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2022年に読んだ本の振り返り(2)

今回も,2022年に読んだ印象に残っている本を紹介していきたいと思います。

マスターアルゴリズム

1冊目は,『マスター・アルゴリズム  世界を再構築する「究極の機械学習」』(ペドロ・ドミンゴス 神嶌敏弘(訳),2021,講談社)です。

「アルゴリズム」という言葉の語源は,アラビア人の数学者アル・フワーリズミーから来ているというのはよく知られたことです。そしてマスター・アルゴリズムというのは,世の中を再構築するような究極のアルゴリズムということです。

とはいえ,この本はアルゴリズムのための教科書ではありません。知的探究をするような読み物ですので,プログラミングやコンピュータの知識がそれほどなくても,楽しめると思います。

NOISE

さて,次の本です。

『NOISE: 組織はなぜ判断を誤るのか?』の上下2冊組みです。

さて,「まさにカーネマンの本」という内容の本書なのですが,私たちが判断の質を向上させるために,どのように「ノイズ」を捉えていくかを考えるヒントが数多く含まれています。

 判断の質を向上させるためには,バイアスとノイズのちがいは重要な意味を持つ。判断が正しいかどうかを検証できないのに判断を改善できると言ったら,矛盾するように聞こえるかもしれない。だがノイズを計測することから始めれば,必ず改善できる。判断の目標が正確性であれ,選択肢の間の複雑なトレードオフの評価であれ,ノイズは望ましくない。しかし望ましくないが,多くの場合に計測はできる。

ダニエル・カーネマン,オリヴィエ・シボニー,キャス・R・サンスティーン 村井章子(訳) (2021). NOISE[上] 組織はなぜ判断を誤るのか 早川書房 pp. 79-80

どうやったら「よりマシな予測ができるのか」というヒントを得ることができる2冊だと思いますので,ぜひどうぞ。

ブルシット・ジョブ

さて3冊目です。

『ブルシット・ジョブ―クソどうでもいい仕事の理論』(デヴィッド・グレーバー 酒井隆史・芳賀達彦・森田和樹(訳),2020年,岩波書店)はどうでしょう。「ブルシット・ジョブ」は,もはやひとつのこの社会のなかを読み解くキーワードとして定着したんじゃないかと思ってしまいます。言われてみれば,大学の中だけでも「あれもそうだし,これもそうだし」と思い当たることだらけです。

どんな種類のブルシット・ジョブがあるかは,Wikipediaにもまとめられています。

1.取り巻き:誰かを偉そうに見せたり,偉そうな気分を味わわせるための仕事
2.脅し屋:雇用主のために他人を脅したり欺いたりする仕事
3.尻ぬぐい:組織の中の欠陥を取り繕うための仕事
4.書類穴埋め人:実際に流行っていないことをやっているかのように見せる仕事
5.タスクマスター:他人に仕事を割り当てるだけの仕事

たとえ高給を得ている場合であっても,無意味で,不必要で,有害でさえあるような仕事の内容というものはあるものです。しかし,この仕事をする以上,「この仕事には意味がある」と取り繕わなければいけません。

ちなみに,この『ブルシット・ジョブ』は400ページ以上もある,とてもボリュームがある本です。そこで,新書版の解説本をまず読んでみるというのはどうでしょうか。『ブルシット・ジョブ』を翻訳した方が書いています。

ほとんど誰も読まないだろうと思われるような書類を一生懸命作った経験のあるのであれば,ぜひご一読を。

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