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かっこいいバーナムとバーナム効果

心理学でバーナム効果といえばあまりにもよく知られていて,バーナムを心理学者だと勘違いしている人すらいるのではないかというくらいです。

まずは,バーナム効果を体感してみましょう。


あなたの内面を当てます

下に書くのは,あなた自身を分析した文章です。もちろん,私はあなた自身をこれまでよく知っているわけではありませんでした。でも,この記事にたどり着いたあなたの内面については,ある程度推測ができるのです。以下の文章は,これまでの研究から見出された,この記事にたどり着いたことからわかるあなた自身の姿です。文章を読んで,自分に当てはまる分があるかどうかを考えてみてください。

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あなたは時々,ひどく自分のことを考える傾向があります。それでいて,表面的にはいつもとても社交的にふるまうときもありますし,ときには場を盛り上げる人物だとすらまわりの人に思われることがあります。しかしこれは,他人に向けた顔なのです。その姿が仮面にすぎないことを,あなたは自覚しています。

そのため,あなたは人が集まる場所では何かの役割を演じている自分に気づくことがあります。明るく振る舞う一方で,その場に熱中することはできず,自分の周りで起きていることを少し離れたところから眺めているような気分になります。他の人ならまるで気にとめない会話でも,あなたは自分に対して投げかけられた言葉として頭の中で繰り返し,あの人はどういうつもりであんなことを言ったのだろうと考えたりします。

あなたは,自分をコントロールして,穏やかで自信に満ちた自分を見せたいと思っています。このコントロールをいちばん自覚するのは,周りの人と接するときです。あなたは人から距離を置くことで自分を守ることを学んできました。他の人の言動に落ち込んだ経験があり,相手を親友として受け入れることを決めるまで,相手を直感的に遠ざけてしまいがちです。

あなたは自分の才能や能力を生かそうと,いろんなことを試してきました。特に絵を描いたり,何かを作ったりしたというわけではないかもしれません。あなたの創造性はもっと目立たない形で発揮されるのかもしれませんが,ほかの人とは違うアイデアを思いつくことがあります。それでもあなたは自分に高い基準を設けているために,多くの点でやや完璧を求めてしまいます。問題は,その完全主義のせいで,物事を最後までやりとげられない場合があることです。平凡なアイデアには我慢できず,かといって1からやり直すのは気が進みません。それでも,いったんペースに乗れば,スムーズに進むことができるようになります。このため,たぶんあなたは小説や漫画か何かを書こうと考えたことがあるはずですが,自分が望む水準を達成できないのではないかという思いから,やめてしまったのではないでしょうか。

こんなふうに思い悩むことがあるにもかかわらず,あなたには素晴らしいユーモアのセンスもあります。人と仲良くなり,冗談を言うこともあります。あなたは意外とそういうのが大好きで,考えてきた冗談を言ってみんなを感心させることもあります。そういうことを考えている自分に気づくと自己嫌悪におそわれることもありますが,これは人を笑わせたり感心させたいという健康的な欲求ですから,心配する必要はありません。

あなたは基本的によく学び,人生の可能性に対してオープンな態度をとろうとします。きっと,あまり内省的にならないほうがうまくいくでしょう。なぜなら,他人とのあいだに距離ができてしまうからです。型にはまった自分の姿を人に見せたくないときには,自分のコントロールをゆるめるようにするといいでしょう。もう少し人に心を開くこともできると思いますが,何かを隠したいと思う面も大切にするのがよいでしょう。

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さて,いかがだったでしょうか。あなた自身の様子に当てはまる部分はあったでしょうか。

バーナム効果

この文章は,『メンタリズムの罠』という本に書かれていた「バーナム効果を生む文章の例」を書きかえて短くしたものです。

バーナム効果とは,多くの人に当てはまる言葉を並べることで,あたかもその特徴が特定の人物だけに当てはまっていると考えてしまう効果のことです。

極端な例を挙げてみますと,
「あなたは人間です」
「ああ,そうなんだ!私は人間なんだ!」

という感じです。誰もが人間なので,誰にでも当てはまるのですが,それを自分だけに当てはまる特徴だと考えてしまうことです。

グレイテスト・ショーマン

このバーナム効果ですが,バーナムという研究者がいたわけではありません。P.T.バーナムという興行師からとった名前です。

バーナムと言えばこの映画『グレイテスト・ショーマン』です。すばらしい映画で,何度か観てしまいました。恥ずかしながらヒュー・ジャックマンがこんなに歌って踊れる人だということを知りませんでした。

バーナムの逸話

とはいえ,この映画のバーナムは少々(だいぶ?)美化されているようでもあります。

「ほら吹き王子」と呼ばれたり,「愛すべきペテン師」と本に書かれていたり。1840年にはバーナムがシェイクスピアの生家をアメリカに輸送して車輪をつけて全国渡り歩いて公開しようとしたのを聞き,イギリス全土から寄付金が集まってそれを阻止したとか。

他にも,作り物の人魚を買ってニセ物と十分に知りながら展示したり,ある展示品のオリジナル品を買えないとわかるとそのニセ物を作って巧みに宣伝し,本物よりも観客を呼び込んだり。

ミールの論文

バーナム効果という言葉は,ポール・ミールの論文「Wanted—a good cook-book」に登場します。

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