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罪悪感と後悔をわけるポイント

見出し画像がケーキになっていますよね。ダイエットをしているときに,ついケーキを食べてしまう……すると「罪悪感だよね!」という言い方をすることがあります。でも,やってしまったことについては「後悔する」という言い回しもあります。

自分で決めたルールを自分で破ってしまったことに対して「罪悪感」と言うのはちょっと本来の意味とは違うように思うのですが,こういう感覚は微妙なもので,深く調べてみると面白いことがありそうです。

夏休みの自由研究に是非どうぞ。


自己意識的感情

後悔とか罪悪感といった感情は,自己意識的感情と呼ばれることがあります。

後悔も罪悪感も,自分自身の失敗を意識することから生じるものですよね。そしてそこでは,自分が「こうあってほしい」と理想として思うことと,現実とのズレ(自己不一致といいます)が含まれています。このように,自分自身をどのように考えるかということを前提とした感情であることから,自己意識的感情と呼ばれるというわけです。

後悔と罪悪感の違い

後悔と罪悪感という2つの感情は,両方を同時に抱くことがあって,実際に調査をすると互いに高い性の相関関係を示すことが知られています。中には,後悔と罪悪感の高い関連から,明確に区別しない研究者もいるそうです。

しかしその一方で,後悔と罪悪感を区別することが重要だと主張する研究者もいるようです。そもそも「後悔」と「罪悪感」(英語だとregretとguilt)という別の単語を使っているのですから,何かで2つの感情は区別されているはずです。

では,どんなところに異なるポイントがあるのでしょうか。

◎罪悪感は主に対人関係にもとづくのに対し,後悔は自分自身と他者に起こることの両方に関連する
◎罪悪感は後悔よりも道徳的な自責感に関連する

このように書いてみると,確かにどこかで両者が異なるポイントがありそうです。

違いを調べる研究

実際の自分自身と理想の自分,「こうあるべき」という自分のズレを問題にする「自己不一致(self-discrepancy)」という観点から,後悔と罪悪感の違いを検討している研究があります。こちらの論文を見てみましょう(The role of self-discrepancies in distinguishing regret from guilt)。

先ほど述べたように,この研究では2つの「自己不一致」を検討します。

◎実際の自分と理想の自分(現実自己と理想自己)
◎実際の自分と「こうあるべき」という自分(現実自己と義務自己)

理想自己と現実自己のズレは,自己評価の低下をもたらします。「これが理想なのに届かない」という感覚ですので,自尊感情が下がったり失望したり落ち込んだりしていくと考えられるわけです。

その一方で,義務自己と現実自己のズレは罪悪感や自分を軽蔑するなどの動揺した感情をもたらすと考えられます。「こうすべきなのにそれができない」という自分の認識ですので,そこから自分自身が動揺するような感情が生じるというわけです。

というわけで,この研究では研究への参加者に後悔や罪悪感の経験を思い浮かべてもらって,その経験が理想自己と現実自己のズレに関連するのか,義務自己と現実自己のズレに関連するのかを検討しているというわけです。

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