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知ったかぶりの効能
今回は研究の紹介ではなく,考えてみたことを書いてみたいと思います。
皆さんは知ったかぶりをする方でしょうか,それとも知らないことは「知らない」とはっきり言う方でしょうか。
知ったかぶりというのは,本当は知らないのに,あたかも知っているかのように振る舞うことです。
知ったかぶりの研究
知ったかぶりを調べる心理学の方法というのも考えられています。いや本当に,心理学というのはなんでも測定してしまうものです。こうすればこんなことも測定できる,ということを考えるのは,なかなか楽しいものです。
知ったかぶりは悪いのか
知ったかぶりというのはたいてい「よくない振る舞い」として描かれます。本当は知らないのだから,ちゃんと「知らない」と正直に言うのが良いだろうと考えるのが,一般的なのかもしれません。
この知ったかぶりとは逆のことを表す概念が,知的謙虚さ(intellectual humility)です。これは,自分が知らないことを認識して,自分の知識には誤りがあるかもしれないと考えて,足りない部分に注意を向けることだとされます。
まさに,知的謙虚さは知ったかぶりとは逆の意味をもつ概念のように思えます。
誰かに話をする
個人的には,この知ったかぶりと知的謙虚さのバランスをうまく保つと,とても良いのではないかと思います。
知ったかぶりは,決して常に悪いわけではないと思うのです。たとえうろ覚えであっても,自分が知っていることを誰かに説明してみることは,自分の理解を深めることにとても役に立ちます。私も,授業で学生に説明してみて,初めて「ああ,そういうことか」と気づくことがあります。誰かに説明するというのは,その中で物事を整理しなければいけませんし,そこでわかりにくい説明かどうかのフィードバックもあります。知識を定着させるには,一つの良い方法ではないでしょうか。
学校の勉強でも同じで,完璧ではなくてもある程度,勉強したことを誰かに説明してみると,知識の定着具合がはっきりします。ぜひ,生徒同士で教えあってみると良いのではないでしょうか。
そして,説明する中で「うまくいかないな」と感じることが大切であるように思うのです。その「うまくいかなさ」が,さらなる知識の吸収につながっていきます。
過剰?バランス?
このように考えると,単純に知ったかぶりが悪く,知的謙虚さが良いということではなく,試行錯誤が大切ではないかと思います。
中途半端な知識でも,「それはね…」と説明し始めても良いと思うのですよね。重要なのは,そこで「まだ自分はこのことについてよく知らないんだな」と自己認識することです。そして,自己認識をした上で,さらに調べようと試みることです。アウトプットを試みると,足りないことに気づきやすいのではないでしょうか。
そして,そのサイクルを繰り返していくと結果的に,知ったかぶりの知識ではなく,立派な知識へと成長していくのではないかと思います。
自己認識は曖昧なところがありますので,ぜひアウトプットを試みましょう。
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