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良いウソと悪いウソ

子どもの頃,「ウソをついてはいけません」と言われませんでしたか?

この「ウソをついてはいけません」というセリフは,なかなか面白いものだと思うのです。

ドロボウのはじまり

「ウソつきはドロボウの始まりだ」というように,ウソは悪いものなのだからダメに決まってるじゃないですか,と思うかもしれません。

しかし,やはりこの言葉はそんなに簡単に片付けられない内容を含んでいると思うのです。

食べていないよ

たとえば,母親の実家からおばあちゃんがやってきました。お茶の時間になって,台所にお菓子が用意されています。子どものあなたは,どうしてもひとつ食べたくなって,そーっとひとつつまんで口に入れました。

少し経ってから,お母さんが台所に入ってきます。用意していたお菓子を見て何かおかしいと思ったお母さんは,あなたに尋ねます。「お菓子食べたの?」と。あなたは「食べてないよ」と言うのですが,お母さんは「ウソをついてはいけません。本当のことを言いなさい」と言います。その言葉を聞いて,反省したあなたは「ごめんなさい」と謝ったのでした。

お茶の時間が終わり,おばあちゃんは「お土産があるのよ」と言います。あなたのために手編みで編んでくれたマフラーです。袋から取り出して渡されたのですが,あなたの好きではない色の毛糸が使われています。思わず「いらない。その色,好きじゃないから」とあなたは言ってしまいます。そのとき,お母さんは「そんなことを言うものではありません」とあなたに言うのです。

正直にいうべきか

大人は状況によって,子どもに「正直に言いなさい」と言うこともあれば,「正直に言ってはいけません」と言うこともあります。

子どもにとってそれは,大混乱のもとになりかねないことです。最初は「どうして正反対なの?何がそれを分けるの?どうなってるの?」となりそうです。

曖昧な判断

その難しさは状況や文脈という,とても曖昧な情報に基づいてウソをつくかつかないかを選択しなさいと言われているところからきています。しかも,こういう時にはこうしなさいと明確に言われるわけでもないのです。基本的なトーンとしては「ウソをついてはいけません」というものなのに,いつも正直でいようとすると,時々突然「それではいけない」と言われてしまうのです。

大人もおそらく,それについては無自覚なのです。自分が育ってくる間にいつのまにか経験的に身につけた判断基準に従って,自動的に判断しているだけです。しかも「ウソは良くないこと」とも信じているのでしょう。状況によってウソをついているという自覚すら,ないかもしれません。

「正直」と「馬鹿正直」という言葉があります。正直すぎると「馬鹿」とされてしまうのですから,「正直」の中には多少の嘘がすでに含まれているのでしょう。

クリスマス

さて,なぜこういうことが思い浮かんだかというと,クリスマスだったからですね......。

思い浮かんだのは,この季節特有の,大人が子どもにたいしてつくウソについてです。このマジックが有効な間は良いのですが,解けた時には明らかにウソだとわかります。もっともこの記事に書かれているように,それは時間が経てば解決するウソかもしれません。


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