心の回復力はネット上のストレスも緩和する

ストレスフルで心身に脅威を及ぼすような出来事を経験して一次的に落ち込んだとしても,そこから回復するプロセスや回復した状態,回復する準備状態を持つことを総称してレジリエンスと言います。

ひどい出来事が起きると確かにダメージを負うのですが,その程度にも個人差があるように見えますし,同じことを経験したとしても,そこからうまく立ち直る人とそうではない人がいるのも確かです。

そのような違いがどうして生じるのか,またそのような違いが何に影響するのか,ということを研究するのもレジリエンス研究に含まれます。

個人内要因と個人外要因

レジリエンスのような現象があると,つい個人内の要因を求めてしまいがちです。「回復する人はそうならない人と比べて,何か特別な心理的要因があるのではないか」と考えがちだからです。

しかし,実際にはそれだけではなく,家族や友人,教師や地域の人々,そして社会システムや支援方策など,多くの外部要因が回復にかかわっています。そして,本人自身を変えるよりも,外部の状況を変えることの方が現実的な対処方法である場合も多いと言えます。レジリエンスを考えるときに,その点はつねに忘れないようにしておきたいところです。

レジリエンスとネット行動

さて,ここで紹介する論文は,レジリエンスを促す内的な心理要因を持つ人に注目したものです。

回復力を促すレジリエンスをもつ人と持たない人で,ネット上の振る舞いに違いは生じるのでしょうか。そのような研究が報告されているのが,この論文(Psychological resilience can help combat the effect of stress on problematic social networking site usage)です。

調査に参加したのは,499名の中国の大学生(平均年齢19.9歳,うち385名が女性)でした。参加者は,ストレスの自覚に関する尺度,レジリエンスの尺度(CD-RISCと呼ばれています),SNSの使い方に関する尺度に回答しています。

SNSの尺度は,もともとFacebook用に作られたものを改変しています。中国ではfacebookはブロックされていますからね。項目を微博(Weibo)に対応させて,作り替えたようです。たとえば,「私はWeiboを使っていないときでも,よくそのことについて考える」といった質問項目です。高得点になるほど,SNSの使い方に問題があることを示しています。

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