ボクサーたちの性格研究


競争をするようなスポーツ競技でいちばん重要な心理特性とは何でしょうか。

最後まで我慢強くやり抜く力も必要でしょうし,「自分はできる」と信じて将来の見通しを立てることも大切そうです。また,しっかりと計画を立てることや,独りよがりにならずに監督やコーチ,仲間の意見を聞き入れる柔軟性も大切だろうなと,これは勝手なイメージですがなんとなく予想できそうです。

なかでも,いろいろな誘惑に抵抗して,自分自身をうまく律することができる自己コントロールや自己統制といった心理特性は,競技を最後までやり抜くのに重要そうです。

また,この自己統制の特性はビッグ・ファイブ・パーソナリティにも関連することが知られています。特に勤勉性の特性は,自己コントロールに近い意味を持っています。

特定の集団

昔から心理学の調査は教員が所属する大学でおこなうことが多く(なんといっても調査がしやすいですからね),「大学生心理学」なんていうふうに揶揄されることもありました。

それが最近ではネット調査がスタンダードになってくることによって,気軽に大学生以外の集団にも調査をおこなうことができるようになってきました。ネット調査はその信頼性が疑われることもあるのですが,この広い集団への調査が可能という点においては,大きなメリットだと言えます。

研究全体の流れがこうなってくると,次は「なかなか調査ができない集団を対象とした調査」の価値が上がってくることになります。

ボクサーたちの自己コントロール

そんな,ちょっと変わった集団を対象にした研究を見てみましょう。スポーツのボクシング選手たちです。しかも,中国の代表選手たちを対象にした研究です。これはなかなか手に入らなさそうなデータですよね。この論文です(The Relationship Between Big Five and Self-Control in Boxers: A Mediating Model)。

調査の対象となったのは,中国の複数の都市のボクシングチームと,中国の代表チームの選手たち計230名でした。そのうち約9割の210名が質問紙に回答しました。このうち76名が男性,134名は女性です。選手のランキングはさまざまで,低いランクから高いランクまで含まれていました。平均年齢は19歳くらい,平均のトレーニング期間は約5年です。

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