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悪態をつくと痛みが軽減される

割引あり

私たちは痛みを経験すると,よく下品な言葉を口にしてしまうことがあります。単に「痛い!」という言葉を発するだけではありません。悪態のような「わるい」「一般に望ましくない」言葉を発することで,実際に痛みが軽減されたり,痛みに対する耐性が高まったりする現象が生じるそうです。



痛覚減衰

悪態をつくことで痛みが軽くなるという現象は,なかなか面白いものです。社会的に望ましくない悪態に使われる単語は,攻撃的な感情とともに喚起されることが多い点も興味深いところです。

実験室のなかで攻撃性を誘発する状況を作り出すと,人は悪態をつきやすくなります。さらに悪態をつくことで,発話がより激しいものだと認識される傾向もあります。他人が悪態をつくと,より攻撃的だと認識する傾向も見られます。

しかし,攻撃性と悪態をつくことは明らかに関連するのですが,悪態をつくから攻撃的になるのか,攻撃するから悪態をつきやすくなるのかという因果関係については明確ではありません。

カタルシス効果

悪態をつくことで攻撃性が低下する可能性もあります。悪態には「カタルシス効果」があるという指摘もなされています。下品な言葉は身体的な攻撃の代替として発言され,攻撃性に伴う怒りやフラストレーションの感情を軽減する可能性があるという指摘です。実際,悪態をついた後で,少なくとも部分的に気分がよくなると報告する人がいることからモコの可能性が示されています。

悪態をつくことで痛みが軽減されるのは,悪態をつくことで攻撃的な怒りや欲求不満の感情が軽減されることで,より痛みに耐えることができるようになるのではないかとも考えられます。

一方で

一方で,悪態をつくことで攻撃的な感情が高まったり増幅されたりする可能性も指摘されます。悪態をつくと,心拍数が増加する傾向もあるようです。また,血圧も上昇しそうですね。このような生理的な変化が,痛みに耐える体勢を作り出すのかもしれません。

悪態の効果

悪態をつくと,本当に痛みを抑制する効果が生じるのでしょうか。また,そこに攻撃性はどのように関与するのでしょうか。また,悪態だけでなく,タブーとされるジェスチャーをするだけでも痛みを減衰させる効果は生じるのでしょうか。これらの問題について検討した研究があります。

論文のタイトルにそのまま載せるわけにはいかなかったのでしょうね。「F@#k」と書かれていて,「なんだこれは」と思ってしまいました。では,こちらの論文を見てみましょう(F@#k Pain! The Effect of Taboo Language and Gesture on the Experience of Pain)。

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