子どもたちのビッグ・ファイブ・パーソナリティを人形劇で測る
授業の際には,よく学生たちの感想を集めます。出欠を取る代わりでもあるのですが,そこから何かしら学ぶこともあります。学生たちの間で何が流行っているのかを知ることにもつながりますし,自分でもよくわかっていない部分があることに気づいて調べることもあります。
でも,たまに気になる回答もあるのですよね。そのひとつが,こういう回答です。
◎……ということをするのは無理だなと思います。
ちゃんと測るのは無理
たとえば,心理学の授業を聞いて「こういうことをちゃんと測るのは無理だなと思いました」なんていう書き方です。
こういう回答を見ると,ちょっとムッとしてしまって,つい質問に回答したくなってしまうのですよね。
もちろんそこでは完璧な測定方法などあるわけでもなく,長さや重さを測定するような厳密さもありません。でも,これまで心理学者たちがどれだけ何かを測定することに工夫を重ねてきたのか,ということをある程度は知っていますので,「無理ですね」と書かれてしまうと,ついムキになってしまうのですよね。
大人げないものです。
子どもたちの性格を測定する
そんな工夫が見られる研究のひとつを紹介してみたいと思います。子どもたちのビッグ・ファイブ・パーソナリティを,子どもたち自身が回答することができるのかということにチャレンジした研究です。この論文です(Can Children Provide Coherent, Stable, and Valid Self-Reports on the Big Five Dimensions? A Longitudinal Study From Ages 5 to 7)。
調査に参加したのは5歳,6歳,7歳の子どもたち95名とその親です。この親子は,1年間隔で3回にわたって調査に参加しました。それから,大学生サンプルとして328名が参加しました。
人形で測定
子どもたちのビッグ・ファイブ・パーソナリティは,Berkeley Puppet Interview(BPI)という方法で測定されています。パペット・インタビューとあるように,子どもたちはお人形から出される質問に自由に回答していきます。そしてその様子はビデオに撮影され,あとでその映像を見ながら得点をつけていきます。
人形は2体登場します。たとえば,片方の人形が「初めて誰かに会っても気にしないんだよね」と言うと,もう片方の人形が「初めて誰かに会うととても緊張するな」と言います。そして「君はどう?」と子どもに尋ねます。このような形式で,ビッグ・ファイブ・パーソナリティが測定されていくというわけです。
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