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過去を肯定する人は人生に満足しやすい

時間的展望というのは,「ある一定の時点における個人の心理的過去およ
び心理的未来についての見解の総体」のことを言うそうです。

時間的展望は,心理的な時間についての基本的な軸のことであり,人間の経験を過去・現在・未来という枠組みに分割することから生じるとされています。過去・現在・未来のどこに意識が向いているかとか,どの時間を重視するかとか,どこを好むか,などには個人差があります。


過去にとらわれるか現在を生きるか未来を向くか

皆さんは,過去のことをよく思い出す方だと思うのでしょうか,今を生きるのに精一杯という感じでしょうか,それとも未来を向いて歩んでいるという感覚でしょうか。

過去・現在・未来をどのように捉えるかという感覚については,たとえば過去を肯定的に捉えるか否定的に捉えるか,現在を肯定的に捉えるか否定的に捉えるか,そして未来を肯定的に捉えるか否定的に捉えるか,という態度の枠組みで考える立場があります。

ZTPI

また,心理学者ジンバルドー(Zimbardo)による,時間的展望尺度もよく知られています。

この尺度は56項目からなっていて,次の5つの下位次元を持ちます。

過去否定(Past-Negative):過去を否定的,回避的に捉える態度
過去肯定(Past-Positive):過去に対する温かさや感傷的な態度
現在快楽(Present-Hedonistic):危険を好み向こう見ずで快楽を求める態度
現在運命(Present-Fatalistic):運命で決まっているという無力感を伴う態度
未来(Future):将来の見返りのために努力する態度

単にポジティブかネガティブかと言うよりも,少し生活の態度やものの見方そのものを含むような内容で構成されていることがわかります。

時間的態度と人生満足度

時間への捉え方によって,人生や生活への満足度は変わるものなのでしょうか。たとえば,リュボミルスキー(Lybomirsky)の持続可能な幸福モデル(sustainable happiness model)と呼ばれる幸福感のモデルでは,幸福感には遺伝的な要素があることを認めつつも,普段の活動内容が幸福感に大きく関係するとされています。

そしてそこでは,ポジティブな人生経験を重ねることと,ネガティブな経験をポジティブなものに再解釈することが重要だと言われています。もしも嫌な出来事を経験しても,その出来事をどのように捉え直すかという観点が重要だということです。

ここで関係してくるのが,時間的展望だと考えられます。過去・現在・未来をどのように捉えるかによって,出来事の解釈も変わってくると考えられるからです。というわけで,ウェルビーイングのひとつの捉え方にもなる,人生満足度や生活満足度との関連を検討した研究を見てみましょう。こちらの論文です(Do time perspectives predict unique variance in life satisfaction beyond personality traits?)。

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