何が正直な回答なのかも,そもそもよくわかりません。

ステイクス

重要で利害をもたらす可能性が高い場面というのは,ハイ・ステイクス(高ステイクス)場面と呼ばれます。ステイクスが高い場面で,パーソナリティとを句呈したとして,ちゃんと現実の行動や結果を予測することは可能なのでしょうか。

これまでの研究では,高ステイクス場面を設定したとしても,他の行動や結果をうまく予測することが可能だという結果を報告しています。従業員のサンプルを対象とした研究では,高いステイクスを設定した場面と低いステイクスを設定しいた場面で測定を行って職務遂行能力との関連を検討していますが,両場面で同等の予測力を示すということが報告されています。しかし一方で,高いステイクスでの回答は,職務遂行能力とは関連がなくなってしまうと言う結果を報告する研究も存在します。

学生を対象とした研究では,正直に答えるようにと言われた条件では学力と寄り関連したのですが,就職が決まるという高ステイクス条件下での回答は,学力とほとんど関連が見られなくなっていました。他にも,高ステイクス場面で得られた回答は,職業のパフォーマンスとの関連が小さくなるという結果も報告されています。

被験者間か被験者内か

多くの研究は,高ステイクスの条件で回答した人々と,低ステイクスの条件で回答した人々とを比較しています。しかし問題は,もし同じ人物が高ステイクスかで回答したらどうなるのか,ではないでしょうか。この点を検討した研究が行われています。こちらの論文を見てみましょう(Conscientiousness Can Predict Academic Performance – Even in High-Stake Setting)。

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