MBTIの発展に貢献した日本人
皆さん,MBTIという心理検査をご存じですか?先日,とある本を読んでいて,MBTIの普及に大きく貢献した日本人の話を知りました。今回はその内容を紹介していきましょう。
心理学的経営
読んだ本は,大沢武志著『心理学的経営:個をあるがままに生かす』(PHP研究所)です。紙の本で読みたかったので,pdfを印刷したペーパーバッグ版を購入して読みました。
MBTIの紹介
すでにご存じかもしれませんが,MBTIというのはMyers-Briggs Type Indicatorの頭文字をとったものです。Myers(マイヤーズ)とBriggs(ブリッグズ)はともに女性で親と娘です。マイヤーズが娘(1897年生まれ1980年没),ブリッグズが母親(1875年生まれ1968年没)です。
ブリッグズは大学で農学を学んだのちに教師として働いています。その中でパーソナリティの違いについての仮説を立て,ユングの理論と出会います。ブリッグズはMBTIを開発するずっと前から,性格のタイプに興味を抱き,教育や子育てに関するエッセイや本も出版しています。娘のマイヤーズは政治学を学んで大学を出ていますので,母も娘も心理学の研究者ではありません。しかし,何かに突き動かされるように独学で心理検査を開発していきます。
ETSが発売
ETS(Educational Testing Service)という会社(非営利財団組織)があるのをご存じでしょうか。TOEICやTOEFL,北米の大学院への進学に必要なGRE,アメリカの大学入学の際の共通試験SATなどを運営している団体です。
実は,MBTIも最初はETSが提供していたそうなのです。
日本人が出会う
さて,MBTIと日本人との関わりについてです。『心理学的経営』のなかに,次のような一節が出てきました。MBTIがアメリカで流行る前に目をつけたのは,日本人だったのです。
この「教育心理学会等で発表した」というあたりについては,そのうち取り上げてみたいと思います。当時の学会発表論文は今から考えると興味深いですよ。なんといっても「手書き」ですからね(私が大学院生くらいの頃は,まだ手書きの学会発表論文がたまにありました)。
ちなみに,日本心理学会が出している雑誌『心理学ワールド』に,『私の人生を方向づけた米国留学』という池田 央先生の記事があります。この中に,1960年頃の様子として「東大からは先輩に当る 東洋氏をはじめ,芝祐順氏,古畑和孝氏などがフルブライト留学生としてイリノイ大学に留学されておりました」と書かれています。芝先生がMBTIに触れたのも,この頃なのでしょう。
勇気づける
まだアメリカでもマイナーで普及していない状況のMBTIですが,突然,日本で研究し始める人が現れ,さらに日本でとったデータをもってアメリカまで訪れるというのは,今のようにやりとりが簡単な時代ではないだけに,とても歓迎されたことだろうと想像されます。
その後,1975年に第1回のMBTIに関する学会が開かれたそうです。
日本の教育心理学会でMBTIの発表が最初に行われたのは,1965年です。日本の研究者たちが世界に先駆けて,MBTIに興味をもって研究を進めようとしていた様子がわかって面白いですね。
ちなみに
ちなみに,皆さんはどこでMBTIを受けているのでしょうか……MBTIって,「2つの選択肢からいずれかの項目を選択する」形式だと思っていたのですが(つまり,外向的な選択肢と内向的な選択肢のいずれかを選択する形式)……たぶん,みなさんがネットでMBTIだと思って受けている「MBTI?」って,その項目の形式ではなく,何段階かで回答する形式ですよね……。
そのサイトにつけられた諸条件(terms and conditions)のページを読んでみるといいと思います。「情報及び娯楽のみを目的としたものである」「性格について正しい評価をするものではない」「英語以外の評価の正確さは保証しない」などなど,書いてあるはずです。信じるか信じないかは,あなた次第です。
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