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一次元の性格

性格特性をあらわす言葉を辞書から抜き出し,整理する歴史についていくつかの記事を書いてきました。

ゴルトンやオールポートによる辞書から単語を抜き出す研究についてはこちらの記事にまとめました。

抽出した単語をまとめていく経緯についてはまたどこかで書く機会があると思います。数十年経って,ビッグ・ファイブ・パーソナリティという,5つのパーソナリティ特性で人間全体のパーソナリティを要約できることがわかってきました。

ただし,5つではなく6つだ,というHEXACOモデルの研究もあります。

そして,ビッグ・ファイブ・パーソナリティをさらにまとめていくと,アルファ(安定性)とベータ(可塑性)という2つの因子に収束していくという研究もあります。

今回は,さらにさらにまとめるとどうなるのか,という研究を見てみようと思います。

なお最近,海外ではこのテーマそのものを暑かった専門書も出版されています。この本のタイトルのように,「General Factor of Personality」略して「GFP」と呼ばれています。


ビッグ・ワン

ビッグ・ファイブ・パーソナリティの5つの特性を因子分析にかけると,結局は1つの因子になってしまうよ,というの話がビッグ・ワンと呼ばれたり,ジェネラル・ファクター(GFP)と呼ばれる性格の構造のことです。

A general factor of personality: Evidence for the Big One in the five-factor model

これはなかなか究極的な話ですよね。

最初は4000単語以上あった性格用語が,集約されて集約されて集約されて……結局はたった1つの因子になってしまう,という話なのです。

知能の場合

知能の場合はたしかに,1つにまとまるという証拠は繰り返し示されてきています。

複数の認知処理課題を行ってデータにします。そのデータに因子分析をかけると,たとえ下位に複数の因子が出てきたとしても,それらの間にはプラスの相関関係があり,1つの統合的な知能因子(g)へと集約されていきます。

これまでには,知能が複数の因子で構成されるという多重知能理論なども提出されてきていますが,実際にはその複数の知能は互いに関連しますので,複数の因子にまとまることと,全体的に総合的なg因子を見出すことは,矛盾するわけではありません。

そしてその構造は,知能検査から得られたデータでもそのようになっています。

そもそも,ひとつの「知能指数」という指標を算出するためにはその構造が必要なのですけれども。性格に1つの因子を見出すGFPの話は,この知能の話ととてもよく似ています。

学力の場合

それは,学力でも同じではないでしょうか。

学力試験の問題は,階層的にまとめることができます。
◎ひとつひとつの問題は,計算,関数,図形,漢字,読解,英単語,英作文,などなど,モジュールのような学力でまとめることができる。
◎各モジュールの学力は,数学,英語,国語,理科,社会といった,教科ごとの学力でまとめることができる。
◎教科は,数学・理科の理系学力と,国語・英語・社会の文系学力にまとめることができる。
◎理系学力と文系学力は,総合的な学力にまとめることができる。

このように,1つ1つの問題をまとめていくと階層的な構造になるということは,学力を例に考えるとわかりやすいと思います。

ジェネラル・ファクター

性格についても,知能や学力の場合と全く同じことを考えるのです。

◎パーソナリティのファセット:1つ1つの性格特性用語は,あるまとまりでまとめることができます。
ビッグ・ファイブ:ファセットは,その上位のまとまりでまとめることができます。
アルファとベータ:ビッグ・ファイブは,その上位の2つの因子でまとめることができます。
GFP:アルファとベータは,その上位の1因子でまとめることができます。

どうでしょうか。納得できるでしょうか……どうでしょうね。

GFPの意味

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